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12話 14歳のおつかい
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ちょっと口の大きな瓶に、調理済みの食事を入れる。
瓶には1年間の保存魔術を仕込み、ようやく完成っと。
実はこれ、レトルトからヒントを得て作った『レトルチック』という商品なんだ。
熱が加わったら時間の魔術が解けるようにするのに試行錯誤することになった。
じゃないと温かくならなかったんだよ。
中に柔らかくなるまで煮込んだ肉や畑で取れた野菜が入っていて、1食100カーネ。
だいたい1日で1万円くらいの収入になる。
14のガキんちょの収入にしてはいいと思わねえ?
「リース君さあ、これ、もう少したくさん作れないかい?」
味も毎回変えたりして、下に降りてきた時に10食分を平地にある小売店に卸しているのだが、これがすぐに売れてしまうらしい。
小売店では150カーネで売り出しているにもかかわらず。
1食というか、ここの村人はたくさん食べるから1食のうちの1品が1500円て結構高い気もするけど、村の人ら金に余裕はあるもんなー。
「うーん、俺、自分で野菜も育ててるし、そんなに時間がないってのもあるけど、この瓶の数がそんなにないんだよなあ」
瓶は他の村からの輸入品だ。この村では作っていない。
ここの小売店で売ってるのを買ったり、レトルチックの終わった瓶を回収したりして次の分を詰めてる身としては、そんなに効率は上がらないのだ。
「でも今度ソチラノ村まで行くから、ちょっと多めに買ってこようとは思ってるけどな」
「そうかい?じゃあそれまで待ってようかねえ」
にこにことユキを撫でていた店主が、よっこらせと立ち上がり今日の売上げを渡してくれた。
「ああ。ユキが嵩張る荷物も持ってくれるから、たくさん買ってくるわ」
「あはは、ユキちゃん頼んだよ」
☆
そうして出かけることにしたわけだが、同行者がいるってのは結構楽しいんだな。
今までは亜空間収納を見られるのも困るってことで、付いてきたがるイフトのことを断って1人で出かけていたわけだが、ユキには獣態時代に散々見られているわけで、今更隠す必要がない。
『おー、リースすごいぞ!ユキより大きい!』
道端に咲いてる花ひとつでも大騒ぎだ。
「あんま近づくなよ。それ、小型の獣なら喰っちまう怖い花だぞ」
千年前にはなかった花なのか?
『ユ、ユ、ユ、ユキは別に怖くないぞ!つ、強いからな!』
「そうだったっけか?」
ユキは人化すると俺の胸辺りまでしかなく7・8歳に見える。
本当ならもっと大きいと主張するユキだが、ユキ曰く『食べる量が決まってる故、今の身体を維持するので精一杯だから、今は小さいのだ』ってことらしい。
なんでも尊い身分のユキだが、意地悪な友人に呪いをかけられて神力というものが身体からすぐ抜けてしまうようになったんだとか。
俺の作る料理にはその神力を補う魔力が混ざっているから、食べれば生きていけるけど、これよりも大きくなるには魔力が足りないてことらしい。
これ以上は腹がはち切れるから食べられないんだと拗ねていた。
しかし、命を脅かすような呪いをかけてくるヤツを果たして友人と呼んでいいものなのか、かなり疑問だ。
まあ、ユキが友人だと思っているなら別にいいんだけどな。
そいつがやってきたら、さり気なく俺がユキを守ってやればいいだけだ。
「ほら、急がないと今日中に村に着けないぞ。野宿になってもいいのか?」
あっちに行ったり来たりするユキを見ているのも楽しいが、これではいつ到着できるか分からない。
『ユキは強いから野宿でもいいぞ。リースが怖いなら頑張って歩くけど!』
「じゃあ、俺のために頑張ってくれ」
タタタと走ってきたユキがギュッと手を握ってきた。
かわいいっ。
まあ、あまり張り切り過ぎてもユキには辛いかもしれないから、野宿でもいいけどな。
正直ユキが普通に生きるために、どのくらいの量の魔力が必要なのかわからないから、無駄に動き回るのも避けたい。
そろそろ日が暮れはじめるというところで、俺達のいる50mほど先の場所に崖の上から大柄の男が滑り落ちてきた。
男は地面に危なげなく着地するとキョロキョロと辺りを見渡し、こちらに向かって走ってくる。
俺がさりげなくユキの前に出るのと、ユキが身体を強張らせるのが同時だった。
「お前、△〇*▽※☐!生きていたのか!」
男が勢いよく飛び込んでくると、ユキが背中に隠れた。
「ユキ、知り合いか?」
『……知らないっ。リース、この人怖い』
ユキの態度が、全く知らない相手に対するものではないことはわかってはいたが、俺はユキの意見に沿うことにした。
「……ユ、ユキ?」
「ああ、この子はユキっていうんだ。貴方の知人に似ていたのかな?」
男はユキの名前を呟いた後、「お、俺のことが怖いのか?」と少し涙目になった。
視線はずっとユキをとらえている。
ユキは男から視線を反らして、完全に知らん顔だ。
「俺が△〇*▽※☐を間違えるわけがない。俺がお前にひどいことをしたから、怒っているのか?ああでもよかった。生きていてよかった」
厳つい大男が跪いて泣いている。
対して、ユキはつーんと顔を背けたままだ。
こいつはあれか?
ユキが死ぬ目にあった原因の友人か?
『ユキ、△〇*▽※☐じゃないもん。お前なんか大っ嫌い!』
ってユキ……。
それ、知り合いだって言ってるようなもんだぞ。
俺にはお前の本当の呼び名(かな?)なんて言ってるか聞き取れなかったからな。
しかし。
泣いている大男と、知らんぷりするユキ。
微々っとも動かない。
いつになったら事態が動くことやら。
今日は野宿決定かなあ。
瓶には1年間の保存魔術を仕込み、ようやく完成っと。
実はこれ、レトルトからヒントを得て作った『レトルチック』という商品なんだ。
熱が加わったら時間の魔術が解けるようにするのに試行錯誤することになった。
じゃないと温かくならなかったんだよ。
中に柔らかくなるまで煮込んだ肉や畑で取れた野菜が入っていて、1食100カーネ。
だいたい1日で1万円くらいの収入になる。
14のガキんちょの収入にしてはいいと思わねえ?
「リース君さあ、これ、もう少したくさん作れないかい?」
味も毎回変えたりして、下に降りてきた時に10食分を平地にある小売店に卸しているのだが、これがすぐに売れてしまうらしい。
小売店では150カーネで売り出しているにもかかわらず。
1食というか、ここの村人はたくさん食べるから1食のうちの1品が1500円て結構高い気もするけど、村の人ら金に余裕はあるもんなー。
「うーん、俺、自分で野菜も育ててるし、そんなに時間がないってのもあるけど、この瓶の数がそんなにないんだよなあ」
瓶は他の村からの輸入品だ。この村では作っていない。
ここの小売店で売ってるのを買ったり、レトルチックの終わった瓶を回収したりして次の分を詰めてる身としては、そんなに効率は上がらないのだ。
「でも今度ソチラノ村まで行くから、ちょっと多めに買ってこようとは思ってるけどな」
「そうかい?じゃあそれまで待ってようかねえ」
にこにことユキを撫でていた店主が、よっこらせと立ち上がり今日の売上げを渡してくれた。
「ああ。ユキが嵩張る荷物も持ってくれるから、たくさん買ってくるわ」
「あはは、ユキちゃん頼んだよ」
☆
そうして出かけることにしたわけだが、同行者がいるってのは結構楽しいんだな。
今までは亜空間収納を見られるのも困るってことで、付いてきたがるイフトのことを断って1人で出かけていたわけだが、ユキには獣態時代に散々見られているわけで、今更隠す必要がない。
『おー、リースすごいぞ!ユキより大きい!』
道端に咲いてる花ひとつでも大騒ぎだ。
「あんま近づくなよ。それ、小型の獣なら喰っちまう怖い花だぞ」
千年前にはなかった花なのか?
『ユ、ユ、ユ、ユキは別に怖くないぞ!つ、強いからな!』
「そうだったっけか?」
ユキは人化すると俺の胸辺りまでしかなく7・8歳に見える。
本当ならもっと大きいと主張するユキだが、ユキ曰く『食べる量が決まってる故、今の身体を維持するので精一杯だから、今は小さいのだ』ってことらしい。
なんでも尊い身分のユキだが、意地悪な友人に呪いをかけられて神力というものが身体からすぐ抜けてしまうようになったんだとか。
俺の作る料理にはその神力を補う魔力が混ざっているから、食べれば生きていけるけど、これよりも大きくなるには魔力が足りないてことらしい。
これ以上は腹がはち切れるから食べられないんだと拗ねていた。
しかし、命を脅かすような呪いをかけてくるヤツを果たして友人と呼んでいいものなのか、かなり疑問だ。
まあ、ユキが友人だと思っているなら別にいいんだけどな。
そいつがやってきたら、さり気なく俺がユキを守ってやればいいだけだ。
「ほら、急がないと今日中に村に着けないぞ。野宿になってもいいのか?」
あっちに行ったり来たりするユキを見ているのも楽しいが、これではいつ到着できるか分からない。
『ユキは強いから野宿でもいいぞ。リースが怖いなら頑張って歩くけど!』
「じゃあ、俺のために頑張ってくれ」
タタタと走ってきたユキがギュッと手を握ってきた。
かわいいっ。
まあ、あまり張り切り過ぎてもユキには辛いかもしれないから、野宿でもいいけどな。
正直ユキが普通に生きるために、どのくらいの量の魔力が必要なのかわからないから、無駄に動き回るのも避けたい。
そろそろ日が暮れはじめるというところで、俺達のいる50mほど先の場所に崖の上から大柄の男が滑り落ちてきた。
男は地面に危なげなく着地するとキョロキョロと辺りを見渡し、こちらに向かって走ってくる。
俺がさりげなくユキの前に出るのと、ユキが身体を強張らせるのが同時だった。
「お前、△〇*▽※☐!生きていたのか!」
男が勢いよく飛び込んでくると、ユキが背中に隠れた。
「ユキ、知り合いか?」
『……知らないっ。リース、この人怖い』
ユキの態度が、全く知らない相手に対するものではないことはわかってはいたが、俺はユキの意見に沿うことにした。
「……ユ、ユキ?」
「ああ、この子はユキっていうんだ。貴方の知人に似ていたのかな?」
男はユキの名前を呟いた後、「お、俺のことが怖いのか?」と少し涙目になった。
視線はずっとユキをとらえている。
ユキは男から視線を反らして、完全に知らん顔だ。
「俺が△〇*▽※☐を間違えるわけがない。俺がお前にひどいことをしたから、怒っているのか?ああでもよかった。生きていてよかった」
厳つい大男が跪いて泣いている。
対して、ユキはつーんと顔を背けたままだ。
こいつはあれか?
ユキが死ぬ目にあった原因の友人か?
『ユキ、△〇*▽※☐じゃないもん。お前なんか大っ嫌い!』
ってユキ……。
それ、知り合いだって言ってるようなもんだぞ。
俺にはお前の本当の呼び名(かな?)なんて言ってるか聞き取れなかったからな。
しかし。
泣いている大男と、知らんぷりするユキ。
微々っとも動かない。
いつになったら事態が動くことやら。
今日は野宿決定かなあ。
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