目指すは新天地！のはず？

１２話 気づきはじめたシャリオ

やらかしたかな～。
やっぱり『仕事』って言ったのがまずかったんだろうな。
プロは絶対そんなこと、口が滑ったって言わないだろ？
大金払ってる客がそんなの聞いたらキレるもんな。

アレ以来、ファガルの様子がおかしい。
いや、あの日もだいぶおかしかったんだけどな。

あのおかしかった日から２年経ち、俺は１７になった。

今も有名な先生が剣術を教えてくれていてな、なんでも国で３本指に入る人らしくてな、それを俺みたいな平民に……。
前世知識のリハビリ効果が出てきたとはいえ、未だに左手は動かしにくいしな。
なのに先生も絶対嫌な顔しないし、一体どんだけ金積んだんだよって。
しかも魔法もな、ファガルは使えないって思ってるはずなのに授業に組み入れてくれててな。

どう考えても、おかしい。

これ絶対貴族向けの教育だろ。それもかなり上位クラスの。
ファガルすら受けたことがないのもあるって、側近がポロリ暴露してたしな。

つまり、ファガルって俺のことちょっとぐらい好きなのかも……とか。
さすがにあるわけない、か。

実際のところ少しずつ絆され始めてる俺は、ファガルから理不尽な行為を受けてたあの日々を許せるようになってしまっているのだ。
あの時はそれなりに思うこともあったはずなのに、あの大きな男の、しかも貴族の彼を、かわいいと思ったりもするのだ。

これもそれも俺を辱めるためのことだったと言われたとしても、多少はへこむだろうが、もう恨んだりしないんだろうな程度には、絆されている。


「今日はここまでにしましょう」
剣術の先生はそう言うとその場を後にした。

こうして教わってみてわかることがある。
俺の剣術も体術も、基礎は出来上がっているのだと。
俺の筋がいいと先生方は言うけれど、それは紛れもなくファガルのおかげだろう。

あの時は、ネチネチといたぶるように繰り返される行為を、弱い者を相手にした彼らの鬱憤ばらしだと思っていた。
いっそのこと瞬殺でボコってくれればいいのにと思うこともあったけれど、あれがあったから俺は徐々に戦い方がわかるようになったのだ。
少しずつ、大きな獲物を獲れるようになったのだ。

そう思うようになってしまえば、ファガルを恨むことなど、今後も無い気がする。

そもそもがなー、孕む可能性のある女ならばもっと違うんだろうけど、俺はいくら致したって孕まないわけよ。
しかも俺という自我が加わったせいで、最初から嫌悪感もなかったのよ。
普通に気持ちよかったしなー。

つまり、肌を合わせているうちに、まあ、だいぶ絆されてだな。
うん。

今日の視察を終えたファガルが馬から降りるのを『颯爽としていてカッコいいな』と思えるようになった自分と、そろそろ正面から向き合おうと思ったってことです、はい。