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14話 14歳の帰路
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「おやっさん、ここの宿って犬を預けておける場所ある?」
村に着くと、まずは宿の確保に動いた。
ヨイヤミは人化する気はないらしく、大人しくやりとりを聞いている。
「坊主、こりゃ犬じゃねえぞ。神獣様じゃあねえか」
「……そうなのか?」
あれ?
神獣とかって、わかるもんなんか?
獣人とかと違うんだけっけ?
よくわからん。
「なんだ。お前さん知らんで連れまわしとるのか。調教具も締めとらんのに大人しくしとるのがまずおかしいし、ほれ、人の言葉を理解しておるだろ」
「まあ、賢いなとは思ってたけど」
やっぱ俺ももう少し他人とコミュニケーション取らないと、この世界の情報がわかんないなあ。
イフトとはそういう話、しないもんな。
「神獣様なら獣舎じゃなくても部屋に一緒に泊まればいいだろう」
「そうですか。じゃあ1泊お願いします」
一緒に泊まれるんだ。
宿代が浮くと思って思わず敬語になっちまったぜ。
「1泊ってことは近くから来たのか?」
「うん、シシダリスからなー」
「あー……、じゃあ悪いけどなあ、店の中の魔道具の魔力を込めてもらえんかな。宿代引かせてもらうからよ」
おっさんはものすごく申し訳なさそうに手を合わせた。
「いいっすよ。どこっすか?」
宿代安くなるならラッキーだぜ。
俺、実は家に備えつけてある魔道具って初めて見るんだよな。
村じゃ水も火も、1人や2人分くらいなら魔道具なんかいらないもんなあ。
「これなんだが。いやー、もう少しでなくなるからどうしようかと思ってたとこだよ。ちょっとだけでも助かるんだが」
なるほど。
これが大元で、家中のエネルギーを賄ってんだな。
この棒状の魔石部分に魔力を詰めればいいのかな?
確かに下の方だけ綺麗に色がついている。上の透明になってる部分も赤くなればいいんだろう。
こう、か?
おお、グングン吸ってくな。
「お、おい!そんなに魔力を入れたら倒れてしまうぞ」
「んー、そうでもないかなー。俺、魔力多いらしくて」
魔石の色が変わっていくのが面白くて、満タンまでと思って入れていると、周りがざわついた。
「ま、待ってくれ!俺のところはこれで充分だから、まだ入れられるっつうなら、他の家にも入れてやってもらえんかな」
おっさんが焦りながら周りを見渡している。
周りの人が興奮気味なのが、ちと怖い。
「いいけど、まだいっぱいになってないぞ」
「いいんだ、いいんだ。これで2・3年は保っちまう。さすがにこれ以上は支払えんから」
「え?金なんていらないけど?」
金とる気なんかなかったんだけど。
「そうはいかん。後々の揉め事になっちまうからな。タダより怖いもんはねえって」
でも勝手に入れ過ぎたのは、俺が面白かったからだしなあ。
「あー、じゃあ俺、こういう瓶と陶器が欲しくてこの村まで来たんで、後で安いとこ紹介してください」
「おお、そんなことでいいなら任せとけ!」
「じゃ、じゃあ兄ちゃん、俺んとこもいいか?」
「あ、はい」
おっさんと話がつくと、今度は引っ張りだこになった。
次々と、日が暮れるまで20家ほど魔力込めを行うと、久しぶりに亜空間収納に移す魔力がない状態になった。
んー、スッキリ爽快!
気持ち悪くもなってねえ。
気分よく宿に帰ると、ドデカい台車にこれでもかと木箱に入った瓶が積まれていた。
しかもお金まで。
あ、2万カーネも入ってる。
「少ないが、これは俺たちの気持ちだ。もらってくれ。神獣様なら運べるだろう」
「あ、ありがとうございます」
かくして、大量の瓶(とおよそ20万円の現金)を1日でゲットできたのである。
☆
「また来てくれな!魔力を詰めてくれたら宿代いらねえから!」
「あはは、またお願いします」
こんなにたくさんの瓶を消化するの、時間かかりそうだけど。
一応台車には軽量化の魔法をかけて、ヨイヤミが台車を引く形で村を出た。
村から出て人の目が無くなると『ユキも引っ張る!』と獣化してヨイヤミの横に入り込んだ。
楽しそうにでも見えたのかね。
ヨイヤミの尾の振られ具合を見るに、めっちゃ嬉しそうだからいいか。
俺も崩れそうなほど積んである瓶を半分ほど亜空間に入れた。
一応魔術で固定しているとはいえ、いつか崩れるんじゃないかと気が気でなかったからな。
☆
そうして夕方、シシダリス村の入り口に差し掛かったところで、がっしりとイフトに抱きつかれている。
「ど、どうした、イフト」
「…………家に帰ったら、リース、いなかった」
ん?
「なんだよ。寂しかったのか?」
「頑張って討伐してきたから、リースに褒めてもらいたかったのに」
……っ!
子供かよ!
はあ、なんだかなあ。
「じゃあ、家に帰ったら褒めてやるから、向こうでの話、聞かせろ」
「うん!」
☆
「俺、仕入れてきた荷物を片付けるから、先に風呂に入れ」
イフトに告げると、大人しく風呂に入りにいった。
《リース、我らはこの姿のまま外にいるゆえ、今日はあの者の相手をしてやるといいぞ》
《ユキ、畑にいる!あそこ気持ちいいし》
イフトめ、ユキとヨイヤミに気ィ使わせてんじゃん。
まあ、およそひと月の討伐だったわけだし、労ってやるのに異論はないんだけどな。
「悪いな。なんか食い物でも持って行くか?」
《んー、畑の実り食べてもいい?》
「もちろん」
《じゃあいらなーい》
ユキとヨイヤミは仲良く出て行ってしまった。
いつの間に仲直りしたんだろ。
まー、あんなに酷い呪いをかけられても友人だと言ってたくらいだからな。
じゃあ、ご馳走を用意して、イフトを褒めちぎるとするか。
ーーーーーーーーーー
20家分、それぞれおよそ2年くらいの光熱費を補充したリース。
1家辺り1万円(急だったので手元にあるお金をかき集めた)✕20家=20万円。
瓶や陶器は20家がお店からつけ払いで購入してくれています。
リースにとっては大金だし、20家にとっては破格の安さだし、お互いWin-Winなのでした。
村に着くと、まずは宿の確保に動いた。
ヨイヤミは人化する気はないらしく、大人しくやりとりを聞いている。
「坊主、こりゃ犬じゃねえぞ。神獣様じゃあねえか」
「……そうなのか?」
あれ?
神獣とかって、わかるもんなんか?
獣人とかと違うんだけっけ?
よくわからん。
「なんだ。お前さん知らんで連れまわしとるのか。調教具も締めとらんのに大人しくしとるのがまずおかしいし、ほれ、人の言葉を理解しておるだろ」
「まあ、賢いなとは思ってたけど」
やっぱ俺ももう少し他人とコミュニケーション取らないと、この世界の情報がわかんないなあ。
イフトとはそういう話、しないもんな。
「神獣様なら獣舎じゃなくても部屋に一緒に泊まればいいだろう」
「そうですか。じゃあ1泊お願いします」
一緒に泊まれるんだ。
宿代が浮くと思って思わず敬語になっちまったぜ。
「1泊ってことは近くから来たのか?」
「うん、シシダリスからなー」
「あー……、じゃあ悪いけどなあ、店の中の魔道具の魔力を込めてもらえんかな。宿代引かせてもらうからよ」
おっさんはものすごく申し訳なさそうに手を合わせた。
「いいっすよ。どこっすか?」
宿代安くなるならラッキーだぜ。
俺、実は家に備えつけてある魔道具って初めて見るんだよな。
村じゃ水も火も、1人や2人分くらいなら魔道具なんかいらないもんなあ。
「これなんだが。いやー、もう少しでなくなるからどうしようかと思ってたとこだよ。ちょっとだけでも助かるんだが」
なるほど。
これが大元で、家中のエネルギーを賄ってんだな。
この棒状の魔石部分に魔力を詰めればいいのかな?
確かに下の方だけ綺麗に色がついている。上の透明になってる部分も赤くなればいいんだろう。
こう、か?
おお、グングン吸ってくな。
「お、おい!そんなに魔力を入れたら倒れてしまうぞ」
「んー、そうでもないかなー。俺、魔力多いらしくて」
魔石の色が変わっていくのが面白くて、満タンまでと思って入れていると、周りがざわついた。
「ま、待ってくれ!俺のところはこれで充分だから、まだ入れられるっつうなら、他の家にも入れてやってもらえんかな」
おっさんが焦りながら周りを見渡している。
周りの人が興奮気味なのが、ちと怖い。
「いいけど、まだいっぱいになってないぞ」
「いいんだ、いいんだ。これで2・3年は保っちまう。さすがにこれ以上は支払えんから」
「え?金なんていらないけど?」
金とる気なんかなかったんだけど。
「そうはいかん。後々の揉め事になっちまうからな。タダより怖いもんはねえって」
でも勝手に入れ過ぎたのは、俺が面白かったからだしなあ。
「あー、じゃあ俺、こういう瓶と陶器が欲しくてこの村まで来たんで、後で安いとこ紹介してください」
「おお、そんなことでいいなら任せとけ!」
「じゃ、じゃあ兄ちゃん、俺んとこもいいか?」
「あ、はい」
おっさんと話がつくと、今度は引っ張りだこになった。
次々と、日が暮れるまで20家ほど魔力込めを行うと、久しぶりに亜空間収納に移す魔力がない状態になった。
んー、スッキリ爽快!
気持ち悪くもなってねえ。
気分よく宿に帰ると、ドデカい台車にこれでもかと木箱に入った瓶が積まれていた。
しかもお金まで。
あ、2万カーネも入ってる。
「少ないが、これは俺たちの気持ちだ。もらってくれ。神獣様なら運べるだろう」
「あ、ありがとうございます」
かくして、大量の瓶(とおよそ20万円の現金)を1日でゲットできたのである。
☆
「また来てくれな!魔力を詰めてくれたら宿代いらねえから!」
「あはは、またお願いします」
こんなにたくさんの瓶を消化するの、時間かかりそうだけど。
一応台車には軽量化の魔法をかけて、ヨイヤミが台車を引く形で村を出た。
村から出て人の目が無くなると『ユキも引っ張る!』と獣化してヨイヤミの横に入り込んだ。
楽しそうにでも見えたのかね。
ヨイヤミの尾の振られ具合を見るに、めっちゃ嬉しそうだからいいか。
俺も崩れそうなほど積んである瓶を半分ほど亜空間に入れた。
一応魔術で固定しているとはいえ、いつか崩れるんじゃないかと気が気でなかったからな。
☆
そうして夕方、シシダリス村の入り口に差し掛かったところで、がっしりとイフトに抱きつかれている。
「ど、どうした、イフト」
「…………家に帰ったら、リース、いなかった」
ん?
「なんだよ。寂しかったのか?」
「頑張って討伐してきたから、リースに褒めてもらいたかったのに」
……っ!
子供かよ!
はあ、なんだかなあ。
「じゃあ、家に帰ったら褒めてやるから、向こうでの話、聞かせろ」
「うん!」
☆
「俺、仕入れてきた荷物を片付けるから、先に風呂に入れ」
イフトに告げると、大人しく風呂に入りにいった。
《リース、我らはこの姿のまま外にいるゆえ、今日はあの者の相手をしてやるといいぞ》
《ユキ、畑にいる!あそこ気持ちいいし》
イフトめ、ユキとヨイヤミに気ィ使わせてんじゃん。
まあ、およそひと月の討伐だったわけだし、労ってやるのに異論はないんだけどな。
「悪いな。なんか食い物でも持って行くか?」
《んー、畑の実り食べてもいい?》
「もちろん」
《じゃあいらなーい》
ユキとヨイヤミは仲良く出て行ってしまった。
いつの間に仲直りしたんだろ。
まー、あんなに酷い呪いをかけられても友人だと言ってたくらいだからな。
じゃあ、ご馳走を用意して、イフトを褒めちぎるとするか。
ーーーーーーーーーー
20家分、それぞれおよそ2年くらいの光熱費を補充したリース。
1家辺り1万円(急だったので手元にあるお金をかき集めた)✕20家=20万円。
瓶や陶器は20家がお店からつけ払いで購入してくれています。
リースにとっては大金だし、20家にとっては破格の安さだし、お互いWin-Winなのでした。
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