【R18】さよなら、婚約者様

mokumoku

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「あっ、あっ…あ…」
「ハルヴァ殿…ハルヴァ殿!」
ディオスが腰を動かすたびに、ハルヴァは快感に目をチカチカさせた。ディオスはハルヴァの心地よさそうな様子に興奮すると、彼女の陰核を柔らかく押しつぶすように手を添える。

「んー…」
ハルヴァは中からの刺激と外から与えられる刺激にギューッとディオスを締め付ける。

「あ、ぐぐぐ…ハルヴァ殿」
ディオスは快感に腰を止めて眉を寄せた。

「あ、ごめんなさい…私…そこは触られる気持ちいい…」
「ハルヴァ殿…!た、たくさん触ってやろう!ここか?ここ?」
ディオスが指を動かすと愛液がかき混ぜられてクチャクチャと音が立つ。

「あー!そ、そこ…気持ちいい…ディオス様ぁ…!」
「ハルヴァ殿…ああ…俺も…も、もう1回してもいい?ハルヴァ殿…愛してる」ディオスはグチャグチャと音を立てて腰を振るとハルヴァの中に吐精した。

「私も…ディオス様」
ハルヴァがそう言ってディオスに抱き着いたので彼はヘラヘラ幸せそうに笑うとハルヴァを強く抱き締めた。






キミアナは看護長にジョンの病室の前まで案内をさせると肩に掛けた保冷機能のある鞄のマークを見せた。

「…私は国の医療機関と関わりがあるんですよ、今日なぜここに来たかわかりますか?」
キミアナは看護長をじっ…と見つめた。

彼女の美しく大きな瞳に看護長は思わず目を逸らす。

「良い施設には良い勤め人が必要だ、…よろしくお願いしますね。………ああ、ここで働いているハルヴァ・バルディガルは私の部下の嫁さんなんですよ、今度どんな職場か聞いてみようかな?」

キミアナは爽やかな笑顔を見せて「それでは失礼します、案内…ありがとうございます」とジョンの病室に入って行った。



「きみあな、どうした、きゅうに」



「大佐、長い…長い時間がかかりましたが」キミアナはそう言うと鞄を開けて大量の氷に埋まったケースを取り出した。
「失礼いたします」
中には薄い…皮のような物が水にプカプカと浮いている。


キミアナはジョンの包帯に巻かれた腕を持つと勢い良くそれを外した。

「ぐ…」
「すみません大佐…」

キミアナは泣きながら皮が大きく捲れた部分にケースの中身を貼り付けるとそれはまるで本物の皮膚のようにジョンの肉を覆った。

「これは、」
「大佐…私があの時、不用意に動いたばかりに…う、こ、このようなことに」キミアナは泣きながら地面に座り込むと額をつけた。

「おまえはわるくない」
「おまえはゆうかんだった」

「……う……大佐、これであなた様は元通りの生活を」
「……おまえは…」「どうする?」「さいもんに」「ほんとうのことを」「いってやってくれ」「ほんとうは」


「私は…幸せになど、なってはいけないのです……大佐……あ、あなたの……あなたのことも、サイモンのことも傷つけてしまいました」

いつも凛としたキミアナはそう言って泣き崩れると部屋には沈黙が広がった。





キミアナは入隊当初からかなり優秀で期待されていた兵士だった。だから本人も驕りがあったのだ。
恋人もいて、私生活も順風満帆だった。
だからなぜか思っていたのだ。

「自分は死ぬはずがない」と

キミアナは戦闘中も積極的に前へ出た。
周りが兵士から吹き出る血に怯えるのを横目に(なんて情けない、避ければいいだけだ)そう思いながら。

数回目の戦闘の時、キミアナはやらかしてしまった。
少し身を引くタイミングを間違えた。

血の兵士を剣で突いて素早く避ければ被害はないはずだった。


(血を浴びてしまう)



キミアナがそう死を覚悟した時、アルコール中毒で下等兵まで落ちてきた兵士、キミアナの恋人の父親ジョンがキミアナの前に立った。

キミアナはジョンに突き飛ばされて地面に投げ出された。
直ぐ様顔を上げるとそこには全身を魔女の血に塗れさせ溶け始めている男がキミアナを振り返り安堵の表情を見せていた。

キミアナはジョンを担ぎ上げると川まで走ろうとした。
早く血を洗い流さなければ、と思ったのだ。

しかし、キミアナは女性だ。
いくら優秀だとしても男一人を抱えて走る程の筋力と体力はなかった。

ディオスが側に駆けてきて「キミアナ様!」と目を丸くしている。


「く…ディオス助けてくれ!大佐はまだ死んでない!川まで運びたいんだ!」
キミアナもディオスも自分たちの手が溶けていくのを気にしている場合ではなかった。
みんな、溶けて死ぬ。

しかし何もせずにはいられなかった。
放っておけない…ただそんな気分でディオスはジョンを背負って川まで走った。
所々にいる血の兵士をかわしながらディオスは走った。
(一体なにがあったんだ!)



ディオスとキミアナは衛生兵にジョンを引き渡して自分たちも治療を受けた。
「キミアナ様、一体…どうしたんですか?」
ディオスはヒリヒリと痛む手にフーフーと息を吹きかけると薬湯に突っ込んだ。


「……私のせいだ」
ディオスは恐ろしい顔をしたキミアナにそれ以上は何も聞けなくなった。


それからキミアナはサイモンを裏切り次々男と寝るようになった。そうしてしばらくするとキミアナはみるみる階級を上げ、代わりに彼女のあだ名は「アバズレ」になった。

魔女は人間が揉めるのが大好きだ。

そのスパイスになるアバズレのキミアナは直ぐ様魔女に気に入られた。

ディオスはキミアナが果たしてそんな女性だったのか?と疑問に感じたが、どうすることもできなかった。
キミアナがいなくなってしばらくすると全身を布で覆うルールができた。





「自己満足にすぎなかったのではないか、と何度も自問自答しました……」
キミアナは言葉を詰まらせて床についた手をギュッと握りしめた。
ジョンが負傷し、責任を感じたキミアナはまず、同じ部隊にいた研究予備隊員と寝た。
とても優秀な男だった。
実務部隊を経験したら、研究チームに配属されることが決まっていた。
彼にずっと誘われていたのもあったが、その後医療研究チームに配属されると聞いていたので、うまいこと取り入ればキミアナの望みを上に伝えてくれるのでは?と思ったからだ。

その後はあたり構わず男と寝た。

魔女に気に入られれば…上に上がることができる。

自分の言葉に権力がつく。

ただの小娘の戯言ではなくなる。


キミアナはジョンがこんな状態になっても生きていなければならなくなったのは自分がディオスにジョンを川で血を流すように命令したからだ、とも思っていた。
あのまま、絶命していた方が…
いや、そもそも自分があの時、ミスをしなければ…

押し黙るキミアナに向かいジョンはゆっくりと口を開き、言葉を紡ぐ。

「きみあな」

「おまえは」

「いのちのおんじんだ」

「おれはいま」

「しあわせだ」

「いきていて」

「よかった」

ジョンはそう言うと顔を歪めて自分の腕を眺めた。

「これでちの」

「せんそうが」

「おわる」

「なあ」

「きみあな」

ジョンは例え血の戦争が再開しても、キミアナが持ってきた人工皮膚で布の代わりに全身を覆えば皆、溶けることはなくなる。

ジョンはそう思いを馳せ、もう一度ぎこちなく笑った。


キミアナもそれを顔を歪ませて見ていた。
彼女の涙は窓から入る光が反射してそれはキレイにキラキラと輝いた。
まるで彼女のようだ。
キラキラ光る涙はキミアナ、君の心のようだ。
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