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京都繚乱

京都繚乱⑬ 南紀伊攻防戦⑦

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悪魔将アークデーモンハサク率いる死人兵中心とした悪魔は着々と虎城山城に向けて進撃を開始する、その隊列に雑賀衆の鉄砲が襲い掛かる

バン!バン!
黒色火薬が破裂する乾いた音が木霊する。
死人兵の進軍速度は遅い、すぐさま雑賀衆は後方に交代をする、弓隊がそれに呼応して死人兵に一斉に弓を放つ、矢は放物線を描いて死人兵に降り注ぐ。
それでもほとんどの死人兵は倒れることは無い、通常の火縄や弓では彼らに傷をつけることはできても殺すことはできない。彼らの体の中に潜む虫を殺さない限り死人兵は死なない、稀に運よくその虫に命中した死人兵はその場に倒れるが、すぐさま後続の死人兵から虫がその骸に移植される・・・そして再び起き上がるのである

人間達の間では死人兵を殺せば焼けと言うのはこれを防ぐためなのだが、大軍での衝突ではそれを行っている時間は無い。

ズドーーーン!

竹中半兵衛が用意した大砲、外国より買い付けたカノン砲4門が火を噴いた
この時代最先端の大砲であるがまだ砲弾は爆裂しない、爆裂弾に比べれば威力は弱いが、さすがにこのレベルの方を喰らえば死人兵はおろか、 悪魔将アークデーモンでさえも無事ではいられない

そしてその攻撃は海からも起きる
海上に停泊した『鬼宿丸』からも砲が放たれる、しかもそのうちの一門はかなりの威力を持つ大砲であった。

ズドーーーン!ズドーーーン!

陸から海からカノン砲による攻撃がくり広がれる、だがそれでも死人兵達の進撃を止めるまでにはならない


「火の壁発動!」

そう竹中半兵衛が叫ぶと火矢が放たれる、地面に敷かれた干し草に燃え移り、油をしみこませた麻布が燃え始める
虎城山城の前面には膨大な日の壁が出来上がった、

流石に死人兵は火に弱い、しかし全身を止めない死人兵は後続に押され火の壁に侵入し燃え尽きる、なんと死人兵の骸により火は消されていく

「なんという・・・」

とうとう火の壁も突破され前線がぶつかり出した

まずぶつかったのは伊勢の残兵を連れた木造具政隊1500である

だが前進速度を緩めることはできても、死人兵の前進は止まらない、あっという間に木造具政隊は死人兵に囲まれる死人兵に紛れる下級悪魔レッサーデーモン中級悪魔デーモンたちにより木造具政隊はその数を減らしていく

「退却だ!」
木造具政が叫ぶがもはや退却する道にも死人兵がうごめいている、先ほどまで共に戦っていた者までもが死人兵に変わり仲間たちを襲っていく・・

木造具政は伊勢から兄、北畠具教と共にこの地に来た者である、死人兵の恐ろしさは十二分に理解していたが、いざ自分がその境地に陥るとその絶望感に憔悴する・・・

「兄者・・・」

その時具政めがけて一人の男が飛び出す

「具政!今助ける!」
大矛を薙ぎ払い目の前の下級悪魔レッサーデーモンをやっとの思いで葬った、木造具政はその声に反応する

「来るな兄者!皆を逃がせ!・・ぐあ」

木造具政の腹部を突き抜ける大槍が木造具政を空中に持ち上げる

「ぐはははは!なかなかの魂!うまいぞ!うまいぞ!」


「具政!」

「兄者・・・あに・」

木造具政の瞳から力が消えた・・・


目の前で弟が殺された北畠具教は刀を抜き我を忘れ突き進む

彼の通り道に死人兵の骸が横たわる、下級悪魔レッサーデーモン中級悪魔デーモンでさえも彼の前は刀の露となる、だが彼は深入りしすぎた、彼の周りには中級悪魔デーモンが取り囲み襲いかかる。

「くっ!」



「馬鹿者が!感情に左右されおって!」


中級悪魔デーモンたちが斬り伏せられる、彼の窮地に現れた男の名は上泉信綱、北畠具教の師匠でもある。

「先生!」


「ほぅ!・・・なかなかやるではないか人間!お前の魂も美味そうだな!俺の糧になるがよい、わが名はハサク!相手してやろう!」


「醜い豚鼻の悪魔か!猪八戒とでも言ってやろう!・・・おっと猪八戒に失礼であったな・・・お前はただの豚だ!」

「ブヒ~・・・何を言ってるか分からないが侮辱だという事は分かったぞ!・・・八つ裂きにしてやろう」

******************

「もっと近づけ!狙いを定めろ!」

九鬼嘉隆はここが勝負の要とにらみ危険を冒してでも岸に近づき、大砲の制度を上げていく、

「おおおお!何か海の上を走ってきます!」

「なんだと!」

九鬼嘉隆は目を丸くする、海上を走る鬼・・・そんなもの見た事が無い・・・


「がはははは!お前らはチョコチョコ煩せんだよ!俺様が直々に殺してやる」

護衛の阿宅船にその鬼が付いたと思ったら乗組員みなが刀を抜くもその鬼に傷一つつけることができない

「カルバリン砲を阿宅船に向けろ!」

「それでは乗員が!」

「馬鹿野郎!もう助からねえ!」

「了解しました!」

ズガーーン!

世界最新と言っていいカルバリン砲が至近距離からその鬼が乗った阿宅船に直撃する
砲弾を喰らった阿宅船は木端微塵になる

「ほぅ・・・人間の武器か・・・この世界でも人間の武器という物は驚愕するな・・」

海の上に立つ鬼の腕はちぎれていた

するとにょきにょきっと新しい腕が生えてくる


「な!こいつ不死身か?・・・大筒を用意しろ!」

「はははは!俺は不死身のナーガ!皆殺しにしてやろ・・・」


ズドーン!

「おい!貴様!最後までしゃべ・・・」

ズドーーン

「こら!人間!卑怯だぞ!」

ズゴーン!

「貴様!こう登場の仕方という!」

ズドーン

「・・・・」

4発の大筒がナーガを襲う!

ナーガの両腕はプランプランとぶら下がり、足にも大きな傷が出来ている

ナーガは腕もちぎり新たな腕を再生し始める、

「カルバリン準備完了!打ちます!」

「おう!打て!」

ナーガも学習している・・・あれを喰らうのはまずい・・・

ナーガは踵を返して陸に向かって走り出す

逃げ足は物凄く早かった


「悪魔にもいろいろいるな・・・」

「そうですね!しかし我々はあの上位種にも勝ちました!」

「そうだ!人間が負けるわけがない!」

「「「おおお!」」」



「おおおおおおおおかしら!」

「なんだ?新しい悪魔か?」

「あの高速船が近づいてきます!」

「なに?」


『鬼宿丸』の10倍近い大きさを誇るだろう高速船、屈強な漕ぎ手を集めた『鬼宿丸』よりも数倍早い速さ、旗には三鱗

「北条氏政!」


みると自慢のカルバリン砲の倍はありそうな砲台が地上に向いている



スキューーーン

爆発音ではなく空気を切り裂くような音が木霊したかと思えば地上に大きな爆発が起きた

ズガガガガガガーーーン
少し遅れて地上の爆裂音が鳴り響く


「なんていう威力だ!・・・カルバリンの数倍の威力がある砲が何門あるんだ?・・・相模はそこまで進んでいるのか?」


地上の様子を見届けるとその大きな船は再び動き出し去っていく


「なんなんだあいつらは・・・次元が違うぞ・・・」

九鬼嘉隆は唖然と過ぎ去っていく大きな黒い船を見送った。







***************
次回で南紀伊攻防戦は最後になります
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