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イトは非常に満たされていた。
ニコニコしながらシュンスケとサツキを送り出すと洗濯物を持って庭に出た。
ここの家には洗濯機というものがあるのだけれど……イトには使い方がわからない。義母に尋ねても「自分で考えなさい」と言われるのだ。
だからイトの洗濯は専ら洗濯板で洗われる。
最近は水が冷たくて手が痛かったけれど……今はそれも気にならない程イトは満たされてニッコニコだった。

(久しぶりにトメちゃんと話した……楽しかったなぁ……うちも畑ができないかな?もし畑ができたら毎日ナキコに会える)

洗濯物干しに芋虫がニョコニョコと這っている。
イトはそれをニコニコしながら指で摘むと取り込んだ義母への洗濯物に忍ばせた。


「ギャー!」

遠くから般若の悲鳴がする……

「ヒヒヒヒヒ……」
本当に今日は調子が良い。
イトは遠くから呼んでいる義母のためにゆっっっくりとそちらに向かった。


「お義母さんは虫が苦手なんですねー」
「はーぁ……イトさんが野蛮で助かったわぁ……ありがとうイトさん」
「え?なんですか?」イトは救出したイモムシを掴みながら義母ににじり寄った。
「ギャー!イトさん!イトさん!イトさん!」
「え?聞こえなくて……」
「あー!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさーい!!」
「じゃあ洗濯機の使い方と引き換えに」
「わかった!わかった!わかったから!」






「イト……今日はごめんな……泣かせるつもりはなかったんだ」
「あっ……あっ……」
イトは股間に顔を埋められて背中を反らせた。
シュンスケは包皮から飛び出したイトの陰核を口に含むと唇で優しく揺らした。
「しー……静かにな……イト」
「んー……」
シュンスケの唇で擦り合わされた陰核は益々硬くなり、愛液がドンドン溢れ出した。シュンスケは陰部に舌を這わせるとそれは唾液と混じり合いイトの陰核を包みこんで、ただ舌で軽く舐めただけなのにイトは悶える程の快感に気をやった。

「イト……俺のものだ。君は……イト……」
シュンスケはそう呟くとイトの中に指をゆっくり差し込んだ。
「イト……中でも気持ち良くなれるようにしてやるからな……」シュンスケはそう言うと指を入れたまま陰核をペロペロと小刻みに舐めた。

イトが気が遠くなりそうな快感に口を抑えたのを見てシュンスケは「ハァ……イト……中がトロトロだ……この中に入ったら……気持ちいいだろうな」と苦しそうに言った。



「うえー……」

「大丈夫か」

毎朝恒例のえずきに言葉を返されてイトはそちらを二度見した。
(シュンスケが!起きている!)

「すみません。えずいてしまって……起こしてしまいました?」
「いや、早起きしようかと思ったからいいんだ、体調が悪いのか」シュンスケは横向きに寝転がりながら肘をついて頭を支えた。
(涅槃仏のポーズね……)
イトは「いいえ、元気です。……今日はお早いのですか?」と尋ねながら髪に櫛を通すと布団にあぐらをかいたシュンスケは「いや、毎日早起きをしようかと思ってな。それに今日は日曜だよ。イト」と爽やかに笑った。



(え!?)



「何か……朝の準備でも手伝うよ」


(えーーー!?む、無理無理!)
「旦那様、あのあのあのとても寒いので私が先に居間を温めてまいりますからこちらで……」
「いやいや、そういうのを手伝う」
(ギャー!バカ!シュンスケ!般若が怒るんだっつーの!)
「私がお義母さんに叱られてしまいますから……」
「母さんはいつ頃起きてくるんだ?その時まで手伝おう」
(ギャー!意外とガンコ!)


「納屋に石炭を取りに行きます」
「朝方は冷えるな……」廊下を歩きながらシュンスケがぶるりと身を震わせて裾に手を入れ腕を組んだ。
「あ、はい。もう寒いですよね」イトは手をこすり合わせると笑う。「旦那様、手袋などお持ちではありませんか?手が冷えてしまいます……お持ちしましょうか?どこにありますか?」
「お前はないのか?」
「え?私は別にいらないので……」シュンスケの問いにイトはキョトンとしてしまった。
「……では持ってきてくれ。俺達の部屋の……箪笥の上から二段目にある。……毛糸の物がいいな……そうだな。色は白だったか……」
「わかりました」

イトは廊下にシュンスケを残し部屋に戻った。
その特自分がまだ寝間着なのに気付いたので、イトは慌てて服を着替え引き出しを開けた。
(箪笥の上から二段目……)
きれいに畳まれた手袋が数個箪笥に仕舞われていてイトはその中から言われた通り毛糸でできた物を選んだ。
(毛糸は温かいのよね。白の毛糸でできた物はこれ一つだけだし……間違えてないよね?)
イトはそれをそっと撫でる。イトの知っている毛糸よりもずっと滑らかだ。その時、硝子戸がガラガラと音を立てたような気がした。


イトが慌てて箪笥の引き出しを閉めようとしたけれど上手くいかない……しばらく手こずってから廊下に飛び出るとシュンスケがいなかった。
(何事!?シュンスケ迷子!?誘拐!?般若に怒られる!)

イトが慌てて玄関を飛び出そうとすると向こうから人影がやって来て石炭入れをぶら下げたシュンスケがやってきた。
(げー!シュンスケ!勝手な行動は慎め!心配しただろ……!)
「あー、旦那様!すみません。取りに行っていただいていたとは……寒くありませんでしたか?あの、手袋を……」
シュンスケはチラリとイトの手元を眺めると「おや……その手袋を持ってきたか。それはもういらんからイトが使え。小さいんだ」と言った。
「ええ……?」
「いらんか?では捨てようか」
シュンスケはイトの様子を見てそう言うと居間に入って行った。
「す…捨てる?いりますいります!ありがとうございます」
イトはこんな上等な物を捨てるなんて!手袋を見た。
真っ白くてスベスベした毛糸の手袋は確かにシュンスケの手には小さそうだ。

「はめてみろ」
廊下でぼんやりそれを眺めていると中からそう話しかけられて我に返りそっとそれをはめる。
それはイトにぴったりでとても温かかった。
「ありがとうございます」
イトは最近とても私生活がいい感じだった。

(こんな素敵なお下がり……はじめてもらった!)
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