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1話 しくじった俺
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昔のお話を移動してきました
1話短め
ーーーーーーーーーー
しくじった。
普段なら深追いなどしないのだけれど、もう少しというところまで獲物を追い込めたこともあって、深部に入り込んでしまったのだ。
獲物は無事獲れたけれども、食人植物の攻撃を避けられなかった。
攻撃を受けた左腕が異様に熱い。元から不自由だった左腕だから、動きづらいことがそうたいしたダメージにはならないとしても、血が流れ過ぎるのはよくない。
今日はこれ以上無理だなと判断した俺は、軽く傷口を塞ぐと帰路を急いだ。
「お前にしては上出来じゃねえか!」
換金所まであと数メートルという所で、キロキロ鳥を掻っ攫われた。
彼らは5日に1回くらいこうして俺の荷を奪う。
いつもなら追いかけて取り返すこともあるのだが、武器を利き手に、反対側のケガをしている方に獲物をロープで担いでいたせいで治まっていた傷口が開いたらしい。
一瞬で左半身が赤く染まることになった。
「な!おまっ」
こいつのこんな顔初めて見るかもしんね。
なんとなくおかしくなって、もう獲物なんていらね、とさっさと後にした。
家に帰って薬を塗りたくって寝た。
カギ閉めたかなと一瞬頭をかすめたが、小さいけども亜空間収納スキルを取得している俺は大切なものはそこに全部入れてあるのだ。
成人するまでは持っていても使えなかった亜空間収納は、ついこないだ15歳になると使えるようになった。
中には父と母から譲られた財産がしっかりと収められていた。まあ、平民の譲れるものなんかたかが知れてるけどな。
俺は取られるものも無いことを思い出して、まあいいやと寝ることにした。
夜中、喉が渇いたなと思ったら口に柔らかいものが当たって、そこから水が流れてきて起きなくて済んだ。
なんとなく汗が気持ち悪いなと思っていたのに、朝になったらスッキリしていて、なんとか用だけ足したらそのまままた寝ることにした。
そんな風に何日か。
久々にちゃんと起きたら、記憶が2人分になっていた。
いや、まだ混乱してるのかも?
でもまあ、危険の溢れるこの世界で生きてきた15年の知識と、平和な世界ではあっても子供が成人するまで生きていた記憶のある知識と、混ざったことはよかったことなのかもしれないと思った。
つまり、母親との思い出の詰まったこの家を手放せば、もっと楽に生きる道もあるはずなのだ。
優しくて強かった母。
小さな時に死別した父のことは覚えていないが、病床で『まだ子供のお前を残していくのは申し訳ないけれど、あの人のところへ行けるのが嬉しい』と笑った母を思い出す。
苦労して育ててくれた母に対する執着のようなものが、客観的に見られるようになっていた。
ここにいては搾取されることの方が多いだろうし。
もう少し身体が本調子になったら、出ていくことを視野に入れて荷造りしないとならない。
俺は住み慣れたボロ家を見渡した。
金はある。
父と母が亜空間収納に隠してくれた財産と自分でコツコツ貯めた金が、確認したらそれなりにあった。
そうすれば後は、道中に必要になるであろう食料くらいだろうか。
俺は今まで通り狩に出て、けれども売りには出さず干しては保存食を作った。
この辺りは、何回か行っただけのキャンプ知識が役に立ったといえる。
割と質のいい保存食に、ほっこりできた。
あとは、暖かくなったら新天地を探そう。
人恋しくとも自分らしく生きられる、そんな土地があるといい。
1話短め
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しくじった。
普段なら深追いなどしないのだけれど、もう少しというところまで獲物を追い込めたこともあって、深部に入り込んでしまったのだ。
獲物は無事獲れたけれども、食人植物の攻撃を避けられなかった。
攻撃を受けた左腕が異様に熱い。元から不自由だった左腕だから、動きづらいことがそうたいしたダメージにはならないとしても、血が流れ過ぎるのはよくない。
今日はこれ以上無理だなと判断した俺は、軽く傷口を塞ぐと帰路を急いだ。
「お前にしては上出来じゃねえか!」
換金所まであと数メートルという所で、キロキロ鳥を掻っ攫われた。
彼らは5日に1回くらいこうして俺の荷を奪う。
いつもなら追いかけて取り返すこともあるのだが、武器を利き手に、反対側のケガをしている方に獲物をロープで担いでいたせいで治まっていた傷口が開いたらしい。
一瞬で左半身が赤く染まることになった。
「な!おまっ」
こいつのこんな顔初めて見るかもしんね。
なんとなくおかしくなって、もう獲物なんていらね、とさっさと後にした。
家に帰って薬を塗りたくって寝た。
カギ閉めたかなと一瞬頭をかすめたが、小さいけども亜空間収納スキルを取得している俺は大切なものはそこに全部入れてあるのだ。
成人するまでは持っていても使えなかった亜空間収納は、ついこないだ15歳になると使えるようになった。
中には父と母から譲られた財産がしっかりと収められていた。まあ、平民の譲れるものなんかたかが知れてるけどな。
俺は取られるものも無いことを思い出して、まあいいやと寝ることにした。
夜中、喉が渇いたなと思ったら口に柔らかいものが当たって、そこから水が流れてきて起きなくて済んだ。
なんとなく汗が気持ち悪いなと思っていたのに、朝になったらスッキリしていて、なんとか用だけ足したらそのまままた寝ることにした。
そんな風に何日か。
久々にちゃんと起きたら、記憶が2人分になっていた。
いや、まだ混乱してるのかも?
でもまあ、危険の溢れるこの世界で生きてきた15年の知識と、平和な世界ではあっても子供が成人するまで生きていた記憶のある知識と、混ざったことはよかったことなのかもしれないと思った。
つまり、母親との思い出の詰まったこの家を手放せば、もっと楽に生きる道もあるはずなのだ。
優しくて強かった母。
小さな時に死別した父のことは覚えていないが、病床で『まだ子供のお前を残していくのは申し訳ないけれど、あの人のところへ行けるのが嬉しい』と笑った母を思い出す。
苦労して育ててくれた母に対する執着のようなものが、客観的に見られるようになっていた。
ここにいては搾取されることの方が多いだろうし。
もう少し身体が本調子になったら、出ていくことを視野に入れて荷造りしないとならない。
俺は住み慣れたボロ家を見渡した。
金はある。
父と母が亜空間収納に隠してくれた財産と自分でコツコツ貯めた金が、確認したらそれなりにあった。
そうすれば後は、道中に必要になるであろう食料くらいだろうか。
俺は今まで通り狩に出て、けれども売りには出さず干しては保存食を作った。
この辺りは、何回か行っただけのキャンプ知識が役に立ったといえる。
割と質のいい保存食に、ほっこりできた。
あとは、暖かくなったら新天地を探そう。
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