夏風

幽々

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外界

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「へえ~。姫様ってそんな事するんだ。変なの」

 ……盛り上がっている。

 案の定というか、可憐は早々にガレージの中に入ると、男を見つけ、テントの前に一つしかない椅子を持ってきて、背を前にして股を開いて座り、話し込んでいる。

 男も男でまんざらでもない様子で、可憐の矢継ぎ早な質問に淡々と答えていた。

「我々の世界では常識なのだ。むしろ、こちらの世界ではそうでないというのが、私には理解できない。一体どのように生活しているのだ。お前達は」

「私たち? 私たちはねえ~。う~ん、内緒」

 またそれか、と男は不満げに口にするものの、実際はそれ程でもないようで、男は可憐との会話の中身も例の紙に書き付けているようだった。

「私、自分のこと話すより、人の話聴く方が好き~」

「どの口が言う」

 とろん、とした顔で誘惑でもしようとしているのか、私は少し苛ついて、可憐の頭を手刀で叩いた。

「あいた」

 可憐が答え、いい音が鳴り、イヴァンは私と可憐の様子を交互に目に留めていた。そして、言う。

「……本当に、仲がいいのだな」

 可憐が嬉しそうに微笑む。

「でしょう? 私とカレンはマブダチだからね。取ろうったってそうはいかないからね」

 男は鼻を鳴らした。

「誰が取るか。それに、女同士の友情など、たかが知れているものだ」

「女同士の友情など、たかが知れているものどぅあ」

 イヴァンの台詞を可憐が馬鹿にした口調で繰り返し、イヴァンが睨んだ。

 可憐は舌を出して頭に手をやり、テヘペロのポーズをとる。

 私が再び頭を叩き、イヴァンが珍しく溜息をついた。

「それで?」

 私達が答える。

「それで? って、何?」

 イヴァンは難渋そうに言葉を紡ぐ。

「この国の代表者と会わせてくれるんじゃないのか、昨日はなんだかんだとはぐらかされたが。私には時間がないのだぞ。お前達の気楽な身分とは違う」

「思春期の女子高生にも色々あるんですぅ、気楽とは笑わせるぜ」

 可憐の言葉に、イヴァンは、ししゅん……、コウコウセイ……? と、明らかに理解できていない様子で繰り返したが、私は助け舟を出さなかった。

 可憐が続けて言った。

「まあ、代表者といえば、今の所私達がそうだよね。私とカレン。多分この街で一番客観的にこの街のこと、観れてる気がするよ」

 胡散臭そうに可憐を見るイヴァンの顔に、私は思わず笑ってしまった。

 イヴァンと可憐が私を見たので、慌てて顔を元に戻して、言った。

「まあ、可憐の言う代表者かは知らないけど、話を聞くくらいはできるけどね。でも、それじゃあ不満なんだろう?」

 男は私から視線を外し、深く頷いた。

「そうだ。私には時間がない。早くこの国から姫様候補となる者を見つけ出し、連れ出さなければならないのだ。年頃の娘、丁度、お前たちのような……」

 イヴァンが改まった目で私達を見つめ、低く呟く。

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