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17話 お家が格安だったわけ
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おかしいな~とは思ったんだよ。
だって家一軒がたったの金貨2枚。
日本円にして2万円だ。
安すぎるだろ?
ボロ屋だったけど、住む分には問題なさそうだったし、そこまで安くしないといけない理由は見当たらなかった。
何日かして、理由が判明しましたとも。
「サフィ様、今日は3人でした」
ロープでぐるぐる巻きにされた不法侵入者。
つまり、ここは浮浪者たちが雨や寒さを避けるために使用することがある建物だったってわけだ。
モーリーさんにしてみれば管理のしづらい物件だったってわけだろうな。
今頃は手を放せて安堵しているに違いない。
けれど不法侵入者にしてみれば、格安で短期に借りる人たちとは違い、家主が家を改造し始めたことに焦ったんだろう。
長期滞在か?え、新しい所有者?!これから雨風凌ぐのをどうしたらいいんだ!ってわけだ。
そんな彼らが、自分たちの陣地を取り戻そうと毎日襲いかかってくるのは、まあ、理解した。
「サフィ様、どうしますか?殺りますか?それとも殺りますか?」
いやそれ、選択肢1つだけだよね?!
「サフィ様と俺のしんこ……んゲフンゲフン、生活を邪魔する輩なんか殺るしかないですよね!」
リクの顔が必要以上にギラついているのはなんでだろうか。
しょっぱなリクが連れてきた3人は、次の日に気がついたら虫の息になっていて、怪力と浄化とほんの少しの生活魔法しか使えない俺は途方に暮れた。
このままだと死んでしまうな、と。
癒しの力があるのは弟のクリスなのだ。
日本とは違うとわかっていても、身内が殺人犯とか……ダメだよな。
出来得る限り、延命してみることにした。
ひとまず浄化で汚れを落として感染を防ぎ、お湯みたいな薄さのスープを与え続けた。栄養はたっぷりあったとは思うけど。
あと気休めに治れ~と、気功みたいな念は込めてみた。効果があったかは全くわからないが、直ぐに顔色が戻った彼らに気をよくして、気功は続けた。
結果、彼らの生命力はゴキブリ並だったってことがわかった。
3日で元の彼らより元気になり、罰として自ら畑を耕しはじめたのだ。
あの燃え残った灰を土とよく混ぜながら、庭をしっかりと耕してくれた。
そんな彼らの仲間もやっぱりゴキブリ並なんだろう。
1匹いたら30匹いると思え。3人いたから90人か。
…………多いな。
次々と湧く彼らに、とうとうリクの方が切れたようだ。殺って間引こうと思うくらいには。
俺はモズラをスリスリして、うっすいスープを作って配るだけだから、畑を耕す人が増えるのは別に構わないんだけどなー。
モズラなんて、あんなに美味しいのに誰も収穫しないんだぜ?
だから森で取り放題のただ食材だし、全く懐にダメージなしだからさ。あいつらに森で見つけたら根こそぎ持ってこいと言ってあるから、増える増える。
外に山のように積んであるのを、せっせとすっては茹でて鞄保存してあるから、人が増えても当分困らない。
まあ、メニューに代わり映えがないのだけは我慢してもらわなければならないが。
そうして耕される畑はとうとう森の中まで侵食して、最初の頃の自給自足の目標を超え、立派な大農家になりそうな感じになっている。
土地も勝手に広げているから、そのうち誰からか怒られるかも……とは思っているが、その時になったら、平和な交渉(主に腕力で)ができたらいいなという希望だ。
あ、そういえば森の主に許可取ってなかったぞ。
お~い、シフォン~!勝手に森を削ったから怒ってるよな、ごめん!
なんつって。今度会いに行こう。
《何、そのくらいの土地ならば構わぬよ》
へ?
シフォン?
《くくくっ。何を驚いておる。坊主とは契約を結んでおるから、思念くらいは通じるに決まっておろう》
そうなのか?
じゃあ、少しだけ森を分けてくれ。ごめんな。
《いいってことよ》
へへ、ありがとう。
「あ、あの。サフィ様?」
頭の中で会話している間俺が止まっていたために、リクもその子分達も俺を伺うように見ていた。
うん、これでは怪しい人だ。これからは気をつけよう。
「あ~、殺すのはダメだけど、処分は任せた。鞄に入っているお金はリクの物だし、好きに使えばいいからな」
裏町仲間だったっていうなら、腹を空かせてるのをかわいそうだと思うんだろうし。
リクが助けてあげたかったら助けてあげればいいのだ、とか思ってた俺が悪かったのか?
リクが裏町を掌握して、統率された軍団みたいなのが出来上がるとは思っていなかった。
パッと見、王子様なリクが指示を出して彼らを動かす様は、マフィ◯のドンというかヤク◯の頭というか…………顔が綺麗な方が怖さって増すよな。不思議だ。
けどさ。
「兄貴、今日の収穫終わりました」
「大兄、あとどれほどシマを増やしますか」
「兄さん、こいつ新しい舎弟です。お見知り置きを」
って、俺はあんたらに関係無いし、いちいち報告に来なくていいんだよ!
お前らに関係あるのはリクだけだからな。
俺はリクがお前らになんの仕事を与えているのかなんてのも知らないんだよ。
悪役兄ちゃんは、力をつけたらダメなんだぞ。
悪の軍団とか、いらねーぞ!
頼むから、俺を巻き込むなよ!
ほんと、マジで!
だって家一軒がたったの金貨2枚。
日本円にして2万円だ。
安すぎるだろ?
ボロ屋だったけど、住む分には問題なさそうだったし、そこまで安くしないといけない理由は見当たらなかった。
何日かして、理由が判明しましたとも。
「サフィ様、今日は3人でした」
ロープでぐるぐる巻きにされた不法侵入者。
つまり、ここは浮浪者たちが雨や寒さを避けるために使用することがある建物だったってわけだ。
モーリーさんにしてみれば管理のしづらい物件だったってわけだろうな。
今頃は手を放せて安堵しているに違いない。
けれど不法侵入者にしてみれば、格安で短期に借りる人たちとは違い、家主が家を改造し始めたことに焦ったんだろう。
長期滞在か?え、新しい所有者?!これから雨風凌ぐのをどうしたらいいんだ!ってわけだ。
そんな彼らが、自分たちの陣地を取り戻そうと毎日襲いかかってくるのは、まあ、理解した。
「サフィ様、どうしますか?殺りますか?それとも殺りますか?」
いやそれ、選択肢1つだけだよね?!
「サフィ様と俺のしんこ……んゲフンゲフン、生活を邪魔する輩なんか殺るしかないですよね!」
リクの顔が必要以上にギラついているのはなんでだろうか。
しょっぱなリクが連れてきた3人は、次の日に気がついたら虫の息になっていて、怪力と浄化とほんの少しの生活魔法しか使えない俺は途方に暮れた。
このままだと死んでしまうな、と。
癒しの力があるのは弟のクリスなのだ。
日本とは違うとわかっていても、身内が殺人犯とか……ダメだよな。
出来得る限り、延命してみることにした。
ひとまず浄化で汚れを落として感染を防ぎ、お湯みたいな薄さのスープを与え続けた。栄養はたっぷりあったとは思うけど。
あと気休めに治れ~と、気功みたいな念は込めてみた。効果があったかは全くわからないが、直ぐに顔色が戻った彼らに気をよくして、気功は続けた。
結果、彼らの生命力はゴキブリ並だったってことがわかった。
3日で元の彼らより元気になり、罰として自ら畑を耕しはじめたのだ。
あの燃え残った灰を土とよく混ぜながら、庭をしっかりと耕してくれた。
そんな彼らの仲間もやっぱりゴキブリ並なんだろう。
1匹いたら30匹いると思え。3人いたから90人か。
…………多いな。
次々と湧く彼らに、とうとうリクの方が切れたようだ。殺って間引こうと思うくらいには。
俺はモズラをスリスリして、うっすいスープを作って配るだけだから、畑を耕す人が増えるのは別に構わないんだけどなー。
モズラなんて、あんなに美味しいのに誰も収穫しないんだぜ?
だから森で取り放題のただ食材だし、全く懐にダメージなしだからさ。あいつらに森で見つけたら根こそぎ持ってこいと言ってあるから、増える増える。
外に山のように積んであるのを、せっせとすっては茹でて鞄保存してあるから、人が増えても当分困らない。
まあ、メニューに代わり映えがないのだけは我慢してもらわなければならないが。
そうして耕される畑はとうとう森の中まで侵食して、最初の頃の自給自足の目標を超え、立派な大農家になりそうな感じになっている。
土地も勝手に広げているから、そのうち誰からか怒られるかも……とは思っているが、その時になったら、平和な交渉(主に腕力で)ができたらいいなという希望だ。
あ、そういえば森の主に許可取ってなかったぞ。
お~い、シフォン~!勝手に森を削ったから怒ってるよな、ごめん!
なんつって。今度会いに行こう。
《何、そのくらいの土地ならば構わぬよ》
へ?
シフォン?
《くくくっ。何を驚いておる。坊主とは契約を結んでおるから、思念くらいは通じるに決まっておろう》
そうなのか?
じゃあ、少しだけ森を分けてくれ。ごめんな。
《いいってことよ》
へへ、ありがとう。
「あ、あの。サフィ様?」
頭の中で会話している間俺が止まっていたために、リクもその子分達も俺を伺うように見ていた。
うん、これでは怪しい人だ。これからは気をつけよう。
「あ~、殺すのはダメだけど、処分は任せた。鞄に入っているお金はリクの物だし、好きに使えばいいからな」
裏町仲間だったっていうなら、腹を空かせてるのをかわいそうだと思うんだろうし。
リクが助けてあげたかったら助けてあげればいいのだ、とか思ってた俺が悪かったのか?
リクが裏町を掌握して、統率された軍団みたいなのが出来上がるとは思っていなかった。
パッと見、王子様なリクが指示を出して彼らを動かす様は、マフィ◯のドンというかヤク◯の頭というか…………顔が綺麗な方が怖さって増すよな。不思議だ。
けどさ。
「兄貴、今日の収穫終わりました」
「大兄、あとどれほどシマを増やしますか」
「兄さん、こいつ新しい舎弟です。お見知り置きを」
って、俺はあんたらに関係無いし、いちいち報告に来なくていいんだよ!
お前らに関係あるのはリクだけだからな。
俺はリクがお前らになんの仕事を与えているのかなんてのも知らないんだよ。
悪役兄ちゃんは、力をつけたらダメなんだぞ。
悪の軍団とか、いらねーぞ!
頼むから、俺を巻き込むなよ!
ほんと、マジで!
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