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第五章 ドルトムットの闇
5-29 逃避行⑤
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ウォルターと男の斬り合い……というよりかわし合いは延々と続いていた。
その男は狂戦士であった。このままでは埒が明かないと感じた男は能力を使う事を決断する。
『狂戦士化』
男の体が黄金色に光ったかと思うと、全ての能力が上昇する。
男の唸り声は獣の如く、ウォルターはその声に戦慄する。
そして、強烈な一撃が振り下ろされる。
斧を振るう速度も上がっていた。
ウォルターはその一撃を辛うじてかわすが、地面に叩きつけられた斧によって小さなクレーターのような跡ができる。
凄まじいまでの圧力。
一撃でも喰らえばやられてしまうだろう。
ウォルターはひたすら攻撃を回避する事に専念して、暗殺者の能力『必殺』にかけることにした。『尾行』、『気配遮断』などの、追尾能力が豊富なのに比べて暗殺者は攻撃用の能力が少ない。『必殺』はそんな数少ない攻撃用の能力で、普通の攻撃でも相手に致命傷を負わせ得るものだ。
隙を狙って攻撃をかわし続けるウォルターは、虎視眈々と反撃の機会をうかがっていた。『狂戦士化』の能力を発動した男の目は血走っており、最早正気ではない事が見て取れる。男の振りが大きくなって、確かに隙は増えたかも知れないが、その圧力にウォルターは中々反撃に移れないでいた。
振り回される斧の攻撃をかいくぐり、男を観察し続けるウォルター。
そして再び、男の斧が地面にめり込む。
そこで、すかさず斧の上に足を乗せ、斧の柄の部分を器用に駆け抜けると、短剣を一閃する。
『必殺』
ウォルターの体が黄金色に輝く。
その一撃は、男の首筋を薙ぐ……はずだった。
男は上に乗ったウォルターごと斧を思いっきり振り上げたのであった。
結果、ウォルターの剣は空を斬り、その体が空中へと放り出される。
それでもなんとか空中でバランスを取り、手をつきながらも地面に着地する。
ウォルターと狂戦士の戦いは決定打に欠けていた。
バーバラと海賊戦士の戦いも白熱していた。
二人の斬り合いはもう二十合近くに渡って繰り広げられていた。
「どうしたどうしたぁ、鉄鬼のバーバラさんよぉ!」
「その口を閉じろッ!」
「実戦から離れて腕が鈍っちまったんじゃないのかい?」
「……」
バーバラは男の言葉に耳を貸さずに黙々と剣筋を見極めて弾き返すことだけに集中し始める。男は太腿を魔法で斬り裂かれ血がにじんでいる。
そこで彼女は、弾き返すのを止め、鍔迫り合いに持ち込むと思いっきり体重を乗せる。しかし、思ったより傷は浅かったようで男の膝を折る事はできなかった。
再び、剣撃を浴びせ始めるバーバラ。
男の方も言葉で挑発しているが、そこまで余裕がある訳ではなかった。
言葉で彼女の焦りやイラだちを引き出そうとしての小細工であった。
バーバラはいずれ放つ決定打のために連撃を見舞っていた。
レヴィンとマイセンの戦いは剣の腕ではレヴィンが上回っていたが、マイセンの盾使いの巧みさによって、ほぼ互角の様相を呈していた。ちなみに、既に戦場に立っているマイセンの部下は狂戦士と海賊戦士と後、数人しかいなくなっている。
マイセンの周囲にいた部下はレヴィンの魔法によって全て沈黙させられた。
マイセン自身も離れると魔法を喰らいかねないので、何とかレヴィンに引っ付いて戦っている。
「降伏しろッ! マイセンッ!」
「ちょこざいなッ!」
レヴィンの連撃をマイセンが盾で防ぐ。
それなりに丈夫な盾のようで、マイセンの盾使いも相まってびくともしない。
すかさず、マイセンがレヴィンの腹の辺りを狙って斬りつける。
その攻撃に左手を剣に添えて受け止めると、魔法陣を展開する。
「電撃」
サイドステップでその雷撃をかわすとマイセンは再びレヴィンに密着しようと接近する。
しかし、そうはさせじとレヴィンは後ろに大きく飛ぶと、再度魔法を放った。
「亜極雷陣」
魔法の発動と同時にマイセンは手にしていた剣を頭上に投げる。
雷撃はその剣に収束し、マイセンには及ばない。
レヴィンは舌打ちをしつつ、ダッシュで間合いを詰めるとマイセンが剣を拾おうとしているのを阻止するように下段から剣を振り上げる。
今度はマイセンが舌打ちをする番であった。
中々剣を拾う事が出来ず盾でレヴィンの攻撃を防ぎ続ける。
マイセンはレヴィンを殺そうとしているが、レヴィンは彼を殺す事はできない。
レヴィンの目的は彼を捕えて告発する事であり、殺してしまっては逆に立場が悪くなりかねない。
この状況を打破するためにレヴィンは、闇の剣を解放する事を決める。
「闇よッ!」
夜の闇より深い漆黒がレヴィンの持つ剣を中心にして生まれた。
その男は狂戦士であった。このままでは埒が明かないと感じた男は能力を使う事を決断する。
『狂戦士化』
男の体が黄金色に光ったかと思うと、全ての能力が上昇する。
男の唸り声は獣の如く、ウォルターはその声に戦慄する。
そして、強烈な一撃が振り下ろされる。
斧を振るう速度も上がっていた。
ウォルターはその一撃を辛うじてかわすが、地面に叩きつけられた斧によって小さなクレーターのような跡ができる。
凄まじいまでの圧力。
一撃でも喰らえばやられてしまうだろう。
ウォルターはひたすら攻撃を回避する事に専念して、暗殺者の能力『必殺』にかけることにした。『尾行』、『気配遮断』などの、追尾能力が豊富なのに比べて暗殺者は攻撃用の能力が少ない。『必殺』はそんな数少ない攻撃用の能力で、普通の攻撃でも相手に致命傷を負わせ得るものだ。
隙を狙って攻撃をかわし続けるウォルターは、虎視眈々と反撃の機会をうかがっていた。『狂戦士化』の能力を発動した男の目は血走っており、最早正気ではない事が見て取れる。男の振りが大きくなって、確かに隙は増えたかも知れないが、その圧力にウォルターは中々反撃に移れないでいた。
振り回される斧の攻撃をかいくぐり、男を観察し続けるウォルター。
そして再び、男の斧が地面にめり込む。
そこで、すかさず斧の上に足を乗せ、斧の柄の部分を器用に駆け抜けると、短剣を一閃する。
『必殺』
ウォルターの体が黄金色に輝く。
その一撃は、男の首筋を薙ぐ……はずだった。
男は上に乗ったウォルターごと斧を思いっきり振り上げたのであった。
結果、ウォルターの剣は空を斬り、その体が空中へと放り出される。
それでもなんとか空中でバランスを取り、手をつきながらも地面に着地する。
ウォルターと狂戦士の戦いは決定打に欠けていた。
バーバラと海賊戦士の戦いも白熱していた。
二人の斬り合いはもう二十合近くに渡って繰り広げられていた。
「どうしたどうしたぁ、鉄鬼のバーバラさんよぉ!」
「その口を閉じろッ!」
「実戦から離れて腕が鈍っちまったんじゃないのかい?」
「……」
バーバラは男の言葉に耳を貸さずに黙々と剣筋を見極めて弾き返すことだけに集中し始める。男は太腿を魔法で斬り裂かれ血がにじんでいる。
そこで彼女は、弾き返すのを止め、鍔迫り合いに持ち込むと思いっきり体重を乗せる。しかし、思ったより傷は浅かったようで男の膝を折る事はできなかった。
再び、剣撃を浴びせ始めるバーバラ。
男の方も言葉で挑発しているが、そこまで余裕がある訳ではなかった。
言葉で彼女の焦りやイラだちを引き出そうとしての小細工であった。
バーバラはいずれ放つ決定打のために連撃を見舞っていた。
レヴィンとマイセンの戦いは剣の腕ではレヴィンが上回っていたが、マイセンの盾使いの巧みさによって、ほぼ互角の様相を呈していた。ちなみに、既に戦場に立っているマイセンの部下は狂戦士と海賊戦士と後、数人しかいなくなっている。
マイセンの周囲にいた部下はレヴィンの魔法によって全て沈黙させられた。
マイセン自身も離れると魔法を喰らいかねないので、何とかレヴィンに引っ付いて戦っている。
「降伏しろッ! マイセンッ!」
「ちょこざいなッ!」
レヴィンの連撃をマイセンが盾で防ぐ。
それなりに丈夫な盾のようで、マイセンの盾使いも相まってびくともしない。
すかさず、マイセンがレヴィンの腹の辺りを狙って斬りつける。
その攻撃に左手を剣に添えて受け止めると、魔法陣を展開する。
「電撃」
サイドステップでその雷撃をかわすとマイセンは再びレヴィンに密着しようと接近する。
しかし、そうはさせじとレヴィンは後ろに大きく飛ぶと、再度魔法を放った。
「亜極雷陣」
魔法の発動と同時にマイセンは手にしていた剣を頭上に投げる。
雷撃はその剣に収束し、マイセンには及ばない。
レヴィンは舌打ちをしつつ、ダッシュで間合いを詰めるとマイセンが剣を拾おうとしているのを阻止するように下段から剣を振り上げる。
今度はマイセンが舌打ちをする番であった。
中々剣を拾う事が出来ず盾でレヴィンの攻撃を防ぎ続ける。
マイセンはレヴィンを殺そうとしているが、レヴィンは彼を殺す事はできない。
レヴィンの目的は彼を捕えて告発する事であり、殺してしまっては逆に立場が悪くなりかねない。
この状況を打破するためにレヴィンは、闇の剣を解放する事を決める。
「闇よッ!」
夜の闇より深い漆黒がレヴィンの持つ剣を中心にして生まれた。
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