夏風


私はどんな場所よりも、空の中に抱かれていることの方が好きだった。

空は、私の全てを肯定してくれていた。

私は、この世界の事が好きではない。ただ、嫌いでもないのだ。ただただ、合わないというだけ。私と私の今いる世界とは、出会うべきではなかった、ただそれだけなのだ。

あれ程美しかった空も、今は重たい雲に覆われて、太陽の姿も見えない。街は水没し、私のいる電波塔のすぐ側まで、水位は昇ってきている。

私は何のために、今更になって、こんな事を書いているのだろう。一体、誰の為に。

窓の外の、豪雨の作る幾つもの細い線の先に、私が憎んでやまなかった雷の壁が揺らいで見えている。

私は書くのをやめた。

・・世界が終わる雨の日に 花澤カレン
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