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16話 15歳の体質変化

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最近、日中のほとんどをユキ達と過ごしているせいだと思うが、俺の魔力に変化があった。
さすが神獣ってヤツだよな。

なんと作り方は今までと変わらないのに、作る酒の10本に1本の割合で『薬』の文字が入り始めた。
つまり『米薬酒』みたいなのな。
焼酎系は切り傷に効くとか、果実酒系は打身に効くとか違いの系統もわかってきて、簡単に世に出していいかわからん。
まあ、普通の酒は夕食につけるようになって、イフトとちびちびやるのも結構楽しい。

ただ肝心のイフトは、最近はお誘いが引っ張りダコらしくて一緒に食べることが少なくなったんだけどな。
外でどんちゃんしてるの見ると、まあ、若いなって感じだ。

ヤツらは俺のことも誘ってくれるのだが、その中に歓迎していないヤツもいるわけで、俺は基本参加しない。
実は酔っぱらったイフトが夜中に家に来ないよう、外で酒盛りが始まるとイフトの登録魔石を外すことにしている。
1度こっちに来たイフトが向こうに戻らないことで、ネチネチと嫌味を言われたからだ。

さてと、既に賑やかになってるのが聞こえるってことは今日もイフトは来ないってことで、レトルチックでも作ろうかなー。
定期的に隣村に行っては瓶をもらってくるから、料理のレパートリーを増やして売り出し中だ。

最近では1回に100食くらい卸しているから、日用品とかもたくさん買えるようになった。
親からも完全に独り立ちできたし、レトルチックを実家に置いてこれるようにもなったし、俺としては一人前になれた満足感はすごいある。

途中まで作って、鍋ごと収納していた料理を取り出すと火にかける。
この鍋も隣町産で特大サイズだ。
そんなにたくさんの鍋をどうするのかとかなり不思議には思われたが、村にあるだけもらって帰ってきた。
彼らの俺に対する好感度が高すぎて、ちゃんと儲けあるのかと心配になる金額での取引だった。

正直、鍋ごと収納できるのが楽過ぎて、途中まで作って放置してある料理がすごいある。
今日みたいに時間のある時に仕上げをする感じで、時間のない時は収穫した野菜などを切って鍋にぶち込んでおくだけとか、少しだけ火を通して調味料を入れるだけとかだ。
毎日何かしら収穫できるからな。
次の工程の野菜や果物が採れるまで、亜空間収納に突っ込んでおけばいいなんてマジで楽だろ。

「あ、やべ。酒を入れるつもりが薬酒だった」
他ごとを考えながら作業をするべきではなかったな。
仕上がりを見て、売りに出せるか考えるか。
まあ、イフトに食べさせるだけなら大丈夫だろう。
完全にイフトが実験動物モルモット扱いだが、身体に悪いことはないと思うから許せ。


そうして調理に夢中になっていると、表のドアがガンガンと叩かれた。
「リースぅ、開けてよぉ、リースぅ!」
ちっ、酔っぱらいめ!
俺は慌てて鍋を回収する。

玄関は魔術で補強してあるから、馬鹿力で暴れても壊れることはない。
ただ煩いだけだ。
わかってはいるが、一応ドア越しに様子を見ようと覗き窓を開けた。
因みにコレ特注で、他の家には無いものらしい。

間違えて返事を返しちまうとドアを開けるまでこれが続くわけで、そっと全てを片付けて布団に入ってしまえば俺が寝たと思って諦めるのは経験済みだ。
酔っぱらいの相手なんかできるか!

アイツは覚えてないだろうけどな、酔っぱらった時のイフトはキス魔になるんだぞ。
そりゃあもう、俺が可哀想になるくらいずーっとだ。
馬鹿力と体重に押し潰されて死ぬかと思うし、マジで迷惑だ。
きっと他にも犠牲者はいてだな、アレを食らった女子がイフトに好かれてると思うのは仕方ないだろう。
だが、俺に嫌味を言うのはお門違いだぞ、と声を大にして言いたい。
イフトの気を引きたいなら、本人に直接言うべきである。

「おーい、イフト!リースの迷惑になんぞ。こっちに戻ってこい」
ほれ、呼ばれてるぞ。
「だってぇ、リースが、無視する、から」
鼻をすすりながら泣く声が聞こえる。

ったく、いつまでも、俺も、ああっ、ほんっとイフトには甘い!

ガチャリとドアを開けると、イフトが振り返った。
「お前、煩いぞ」
迷惑顔を隠さずにしっかりと怒ってるのを表しているのに、嬉しそうなのはなんでだ。

「リースぅぅっ!!」
「うわっ、バカ!やめろって!!」
まだ人が見てるだろうがっ。

「あ、リースわりい!ソイツ泣くとうぜえから引き取ってやって!」
「俺たち片付けてイフトん家で勝手に寝るんで」
ああ、今日は女子いねえのか。
じゃなくって!!

「いや!俺も困っ!」
「リース、行こ♡みんな行っていいって♡」
「いやっ、あ?」

ガチャンとドアが閉まると、簡単に持ち上げられた俺はドサリとベットに落とされていた。
「ん、むっ、やめっ」
いや、だから、お前酒癖悪すぎだから!


ああ、マジ、なんで俺こうなるってわかっててほとけ心なんか出したかな……。
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