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第二章 ナミディアの領主
2-24 南斗旅団
しおりを挟むここはハーヴェスト連峰の裾野に広がる森の中。
アジトに戻った『南斗旅団』の団長、マクシミリアンは荒れていた。
「たかだか八人に何たる無様だッ!」
他の野盗の襲撃を偵察していた者からの情報で、敵に強い魔導士がいる事は解っていた。特に広範囲魔法を使っていたのは、黒魔導士である、黒髪の少年ただ一人である事を確認していたのだ。そこで、高レベルの黒魔導士である、ハヴェルを彼にぶつけたのである。
しかし、魔法を反射したまでは良かったが、素早く間合いを詰めた少年にハヴェルは一撃で叩き斬られてしまった。
「おいッ! レヴィンと言ったか? ヤツは黒魔導士だったんじゃねぇのかよッ!」
マクシミリアンは偵察に出て鑑定を行った、ゾルタンに怒声を浴びせる。
「確かにヤツは黒魔導士でした! 誓って間違いないでさぁ!」
「ならなんで剣を装備して、更には騎士剣技まで使ってくるというんだッ!?」
「そ、それは……」
ゾルタンは言葉に詰まる。
彼も理解できないでいるのだ。
マクシミリアンからの重圧で汗をだらだら垂らしている。
「直前で騎士に職業変更していたんじゃないか? それしか考えられん……」
幹部のカシュパルはそれしかないとマクシミリアンに告げる。
「それじゃあ何か? あいつらはわざわざ転職士まで連れて来ていたってことか?」
その言葉にカシュパルも黙ってしまう。
ただでさえ数の少ない転職士をわざわざ護衛任務に連れてくるとは思えない。
「し、しかし、護衛の中に転職士の能力を持った者なんていませんでしたぜ?」
「荷馬車に乗っていたヤツ等の誰かがそうだったのかも知れん」
丘の上で指揮を取っていた幹部で狩人のイェスタは言う。
鑑定士のゾルタンは、現場でも鑑定の能力を発動していた。
彼は丘の上から戦況を見ていたのだ。
彼の見立てではレヴィンと言う少年は間違いなく黒魔導士であったはずだ。
ただ、これを言うとマクシミリアンの勘気に触れかねないため黙っていた。
「やられた人数は把握できたか?」
「へぇ。団員128人中、約40人が戦死。怪我が26人、帰ってこない者が40人ほどです。あとはここで待機していた10人です」
「幹部でやられたのはハヴェルだけか?」
狂戦士のブラッドリーがゾルタンに尋ねる。
「ハヴェル様だけです。」
『南斗旅団』は団長のマクシミリアンと5人の幹部、鑑定士1人、転職士1人、団員128人で構成されていた。
この周辺では最大規模の盗賊集団だ。
「残存兵力は俺達を含めても43人か。あとは死んだか捕えられたかだな」
「怪我人は白魔導士に治させるとして、捕えられた仲間は取り返さねばならん。ヤツ等にどうやって落とし前をつけさせてくれようかッ!」
マクシミリアンが怒気をはらんだ声で復讐を誓う。
「他の野盗共の襲撃で捕えられたヤツは縛りあげて放置されていたと言う。うちの団員の処遇はどうするだろうな?」
イェスタは現状の戦力を分析していた。
「甘っちょろいヤツ等だ。殺しはしねえだろ」
「戦果は小麦が満載された荷馬車18台だが、およそ80人もの損害か……。痛いな……」
カシュパルがため息をつきながら、そうつぶやく。
「戦利品はもっと価格が高騰してから売り払う。ヤツ等は近くの村に寄るだろう。そこを夜襲して皆殺しにするぞッ!」
「では密偵を放とう。盗賊を3人ほど手配しろ。 ゾルタンも行って来いッ!」
「俺達は、作戦会議を行う」
そう言って幹部達は別室へ向かう。
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