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第三章 死霊都市レムレース
3-19 出兵
しおりを挟む次の日、朝刊には衝撃の見出しが躍っていた。
『アウステリア王国、シ・ナーガ民国領へ出兵!』
出兵は、度々国境を侵してくるシ・ナーガ民国の馬賊討伐を名目としていた。
実際、シ・ナーガ民国は一枚岩とは言えず、さらには治安維持もままならない状態であった。地方に軍閥が台頭し、中央政府の言う事を聞かないのが当然の風潮が生まれていたのだ。その軍閥が旧シ・ナーガ帝國領内で暴れるのみならず、アウステリア王国の国境を越えてくるものだから今回の派兵に至ったという話である。
その実、国内の食糧不足を他国での略奪で何とかしようという意図が見え隠れしていたのであるが……。
レヴィンは難しい顔をしながら朝刊のページをめくる。
『エクス海峡で大型輸送船沈没か?』
九月二十八日未明、エクス海峡周辺で、都市国家連合の大型輸送船『セレンティア』が沈没した。
この海域は頻繁に海賊が出没しており、危険な海域として知られていた。
護送船団が護衛に当たっていたようだが、全船沈められたのではないかと思われるそうだ。
『セレンティア』は輸送品を分捕られた上で沈没したのか、何も取られずに沈没したのかは不明だと言う事であった。
この結果いかんでは、トレジャーハンターが大量に押し寄せると予想されているらしい。
レヴィンは、フィルなんかはどっち側になりたいのかな?と思った次第である。
トレジャーハンターになりたいのか、それとも海賊になりたいのかである。
まぁ、東の海を冒険したいと言っていたので、トレジャーハンターかなと思いつつ、違う紙面に目を移した。
『古代図書館ウェリタスの地下一階層の浄化が完了』
精霊の森の南で発見された古代遺跡の地下部分が、十月に入ってようやく浄化が完了したそうだ。
以前も報道された通り、地下は古代図書館になっており、死霊が頻繁に出没する事から、まともに調査が行われなかった。
未だ解明されていない、古代言語で書かれている書物ばかりではあるが、今後の解読に期待されると言う事だ。
レヴィンが一度入ったが、文字が読めなくて重要度の優先順位をさげた場所である。未知の魔導書が眠っている可能性があり、興味は尽きない。
読めさえすれば、レヴィンにとって垂涎ものなのだが、読めないものは仕方がないのである。
速い解明を期待しながらレヴィンは他の記事を読み始める。
『神聖アルヴァ教国が、騎馬民族国家ゼノに宣戦!これは誅伐戦争である!』
神聖アルヴァ教国が東の騎馬民族国家ゼノを蛮族と名指しし、誅伐を行うと発表した。以前から、確執のあった両国であったが、この度、神聖アルヴァ教国の教皇クラヴィスは、奇妙な紋様により人心を惑わす不徳の王としてゼノ王、リューロンを激しく弾劾した。奇妙な紋様と言うのは、体に入った刺青の事である。
これに対し、騎馬民族国家ゼノは沈黙を貫いており、状況は緊迫している。
レヴィンは東方の情勢には詳しくなかったが、少なくとも開戦理由はただのいちゃもんに過ぎないのでは?と思わずにはいられなかった。
この記事は大々的な見出しの割に具体的な内容が薄いのである。
彼は前世界のメディアを思い出していた。
レヴィンは、いつも学校から帰ってから朝刊を読んでいるのだが、今日はグレンが風邪で伏せっているので朝刊を読む人がいなかったのだ。
ここまで読んで、学校へ行く時間になってしまった。
レヴィンは朝刊をたたむと、テーブルの上に置いて、家の扉を勢いよく開けた。
今日もいい天気である。
今日も今日とて、レヴィンは、学校へ向かったのであった。
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