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17話 焦るシャリオ
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王都行きが決定し、ひと月後の上京を控えて慌ただしく準備を進めている最中だ。
デヨーテはこの後3カ所ほど視察しなければならないということで、一緒に行かなくて済んで本当によかった。
説明を受けたところによると、まだ平民の俺の意思なんて勘定にしてもらえるわけもないので、ファガルが頑張るしかないんだと。
「せっかくですから、旅行も兼ねてのんびりと楽しんだらどうですかね」
の一言で決まった王都ツアーだ。
この世界がどんな風になっているのか、少しだけ、いや、だいぶ楽しみだ。
ファガルが王都に連れて行く護衛や側近は6名で、彼らは御者もしてくれる精鋭なんだとか。馬車は2台で荷物の殆どが衣類だ。
なのに道中、宿がないところもあってだな。
つまり結界を張るのに長けた護衛1人を置いて、ファガルまでも食料になりそうなものを調達しに行ってしまったのだ。
というか、ファガルがいると精霊達の加護のおかげで、獲物収穫無しなんてことには絶対ならないのだそうだ。
さっすが、精霊色人間。
で、みんながいなくなってから気づいたんだけど、俺、新天地に行こうと張り切って作った備蓄食がたんまりあった。
今食べなくていつ食うんだよ。
取り出してみたら、保存状態もバッチリだったんもんなー。作り置きしてから何年経ったっけ?
護衛さんが集中してこの辺りを守ってくれている間、その辺りにある石とか落ちてる木とか拾ってきては釜らしきモノを組み上げた。
ほら、亜空間収納使うと1回で結構運べるのよ。
ついでに言うと、これを持ち歩けば次からは燃料にするための木だけ探せばいいんじゃないかってっな。
で、集中してるベンシスさんがあまりにも集中してるから大丈夫かなと思い、水も火も魔法で補った。
わざわざ水汲みに行くとか、面倒いし大変だし。
風呂場で練習していた時よりも上達して、ちょろちょろ状態から蛇口全開まであと少しぐらいのレベルにはなったんだよ。だから、短時間でやればバレないはずだ。
教える人がうまいっていうのはそういうことなんだなー。
ん、汁物完成!
干した肉の塩味が染み出していて、普通にうまい。
その辺りに生えているモエギとかマネギとか適当に入れたら、味も締まった気がする。
でも完璧な庶民料理だけどな。しかも結構貧乏人の。
……ファガル達、食ってくれるかな。
そうこうしているうちに、ファガルたちが背丈くらいの獣を1匹狩ってきた。
猪っぽいとこをみると、豚肉っぽいのかもしれない。
「ただいま。シャリオ達で食事の支度をしておいてくれたんだ」
「うん、庶民料理だけどな」
「いや、普通の食事ができるとは思ってなかったから充分だよ」
解体された肉に串を刺して竈の周りで焼いていく傍らで、ベンシスさんが食べ切れない部位を乾燥させて保存食にしている。
なるべく早く処理してしまわないと、他の獣が寄ってきてしまうかららしい。
「そろそろ水浴びとかしたいな」
浄化はできても、せめて水で拭きたいっていうのは日本人としての記憶があるから仕方ないっていうか。気分的に綺麗になってる気がするんだよな。
「シャリオ、お風呂大好きだもんな」
「おうともよ」
日本人舐めるなよ。今は日本人じゃないけど。
「この辺りだと、確か大きな泉があったはずですね」
そういえばとガーターが口にした。
「マジで!?」
「たいした寄り道にもなりませんし、景色もいいですからね。明日はそちらで1泊しましょうか」
「やたー!!」
☆☆☆
そうしてやってきた泉なのだが、温泉みたいな感じなのか、泉は冷たくなくてほんのり温い。
ぱぱっと服を脱ぎ捨て、手で軽く掛け湯を済ませるとチャポンと足を入れた。
もちろん、不本意ながら下着は身につけている。
全裸になるとファガルがめちゃめちゃ怒るからな。
と、そこまでは良かったのだが。
「あ、あれ?」
足がつくはずの底がない。
泳ぎに自信はあったはずなのに、身体を浮かせることもできない。
つまり……泉の底に沈んでいく。
「シャリオ!?」
っっっって、嘘だろおおおお?!!!
デヨーテはこの後3カ所ほど視察しなければならないということで、一緒に行かなくて済んで本当によかった。
説明を受けたところによると、まだ平民の俺の意思なんて勘定にしてもらえるわけもないので、ファガルが頑張るしかないんだと。
「せっかくですから、旅行も兼ねてのんびりと楽しんだらどうですかね」
の一言で決まった王都ツアーだ。
この世界がどんな風になっているのか、少しだけ、いや、だいぶ楽しみだ。
ファガルが王都に連れて行く護衛や側近は6名で、彼らは御者もしてくれる精鋭なんだとか。馬車は2台で荷物の殆どが衣類だ。
なのに道中、宿がないところもあってだな。
つまり結界を張るのに長けた護衛1人を置いて、ファガルまでも食料になりそうなものを調達しに行ってしまったのだ。
というか、ファガルがいると精霊達の加護のおかげで、獲物収穫無しなんてことには絶対ならないのだそうだ。
さっすが、精霊色人間。
で、みんながいなくなってから気づいたんだけど、俺、新天地に行こうと張り切って作った備蓄食がたんまりあった。
今食べなくていつ食うんだよ。
取り出してみたら、保存状態もバッチリだったんもんなー。作り置きしてから何年経ったっけ?
護衛さんが集中してこの辺りを守ってくれている間、その辺りにある石とか落ちてる木とか拾ってきては釜らしきモノを組み上げた。
ほら、亜空間収納使うと1回で結構運べるのよ。
ついでに言うと、これを持ち歩けば次からは燃料にするための木だけ探せばいいんじゃないかってっな。
で、集中してるベンシスさんがあまりにも集中してるから大丈夫かなと思い、水も火も魔法で補った。
わざわざ水汲みに行くとか、面倒いし大変だし。
風呂場で練習していた時よりも上達して、ちょろちょろ状態から蛇口全開まであと少しぐらいのレベルにはなったんだよ。だから、短時間でやればバレないはずだ。
教える人がうまいっていうのはそういうことなんだなー。
ん、汁物完成!
干した肉の塩味が染み出していて、普通にうまい。
その辺りに生えているモエギとかマネギとか適当に入れたら、味も締まった気がする。
でも完璧な庶民料理だけどな。しかも結構貧乏人の。
……ファガル達、食ってくれるかな。
そうこうしているうちに、ファガルたちが背丈くらいの獣を1匹狩ってきた。
猪っぽいとこをみると、豚肉っぽいのかもしれない。
「ただいま。シャリオ達で食事の支度をしておいてくれたんだ」
「うん、庶民料理だけどな」
「いや、普通の食事ができるとは思ってなかったから充分だよ」
解体された肉に串を刺して竈の周りで焼いていく傍らで、ベンシスさんが食べ切れない部位を乾燥させて保存食にしている。
なるべく早く処理してしまわないと、他の獣が寄ってきてしまうかららしい。
「そろそろ水浴びとかしたいな」
浄化はできても、せめて水で拭きたいっていうのは日本人としての記憶があるから仕方ないっていうか。気分的に綺麗になってる気がするんだよな。
「シャリオ、お風呂大好きだもんな」
「おうともよ」
日本人舐めるなよ。今は日本人じゃないけど。
「この辺りだと、確か大きな泉があったはずですね」
そういえばとガーターが口にした。
「マジで!?」
「たいした寄り道にもなりませんし、景色もいいですからね。明日はそちらで1泊しましょうか」
「やたー!!」
☆☆☆
そうしてやってきた泉なのだが、温泉みたいな感じなのか、泉は冷たくなくてほんのり温い。
ぱぱっと服を脱ぎ捨て、手で軽く掛け湯を済ませるとチャポンと足を入れた。
もちろん、不本意ながら下着は身につけている。
全裸になるとファガルがめちゃめちゃ怒るからな。
と、そこまでは良かったのだが。
「あ、あれ?」
足がつくはずの底がない。
泳ぎに自信はあったはずなのに、身体を浮かせることもできない。
つまり……泉の底に沈んでいく。
「シャリオ!?」
っっっって、嘘だろおおおお?!!!
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