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番外編
フィリオルの独白
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スランプに片足を突っ込んでるのは否めないのですが、只今連続出張中でして
『家事やらなくていいってことは夜めっちゃ書けるのでは?』
と思ってましたら、都会はもう夜のお誘い(酒)OKなのですね
水場、飲み始めると2ℓくらいビール飲んじゃうもので、ちょっと書けない状況が続いております
ということで、すごい昔に書いたどこに入れたらいいのかわからない閑話を挟ませてください
本当、すみません
ーーーーーーーーーー
全ての引き継ぎは終えてあった。
混乱は何も起きなかった。
毒杯を呷りこと切れたであろうハゥビッセの腕の中で、リグリアンが眠るように亡くなっていたのが発見されたのは今朝のことだった。
「まさか子の方が先に逝くことになろうとは」
10年前、王が代替わりしたのを機にハゥビッセが長子ドゥワンドに家督を譲った。
無理が祟って自力で歩くことの難しくなったリグリアンを支えるためにだ。
一族の誰も、それに否をとなえる者はいなかった。
それもそのはず。
「お祖父様、どうされました?」
「あぁ、ドゥワンドか。ハゥビッセは最後まで自慢の息子だったと思ってな」
「っ!そうでしょうか……」
其方が理解できないのは致し方ない。
☆
ディズラム家の5男であった私は、例え公爵家の子であったとしても家を継ぐ可能性は無いに等しかった。
武でも文でも特に秀でたところもなく、ただ悠々と人生を謳歌するつもりであった。
自身の地位も高くは無く、生涯所帯を持つこともないであろうと考えていた。
故に国を離れ遊学に勤しみ、他国の情報を兄に伝えるためのただの一族の一員として、その日その日を優雅に暮らしていたのだ。
私が17の時だ。
突然、父の従兄弟が父に反旗を翻した。
30年以上もの間、諾々と従うように見せていた彼が、実力を身につけ、父の庇護下から抜け出す時を虎視眈々と待っていたらしい。
父は『精霊の祝福』を持って生まれてきた、正当なディズラム家の後継者であった。
そして彼は、父に万が一の事が起きた時の代替として、父が生まれた3年後に『精霊の祝福』を持って生まれてきたのだ。
ただし代替は正統な後継者よりは数段劣り、覚醒も遅いのだとか。
『精霊の祝福』が誕生した時には、必ず『代替』も生まれる。
『代替』は正当な後継者にとって唯一の『人間』だ。
他は人の形をした『駒』でしかないという。
子である私も、父にとってはただの『駒』だったと理解していた。
そしてそれに疑問など持たないほど、それを当たり前のこととして受け入れていた。
従兄弟とはいえ彼は遠方にいたため、父と顔を合わせたのは学院に入る年だったという。
そこで父は彼を己の唯一だと気づいたのだ。
囲い込みは残酷で、彼の気を引く者は父によって様々な報復を受けた。
周囲からは次第に彼が孤立するかと思われていたようだが、そうはならなかった。
彼が父の執着を受け止める余裕を見せたからだ。
どうすれば父の機嫌を取れるのか。
どうすれば他に被害が及ばないのか。
彼もまた人を使うことに長けている加害者だったわけだ。
が、そんな風にしながら力を蓄えた彼が父に逆らった結果、それぞれに心酔する者達がぶつかり合うこととなった。
それは今もディズラム家の集団心中事件として我らの胸の奥に深い傷となって残っている。
およそ7割の一族が巻き込まれたそれで、私の兄弟は誰一人として生き残らなかった。
それであるのに不思議とディズラム家の影響力は落ちず、精霊という、私には決して感じられない力は確かに存在するのだと理解することとなった。
だからこそ。
『唯一』の死に、巻き込まれたのが己のみという事実を誇りに思うのだ。
「ドゥワンド、お前にはわからぬかもしれんが、ハゥビッセは……お前の父は、父なりに家族を大切にしていたよ」
「そうでしょうか」
「ああ、私たち家族が1人も欠けることなく存在している……それは私にとっては奇跡そのものだと思えるほどに」
「そういえば……お祖父様の代は一族が半減したのでしたね」
「ああ」
その言葉で、ドゥワンドがハゥビッセを理解しようと僅かに受け入れたことを感じる。
戦友と呼ぶ妻に他の全てを放り投げることで、妻子を支配下に置くことを止めていた。
その命を奪うことなく、思考に自由を与えていた。
「お前達を人として見ようと、ハゥビッセなりに努力していたのだ」
使えるモノは使う。
ハゥビッセにとって、近くに侍る人間は精霊の力によって逆らわない駒として動かせるのだから。
ただ1人の主人として心酔しその身を捧げる。
ある意味残酷なその干渉は、家族には及んでいなかった。
それはドゥワンドが父からの愛情を欲して寂しく思う、その感情が存在していることでわかるだろう。
それは当時の私にはなかったモノだ。
「いつか、いや、もしかしたらお前の子が『精霊の祝福』を持って生まれてくることもある。その時に知識がなくては、一族がまた半減することが起こるやもしれん。私の父の時のようにな」
「お祖父様、精霊の加護者の……いえ、父上の話を教えてください」
「ああ、いいだろう」
こうしてハゥビッセの追悼の夜は静かに更けていった。
『家事やらなくていいってことは夜めっちゃ書けるのでは?』
と思ってましたら、都会はもう夜のお誘い(酒)OKなのですね
水場、飲み始めると2ℓくらいビール飲んじゃうもので、ちょっと書けない状況が続いております
ということで、すごい昔に書いたどこに入れたらいいのかわからない閑話を挟ませてください
本当、すみません
ーーーーーーーーーー
全ての引き継ぎは終えてあった。
混乱は何も起きなかった。
毒杯を呷りこと切れたであろうハゥビッセの腕の中で、リグリアンが眠るように亡くなっていたのが発見されたのは今朝のことだった。
「まさか子の方が先に逝くことになろうとは」
10年前、王が代替わりしたのを機にハゥビッセが長子ドゥワンドに家督を譲った。
無理が祟って自力で歩くことの難しくなったリグリアンを支えるためにだ。
一族の誰も、それに否をとなえる者はいなかった。
それもそのはず。
「お祖父様、どうされました?」
「あぁ、ドゥワンドか。ハゥビッセは最後まで自慢の息子だったと思ってな」
「っ!そうでしょうか……」
其方が理解できないのは致し方ない。
☆
ディズラム家の5男であった私は、例え公爵家の子であったとしても家を継ぐ可能性は無いに等しかった。
武でも文でも特に秀でたところもなく、ただ悠々と人生を謳歌するつもりであった。
自身の地位も高くは無く、生涯所帯を持つこともないであろうと考えていた。
故に国を離れ遊学に勤しみ、他国の情報を兄に伝えるためのただの一族の一員として、その日その日を優雅に暮らしていたのだ。
私が17の時だ。
突然、父の従兄弟が父に反旗を翻した。
30年以上もの間、諾々と従うように見せていた彼が、実力を身につけ、父の庇護下から抜け出す時を虎視眈々と待っていたらしい。
父は『精霊の祝福』を持って生まれてきた、正当なディズラム家の後継者であった。
そして彼は、父に万が一の事が起きた時の代替として、父が生まれた3年後に『精霊の祝福』を持って生まれてきたのだ。
ただし代替は正統な後継者よりは数段劣り、覚醒も遅いのだとか。
『精霊の祝福』が誕生した時には、必ず『代替』も生まれる。
『代替』は正当な後継者にとって唯一の『人間』だ。
他は人の形をした『駒』でしかないという。
子である私も、父にとってはただの『駒』だったと理解していた。
そしてそれに疑問など持たないほど、それを当たり前のこととして受け入れていた。
従兄弟とはいえ彼は遠方にいたため、父と顔を合わせたのは学院に入る年だったという。
そこで父は彼を己の唯一だと気づいたのだ。
囲い込みは残酷で、彼の気を引く者は父によって様々な報復を受けた。
周囲からは次第に彼が孤立するかと思われていたようだが、そうはならなかった。
彼が父の執着を受け止める余裕を見せたからだ。
どうすれば父の機嫌を取れるのか。
どうすれば他に被害が及ばないのか。
彼もまた人を使うことに長けている加害者だったわけだ。
が、そんな風にしながら力を蓄えた彼が父に逆らった結果、それぞれに心酔する者達がぶつかり合うこととなった。
それは今もディズラム家の集団心中事件として我らの胸の奥に深い傷となって残っている。
およそ7割の一族が巻き込まれたそれで、私の兄弟は誰一人として生き残らなかった。
それであるのに不思議とディズラム家の影響力は落ちず、精霊という、私には決して感じられない力は確かに存在するのだと理解することとなった。
だからこそ。
『唯一』の死に、巻き込まれたのが己のみという事実を誇りに思うのだ。
「ドゥワンド、お前にはわからぬかもしれんが、ハゥビッセは……お前の父は、父なりに家族を大切にしていたよ」
「そうでしょうか」
「ああ、私たち家族が1人も欠けることなく存在している……それは私にとっては奇跡そのものだと思えるほどに」
「そういえば……お祖父様の代は一族が半減したのでしたね」
「ああ」
その言葉で、ドゥワンドがハゥビッセを理解しようと僅かに受け入れたことを感じる。
戦友と呼ぶ妻に他の全てを放り投げることで、妻子を支配下に置くことを止めていた。
その命を奪うことなく、思考に自由を与えていた。
「お前達を人として見ようと、ハゥビッセなりに努力していたのだ」
使えるモノは使う。
ハゥビッセにとって、近くに侍る人間は精霊の力によって逆らわない駒として動かせるのだから。
ただ1人の主人として心酔しその身を捧げる。
ある意味残酷なその干渉は、家族には及んでいなかった。
それはドゥワンドが父からの愛情を欲して寂しく思う、その感情が存在していることでわかるだろう。
それは当時の私にはなかったモノだ。
「いつか、いや、もしかしたらお前の子が『精霊の祝福』を持って生まれてくることもある。その時に知識がなくては、一族がまた半減することが起こるやもしれん。私の父の時のようにな」
「お祖父様、精霊の加護者の……いえ、父上の話を教えてください」
「ああ、いいだろう」
こうしてハゥビッセの追悼の夜は静かに更けていった。
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