廃墟の街

一歩

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光の国

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 目が覚めた時、自分が風呂場の前に立っていることに気付いた。

 風呂場の前の、広めの洗面所の手前。そこに、何故か裸で立っている。

 鏡を見てみる。

 自分の姿がそこにはある……ように見える?

 薄ぼんやりしていて、こんなに肌が白かっただろうか? 一応裸らしい。男なのか女なのか、いや、胸が少しばかり膨らんでいるような気もする。気持ち。

 鏡を見るより、直接見下ろす方が簡単に分かると知り、うん、女だと分かる。

 まあとりあえずそこに風呂があるんだから入ってゆっくりしようと何故か私は思い、警戒感ゼロで横滑りのすりガラスの扉を開けて、中に入る。

 湯気がほかほかと上がっている、タイル張りの古い感じの大きな浴槽。

 迷わずお湯の中に足を着けて、大丈夫そうと思って一気に全身を浸ける。

 ふう~。

 何か大きな音がする。

 唸り声? サイレンみたいだ。

 怪獣が怒鳴るような声だ。空腹の時に叫びそうな、駄々をこねているような、そんな……。

 外の扉が音を立てた。ガタッと。

「誰?」

 ここに来て初めて声を上げたことに気付いて、今更ながら少し驚く。

 でも、今は呑気になっている場合ではない。

「誰?」

 ガタ、扉が軋む音。すりガラスで奥が見えない。体を隠しながら、すりガラスをゆっくりと開けて覗き込んだ。

 立っていたのは『自分』だった。

 口が大きく開きすぎていて、三日月を横にしたようになっている。目は陥没していて、そこはブラックホールみたいに無機質で、時間が止まっているみたいだった。

「誰」

「おかえり、お姉ちゃん」

 大きな音を立てて天井が崩れ始め、瓦礫が浴槽に飛び込み、熱いお湯が全身を覆う。そして私にも、目の前の

『私』の上にも、瓦礫が降り注いだ。
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