21 / 27
外界
○
しおりを挟む
「へえ~。姫様ってそんな事するんだ。変なの」
……盛り上がっている。
案の定というか、可憐は早々にガレージの中に入ると、男を見つけ、テントの前に一つしかない椅子を持ってきて、背を前にして股を開いて座り、話し込んでいる。
男も男でまんざらでもない様子で、可憐の矢継ぎ早な質問に淡々と答えていた。
「我々の世界では常識なのだ。むしろ、こちらの世界ではそうでないというのが、私には理解できない。一体どのように生活しているのだ。お前達は」
「私たち? 私たちはねえ~。う~ん、内緒」
またそれか、と男は不満げに口にするものの、実際はそれ程でもないようで、男は可憐との会話の中身も例の紙に書き付けているようだった。
「私、自分のこと話すより、人の話聴く方が好き~」
「どの口が言う」
とろん、とした顔で誘惑でもしようとしているのか、私は少し苛ついて、可憐の頭を手刀で叩いた。
「あいた」
可憐が答え、いい音が鳴り、イヴァンは私と可憐の様子を交互に目に留めていた。そして、言う。
「……本当に、仲がいいのだな」
可憐が嬉しそうに微笑む。
「でしょう? 私とカレンはマブダチだからね。取ろうったってそうはいかないからね」
男は鼻を鳴らした。
「誰が取るか。それに、女同士の友情など、たかが知れているものだ」
「女同士の友情など、たかが知れているものどぅあ」
イヴァンの台詞を可憐が馬鹿にした口調で繰り返し、イヴァンが睨んだ。
可憐は舌を出して頭に手をやり、テヘペロのポーズをとる。
私が再び頭を叩き、イヴァンが珍しく溜息をついた。
「それで?」
私達が答える。
「それで? って、何?」
イヴァンは難渋そうに言葉を紡ぐ。
「この国の代表者と会わせてくれるんじゃないのか、昨日はなんだかんだとはぐらかされたが。私には時間がないのだぞ。お前達の気楽な身分とは違う」
「思春期の女子高生にも色々あるんですぅ、気楽とは笑わせるぜ」
可憐の言葉に、イヴァンは、ししゅん……、コウコウセイ……? と、明らかに理解できていない様子で繰り返したが、私は助け舟を出さなかった。
可憐が続けて言った。
「まあ、代表者といえば、今の所私達がそうだよね。私とカレン。多分この街で一番客観的にこの街のこと、観れてる気がするよ」
胡散臭そうに可憐を見るイヴァンの顔に、私は思わず笑ってしまった。
イヴァンと可憐が私を見たので、慌てて顔を元に戻して、言った。
「まあ、可憐の言う代表者かは知らないけど、話を聞くくらいはできるけどね。でも、それじゃあ不満なんだろう?」
男は私から視線を外し、深く頷いた。
「そうだ。私には時間がない。早くこの国から姫様候補となる者を見つけ出し、連れ出さなければならないのだ。年頃の娘、丁度、お前たちのような……」
イヴァンが改まった目で私達を見つめ、低く呟く。
……盛り上がっている。
案の定というか、可憐は早々にガレージの中に入ると、男を見つけ、テントの前に一つしかない椅子を持ってきて、背を前にして股を開いて座り、話し込んでいる。
男も男でまんざらでもない様子で、可憐の矢継ぎ早な質問に淡々と答えていた。
「我々の世界では常識なのだ。むしろ、こちらの世界ではそうでないというのが、私には理解できない。一体どのように生活しているのだ。お前達は」
「私たち? 私たちはねえ~。う~ん、内緒」
またそれか、と男は不満げに口にするものの、実際はそれ程でもないようで、男は可憐との会話の中身も例の紙に書き付けているようだった。
「私、自分のこと話すより、人の話聴く方が好き~」
「どの口が言う」
とろん、とした顔で誘惑でもしようとしているのか、私は少し苛ついて、可憐の頭を手刀で叩いた。
「あいた」
可憐が答え、いい音が鳴り、イヴァンは私と可憐の様子を交互に目に留めていた。そして、言う。
「……本当に、仲がいいのだな」
可憐が嬉しそうに微笑む。
「でしょう? 私とカレンはマブダチだからね。取ろうったってそうはいかないからね」
男は鼻を鳴らした。
「誰が取るか。それに、女同士の友情など、たかが知れているものだ」
「女同士の友情など、たかが知れているものどぅあ」
イヴァンの台詞を可憐が馬鹿にした口調で繰り返し、イヴァンが睨んだ。
可憐は舌を出して頭に手をやり、テヘペロのポーズをとる。
私が再び頭を叩き、イヴァンが珍しく溜息をついた。
「それで?」
私達が答える。
「それで? って、何?」
イヴァンは難渋そうに言葉を紡ぐ。
「この国の代表者と会わせてくれるんじゃないのか、昨日はなんだかんだとはぐらかされたが。私には時間がないのだぞ。お前達の気楽な身分とは違う」
「思春期の女子高生にも色々あるんですぅ、気楽とは笑わせるぜ」
可憐の言葉に、イヴァンは、ししゅん……、コウコウセイ……? と、明らかに理解できていない様子で繰り返したが、私は助け舟を出さなかった。
可憐が続けて言った。
「まあ、代表者といえば、今の所私達がそうだよね。私とカレン。多分この街で一番客観的にこの街のこと、観れてる気がするよ」
胡散臭そうに可憐を見るイヴァンの顔に、私は思わず笑ってしまった。
イヴァンと可憐が私を見たので、慌てて顔を元に戻して、言った。
「まあ、可憐の言う代表者かは知らないけど、話を聞くくらいはできるけどね。でも、それじゃあ不満なんだろう?」
男は私から視線を外し、深く頷いた。
「そうだ。私には時間がない。早くこの国から姫様候補となる者を見つけ出し、連れ出さなければならないのだ。年頃の娘、丁度、お前たちのような……」
イヴァンが改まった目で私達を見つめ、低く呟く。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる