40 / 47
40
しおりを挟む
「シュンスケー!どっか行こうよ!週末とかさー!」
「週末は予定があるんだ」
シュンスケはそう言うと炬燵の下でイトの手をギュッと握った。
イトは(私とお出かけしてくれるってことかな?)と嬉しくなったので手を握り返す。
「え?誰と?まさかイトさんとじゃないよね?ははは…」
シュンスケは口角を上げるとその質問には答えなかった。
イトは顔が赤くなっている気がしたので俯く。
「はー?なに?そのリアクション!ねーイトさんなんか予想ないの?」
「い、いいえ……検討もつきません」
「……好いた女と行く」
シュンスケは顔を真っ赤にするとそうポツリと言う。サツキが眉を寄せて心底嫌なことを聞いたような顔をした。
「はあ?シュンスケそんな人いるの!?はぁ!?イトさん!いいの?」
「あー……はい……」
「出会いは土蔵の前で彼女が困っていたのを助けたのがきっかけで……」
イトはそれを聞いて顔が赤くなっていく気がしたので慌てて更に下を向く。シュンスケがキュッとイトの手を握りしめ、さり気なく膝を寄せてきた。
イトはなぜだか子宮がシュンスケを求め始めてきてしまい、混乱した。(今すぐ抱きつきたいけど……サツキさんがいるし……)
「は!?話さなくていいよ!何勝手に馴れ初め話してんの!?聞きたくないけど!」
「その時に運命を……」
「はー!?もう話すなっつーの!」
イトは後ほど思った。
これがいけなかったのかもしれない、と。
その日の夜から……義母の監視がキツくなったのだ。
イトがいつものように寝たふりをしているとシュンスケが寝床にやってきた。二人ともこれから始まる交わりにウッキウキかつノリノリでシュンスケがイトの布団に潜り込もうとしたその時……バンッと力強く襖が開いた。
「シュンスケ?それはあなたの布団じゃないでしょ?」
「あ……ああ……暗くて……」
「イトさんが起きてしまうでしょ?間違えちゃ……かわいそうじゃない」
義母は薄っすらと微笑むとそう言って襖を閉めた。
ぴったり閉じず、隙間を空けて……
シュンスケが閉じようと立ち上がり手を伸ばすと義母がニョキッと顔を突き出してきた。
「閉めない方がいいわ。風が通るから」
シュンスケは諦めた。
イトと交わっているのがバレたら自分が知らない間にイトがどんな目に合うかわからない。
自分はどうしたって仕事には行かなければならないのだ。
イトも期待に興奮した身体を懸命に治めつつ……眠れない夜を過ごした。
(ああ……シュンスケさんのを身体の中に欲しい……)
二人はそっと布団の中で手を握り合った。
そして思ったのだ。
(朝すればいいのでは?)
と(そんなに時間もかからないし)と
「おはよう、イトさん」
「お、おはようございます……すみません寝坊を?」イトが目覚めると同時位に襖からニョキッと顔を出した義母から挨拶をされた。
「いいえ~今日たまたま私が早く目が覚めたものだからね?迎えに来たのよぉ」
「あ、そうでしたか」
「……私ね、男性と言えど……初めての相手は好いた女性がいい、そう思うの。親として、息子の幸せを願いたいのよ。わかる?イトさん」
「……?はい」
シュンスケとイトの心は一つになった……(このヤロウ……)
こうして毎日毎日……二人で会うのを邪魔されたイトとシュンスケは心の中が性でみっちみちになった。
(ハァ……は、早くイトと交わらなければ……)
(シュンスケさんと一生このまま交わらなければ……)
((死んでしまう……!))
「父さん、母さん?週末みんなで街に行きませんか?」シュンスケは夕食時……目をバッキバキにさせてそう提案した。
「あらあらシュンスケ?いいの?好いた女性は?」
「ははは、それはサツキに言った冗談ですよ。元々家族と行く予定でしてね。大衆演芸を観に行きましょう」
義母はご機嫌そうに笑っている。
シュンスケは目をバッキバキにさせて爽やかに笑った。
イトは信じていた。
シュンスケの性欲を。
(きっと週末……何かある!)
穏やかな日々が続いた。
義母は相変わらずイトを起こしに来るが、週末を楽しみにイトは頑張った。明日はいよいよ週末……そんな時、シュンスケが玄関に佇んでいた。
イトはそれをチラリと横目で確認して……(シュンスケさん……何をしているんだろう)と胸を疼かせた。
「イトさん!なにトロトロ歩いてるの?さっさと来なさい」
「はい、お義母さん!」
当日、イトはとても朗らかだった。
いつもは腹が立つこの義母の態度も……これから起こるであろうシュンスケとの営みを考えればご機嫌になれるのだ!
(ふふふ、今日はちゃんと速度を上げてあげよう!でも……なんだか歩きづらいなぁ……)
イトは片足を引きずるように歩いた。
「いい?イトさん!ボーッとしない!わかった?」
「はい、わかりました」
イトは駅で義母に腕を引かれてシャキシャキ歩くことを強要された。以前駅でぼんやりしていてはぐれた前科があるからだ。
義母はプンプン怒りながらもシュンスケからイトの切符を受取り差し出してくる。
「ほら、これを出す!」
「はい」
「母さん、もっと優しく」
「あ、大丈夫です」
シュンスケは助け舟を出してくれたが、イトはそれをそっと遠慮した。義母がお世話を焼いてくれているのでイトはそれに身を委ねた。
(これはこれで楽かも……)
イトは義母に引っ張られながら汽車に乗り込み、義母に引っ張られながら席に座った。二人ずつ向かい合う席の義母の向かいがシュンスケで、イトの向かいが義父だ。
チラリとシュンスケを見ると禍々しい眼差しで義父を見ていたのでイトは思わず吹き出した。
「週末は予定があるんだ」
シュンスケはそう言うと炬燵の下でイトの手をギュッと握った。
イトは(私とお出かけしてくれるってことかな?)と嬉しくなったので手を握り返す。
「え?誰と?まさかイトさんとじゃないよね?ははは…」
シュンスケは口角を上げるとその質問には答えなかった。
イトは顔が赤くなっている気がしたので俯く。
「はー?なに?そのリアクション!ねーイトさんなんか予想ないの?」
「い、いいえ……検討もつきません」
「……好いた女と行く」
シュンスケは顔を真っ赤にするとそうポツリと言う。サツキが眉を寄せて心底嫌なことを聞いたような顔をした。
「はあ?シュンスケそんな人いるの!?はぁ!?イトさん!いいの?」
「あー……はい……」
「出会いは土蔵の前で彼女が困っていたのを助けたのがきっかけで……」
イトはそれを聞いて顔が赤くなっていく気がしたので慌てて更に下を向く。シュンスケがキュッとイトの手を握りしめ、さり気なく膝を寄せてきた。
イトはなぜだか子宮がシュンスケを求め始めてきてしまい、混乱した。(今すぐ抱きつきたいけど……サツキさんがいるし……)
「は!?話さなくていいよ!何勝手に馴れ初め話してんの!?聞きたくないけど!」
「その時に運命を……」
「はー!?もう話すなっつーの!」
イトは後ほど思った。
これがいけなかったのかもしれない、と。
その日の夜から……義母の監視がキツくなったのだ。
イトがいつものように寝たふりをしているとシュンスケが寝床にやってきた。二人ともこれから始まる交わりにウッキウキかつノリノリでシュンスケがイトの布団に潜り込もうとしたその時……バンッと力強く襖が開いた。
「シュンスケ?それはあなたの布団じゃないでしょ?」
「あ……ああ……暗くて……」
「イトさんが起きてしまうでしょ?間違えちゃ……かわいそうじゃない」
義母は薄っすらと微笑むとそう言って襖を閉めた。
ぴったり閉じず、隙間を空けて……
シュンスケが閉じようと立ち上がり手を伸ばすと義母がニョキッと顔を突き出してきた。
「閉めない方がいいわ。風が通るから」
シュンスケは諦めた。
イトと交わっているのがバレたら自分が知らない間にイトがどんな目に合うかわからない。
自分はどうしたって仕事には行かなければならないのだ。
イトも期待に興奮した身体を懸命に治めつつ……眠れない夜を過ごした。
(ああ……シュンスケさんのを身体の中に欲しい……)
二人はそっと布団の中で手を握り合った。
そして思ったのだ。
(朝すればいいのでは?)
と(そんなに時間もかからないし)と
「おはよう、イトさん」
「お、おはようございます……すみません寝坊を?」イトが目覚めると同時位に襖からニョキッと顔を出した義母から挨拶をされた。
「いいえ~今日たまたま私が早く目が覚めたものだからね?迎えに来たのよぉ」
「あ、そうでしたか」
「……私ね、男性と言えど……初めての相手は好いた女性がいい、そう思うの。親として、息子の幸せを願いたいのよ。わかる?イトさん」
「……?はい」
シュンスケとイトの心は一つになった……(このヤロウ……)
こうして毎日毎日……二人で会うのを邪魔されたイトとシュンスケは心の中が性でみっちみちになった。
(ハァ……は、早くイトと交わらなければ……)
(シュンスケさんと一生このまま交わらなければ……)
((死んでしまう……!))
「父さん、母さん?週末みんなで街に行きませんか?」シュンスケは夕食時……目をバッキバキにさせてそう提案した。
「あらあらシュンスケ?いいの?好いた女性は?」
「ははは、それはサツキに言った冗談ですよ。元々家族と行く予定でしてね。大衆演芸を観に行きましょう」
義母はご機嫌そうに笑っている。
シュンスケは目をバッキバキにさせて爽やかに笑った。
イトは信じていた。
シュンスケの性欲を。
(きっと週末……何かある!)
穏やかな日々が続いた。
義母は相変わらずイトを起こしに来るが、週末を楽しみにイトは頑張った。明日はいよいよ週末……そんな時、シュンスケが玄関に佇んでいた。
イトはそれをチラリと横目で確認して……(シュンスケさん……何をしているんだろう)と胸を疼かせた。
「イトさん!なにトロトロ歩いてるの?さっさと来なさい」
「はい、お義母さん!」
当日、イトはとても朗らかだった。
いつもは腹が立つこの義母の態度も……これから起こるであろうシュンスケとの営みを考えればご機嫌になれるのだ!
(ふふふ、今日はちゃんと速度を上げてあげよう!でも……なんだか歩きづらいなぁ……)
イトは片足を引きずるように歩いた。
「いい?イトさん!ボーッとしない!わかった?」
「はい、わかりました」
イトは駅で義母に腕を引かれてシャキシャキ歩くことを強要された。以前駅でぼんやりしていてはぐれた前科があるからだ。
義母はプンプン怒りながらもシュンスケからイトの切符を受取り差し出してくる。
「ほら、これを出す!」
「はい」
「母さん、もっと優しく」
「あ、大丈夫です」
シュンスケは助け舟を出してくれたが、イトはそれをそっと遠慮した。義母がお世話を焼いてくれているのでイトはそれに身を委ねた。
(これはこれで楽かも……)
イトは義母に引っ張られながら汽車に乗り込み、義母に引っ張られながら席に座った。二人ずつ向かい合う席の義母の向かいがシュンスケで、イトの向かいが義父だ。
チラリとシュンスケを見ると禍々しい眼差しで義父を見ていたのでイトは思わず吹き出した。
644
お気に入りに追加
1,211
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる