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日々、胃もたれ
◇
しおりを挟む僕は多分、生き続けるのだろう。
この閉じた世界の中で。
何のために生きているのか、何のために時間を使うのかも、考える必要も感じないまま。
僕は目を閉じる。本当に来る、永遠の眠りを迎えるために、その為の練習をするかのように。
瞼の裏で、様々な情景が浮かんでは消えていく。その煌めきを、僕は美しいと思った。
どのような生活であろうと、僕を彩ってきたかけがえのない生活だった。僕はこの街で、この国で呼吸し、僕は確実に生き残っていた。
失われたものを感じると、悲しくなるが、僕はそれでも、この国で、この街の中で、これからも生き続けるのだろうと思う。
日々、考えることを放棄し、その先も、未来の事も、捨て鉢の中に隠すようにして。それでも、生きていくのだろうと思う。
瞼が、自然と落ちてくる。傾いた意識の盃が、その中で夜を歪に光らせている。
僕にはその夜が、僕に向かって微笑みかけているように感じられた。
僕はその夜に向けて、くたばれと叫び、それから、瞼を落として、眠りに落ちた。
もう来ることのない朝を想いながら。
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