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「イトー、これを読んでみろ?」
「け、ぇ、き……ケーキ?」
「天才、天才だなぁイトはー!ほら、キスをするか?んー」
「シュンスケさん馬鹿になった!」
二人は朝、誰もいない居間で手を握り合うとイチャイチャイチャイチャと新聞を読んでいた。
「イト……ほら、ちょっとこっちに顔を向けてみろ?」
「なに?なにかついてます?」
シュンスケは顔を素直に向けたイトにキスをするとイトがケラケラ笑った。「うわー!もー!あははは!」シュンスケはそれがとても可愛かったので目尻をパワー全開に下げながら「イト……イトもう一回こっちに顔を向けてみろ?な?」とイトにしつこくせまった。
「キャー!やだ!ふふふ!」
「イト、そう言わずに……」
「ふひひひ!ひはをひれるな(舌を入れるな)」
落ち着きを取り戻したシュンスケがチラシの束を手に「なあ?イト、旅行にな、また行かないか?一泊だが……」イトを旅行に誘う。
「行く行く。行きます」イトはシュンスケの手元に顔を寄せると嬉しそうに彼を見上げた。シュンスケはこの旅で思いっきりイトに欲望をぶつけてドロドロに甘やかすと決めていた……(ふふふ……日の高いうちはたくさん与えて喜ばせ夜はたくさんイトを悦ばせてやるとしよう……)
「海行くか?イト、海」
「うみ!寒くても楽しい?石投げていい?」イトは目をキラキラさせるとシュンスケを見上げた。
「寒いと楽しさは半減だぞーイトー!石はあまりないかもしれないなー!」
「でも行きたい!」
「そうかそうかー!じゃあ海に行こうなー!ほら、キスしてやるからこちらを向け、イト、んー」
「シュンスケさん馬鹿になった!」
イトが少し名残惜しそうにシュンスケと離れて台所に行くと少しして義母がやって来た。「おはようございますお義母さん」
「…………」
「あれ?お義母さん耳遠くなったのかな……?」
「……うぐぐぐ……聞こえてます!お、は、よ、う」イトは小声で言ったセリフが義母に届いていたようで安心した。
イトは炊きあがった米を混ぜるとおひつに移す。
魚を焼き台に入れて豆腐をそっと手に乗せて切った。
(まだ経験が浅いから怖い……)イトはぷるぷる震えながら賽の目に豆腐を切ると味噌汁に投入する。
(だいぶ上手にできるようになってきた!)イトは額の汗を割烹着の袖で拭うと小松菜を人差し指の第二関節の長さに慎重に切った。
「シュンスケにお茶を出してくるわ」
「はい」イトは義母の背中を見送ると焼き上がったシュンスケの分の魚の骨をそっと取る。
「えへへ」
イトが食事のためにシュンスケの隣に座ると炬燵の中でそっとシュンスケが手を握った。(ふふふ……)イトは素知らぬ顔をしながらそれに指を絡ませる。
シュンスケがイトの手のひらを擽るので見上げるとシュンスケが前をみながら口をパクパクさせているので、手のひらに指でなぞっているのは文字なのかも?イトは集中してみた。
「う」「ま」「い」
(うまい?私の作ったごはんを褒めてくれてるのかな?)
イトもシュンスケの手のひらに
「う」「れ」「し」「い」
と書いて味噌汁を啜った。
(「れ」が上手く書けなかったかも……)イトはそう思いながらシュンスケを見上げると彼はヘラヘラ笑いながら頭をゴシゴシとかいている。
イトはそれを横目に見ながら(伝わったっぽい)と頬を赤くした。
一見無言の食卓だったが、二人にはとても幸せな朝食だった。
「おかえりなさいませ、サツキさんこんにちは」
「イトさんこんにちはー!」シュンスケは例に漏れずサツキを連れてやって来た。
しかし今日いつもと違うのは男性がもう一人いたことだ。
「……あ、イト……街から研修に来てるサカイさんだ」
「サカイです。はじめまして」
サカイは被っていた帽子を取るとペコリと頭を下げた。
「はじめまして、妻のイトと申します」
「今ナキコが来ているそうで……」
「……はい、工事の手伝いに……」
イトがそう答えるとシュンスケに今日はサカイさんに食事を持って行かせてあげて欲しい、と言われたのでイトは渋々承諾した。
「私もナキコの皆さんと同じ物をいただきたいので」他に食事を用意するか、と聞いたイトにサカイはそう言うとお盆を持って部屋から出て行った。
台所でシュンスケは自分の食事からイト用に取り分けると「一緒に食べよう」とお盆を持つ。
イトはお茶を持ってその後ろに付いていくとサツキが眉を軽く顰めたように感じて(サツキさんは本当にシュンスケが好きなのかもしれない……)とぼんやり思った。
しかし、二人は血が繋がっている。
それは無理なのだ。
イトは初めてサツキを気の毒に思った。
(許されないわ)
戸籍上は他人だから可能だろう……しかし、倫理上無理だ。
イトはシュンスケの隣に座る。イトの向かいにはサツキだ。
シュンスケは炬燵の中でイトの手をギュッと握る。
イトもそれに指を絡ませた。
口を聞かなくても側にいられるからイトはこれが好きだ。
「あ、もー!シュンスケ手で太ももを触らないでよね!」
「さ、触ってない」サツキがそう言うのをシュンスケは否定している。
イトはシュンスケが左手でイトの手を握って右手では湯呑みを持っているのでそれが不可能であることを知っていた。
(もしかすると今までも嘘だったのかもしれない……)
イトはそのことに気付いてしまい、サツキが気の毒でたまらなくなった。
それと同時にサツキは、シュンスケとイトの仲を裂こうとしていたのだな……と腹立たしくもあった。しかし……
シュンスケの気持ちを知った今、やはり気の毒な気持ちの方が勝る。
それに、シュンスケは炬燵の中であぐらをかいているのか膝がイトの太ももに当たっている。それすなわち足でもサツキに触れることができない証拠だ。
イトは(この人がそんな汚いことをするわけがない)と嬉しくなってシュンスケを見上げた。
それに気付いたシュンスケもイトを見て口角を上げる。
二人は幸せだった。
「け、ぇ、き……ケーキ?」
「天才、天才だなぁイトはー!ほら、キスをするか?んー」
「シュンスケさん馬鹿になった!」
二人は朝、誰もいない居間で手を握り合うとイチャイチャイチャイチャと新聞を読んでいた。
「イト……ほら、ちょっとこっちに顔を向けてみろ?」
「なに?なにかついてます?」
シュンスケは顔を素直に向けたイトにキスをするとイトがケラケラ笑った。「うわー!もー!あははは!」シュンスケはそれがとても可愛かったので目尻をパワー全開に下げながら「イト……イトもう一回こっちに顔を向けてみろ?な?」とイトにしつこくせまった。
「キャー!やだ!ふふふ!」
「イト、そう言わずに……」
「ふひひひ!ひはをひれるな(舌を入れるな)」
落ち着きを取り戻したシュンスケがチラシの束を手に「なあ?イト、旅行にな、また行かないか?一泊だが……」イトを旅行に誘う。
「行く行く。行きます」イトはシュンスケの手元に顔を寄せると嬉しそうに彼を見上げた。シュンスケはこの旅で思いっきりイトに欲望をぶつけてドロドロに甘やかすと決めていた……(ふふふ……日の高いうちはたくさん与えて喜ばせ夜はたくさんイトを悦ばせてやるとしよう……)
「海行くか?イト、海」
「うみ!寒くても楽しい?石投げていい?」イトは目をキラキラさせるとシュンスケを見上げた。
「寒いと楽しさは半減だぞーイトー!石はあまりないかもしれないなー!」
「でも行きたい!」
「そうかそうかー!じゃあ海に行こうなー!ほら、キスしてやるからこちらを向け、イト、んー」
「シュンスケさん馬鹿になった!」
イトが少し名残惜しそうにシュンスケと離れて台所に行くと少しして義母がやって来た。「おはようございますお義母さん」
「…………」
「あれ?お義母さん耳遠くなったのかな……?」
「……うぐぐぐ……聞こえてます!お、は、よ、う」イトは小声で言ったセリフが義母に届いていたようで安心した。
イトは炊きあがった米を混ぜるとおひつに移す。
魚を焼き台に入れて豆腐をそっと手に乗せて切った。
(まだ経験が浅いから怖い……)イトはぷるぷる震えながら賽の目に豆腐を切ると味噌汁に投入する。
(だいぶ上手にできるようになってきた!)イトは額の汗を割烹着の袖で拭うと小松菜を人差し指の第二関節の長さに慎重に切った。
「シュンスケにお茶を出してくるわ」
「はい」イトは義母の背中を見送ると焼き上がったシュンスケの分の魚の骨をそっと取る。
「えへへ」
イトが食事のためにシュンスケの隣に座ると炬燵の中でそっとシュンスケが手を握った。(ふふふ……)イトは素知らぬ顔をしながらそれに指を絡ませる。
シュンスケがイトの手のひらを擽るので見上げるとシュンスケが前をみながら口をパクパクさせているので、手のひらに指でなぞっているのは文字なのかも?イトは集中してみた。
「う」「ま」「い」
(うまい?私の作ったごはんを褒めてくれてるのかな?)
イトもシュンスケの手のひらに
「う」「れ」「し」「い」
と書いて味噌汁を啜った。
(「れ」が上手く書けなかったかも……)イトはそう思いながらシュンスケを見上げると彼はヘラヘラ笑いながら頭をゴシゴシとかいている。
イトはそれを横目に見ながら(伝わったっぽい)と頬を赤くした。
一見無言の食卓だったが、二人にはとても幸せな朝食だった。
「おかえりなさいませ、サツキさんこんにちは」
「イトさんこんにちはー!」シュンスケは例に漏れずサツキを連れてやって来た。
しかし今日いつもと違うのは男性がもう一人いたことだ。
「……あ、イト……街から研修に来てるサカイさんだ」
「サカイです。はじめまして」
サカイは被っていた帽子を取るとペコリと頭を下げた。
「はじめまして、妻のイトと申します」
「今ナキコが来ているそうで……」
「……はい、工事の手伝いに……」
イトがそう答えるとシュンスケに今日はサカイさんに食事を持って行かせてあげて欲しい、と言われたのでイトは渋々承諾した。
「私もナキコの皆さんと同じ物をいただきたいので」他に食事を用意するか、と聞いたイトにサカイはそう言うとお盆を持って部屋から出て行った。
台所でシュンスケは自分の食事からイト用に取り分けると「一緒に食べよう」とお盆を持つ。
イトはお茶を持ってその後ろに付いていくとサツキが眉を軽く顰めたように感じて(サツキさんは本当にシュンスケが好きなのかもしれない……)とぼんやり思った。
しかし、二人は血が繋がっている。
それは無理なのだ。
イトは初めてサツキを気の毒に思った。
(許されないわ)
戸籍上は他人だから可能だろう……しかし、倫理上無理だ。
イトはシュンスケの隣に座る。イトの向かいにはサツキだ。
シュンスケは炬燵の中でイトの手をギュッと握る。
イトもそれに指を絡ませた。
口を聞かなくても側にいられるからイトはこれが好きだ。
「あ、もー!シュンスケ手で太ももを触らないでよね!」
「さ、触ってない」サツキがそう言うのをシュンスケは否定している。
イトはシュンスケが左手でイトの手を握って右手では湯呑みを持っているのでそれが不可能であることを知っていた。
(もしかすると今までも嘘だったのかもしれない……)
イトはそのことに気付いてしまい、サツキが気の毒でたまらなくなった。
それと同時にサツキは、シュンスケとイトの仲を裂こうとしていたのだな……と腹立たしくもあった。しかし……
シュンスケの気持ちを知った今、やはり気の毒な気持ちの方が勝る。
それに、シュンスケは炬燵の中であぐらをかいているのか膝がイトの太ももに当たっている。それすなわち足でもサツキに触れることができない証拠だ。
イトは(この人がそんな汚いことをするわけがない)と嬉しくなってシュンスケを見上げた。
それに気付いたシュンスケもイトを見て口角を上げる。
二人は幸せだった。
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