6 / 27
二 斎藤一之章:Fire
白河口の戦い(一)
しおりを挟む
女のささやく声が聞こえる。
「斎藤さま。起きてくなんしょ、斎藤さま」
時尾だ。
オレはほんの少し、まぶたを開く。時尾の小さな手が、オレの袖に触れようか触れるまいかと迷っている。
手は結局、引っ込んでいった。時尾は再びオレを呼んだ。
「斎藤さま、軍議が始まっつまいます。そろそろ起きてくなんしょ」
オレは目を開けて顔を上げた。
どきりとした。膝をかがめた時尾が、ひどく近い。時尾も、自分から近付いたくせにオレと同じで、息を呑んで目を逸《そ》らした。
「寝ていたのか、オレは」
壁に背を預けて座り込んで、刀を抱いていた。首や背中がこわばっている。
「一時ほど寝ておられました。本当はもっと休んでもらいてぇけんじょ」
「これで十分だ」
「嘘です。十分なはずはねぇべし。今月の初めに会津を出てから今日この白河城に入るまで十五日も、斎藤さまはほとんど寝ておられねぇと、皆、口をそろえています」
「大《おお》袈《げ》裟《さ》だ。隙を見て、寝られるときに寝ている」
「だけんじょ、小《ちん》ちぇ物音ですぐ目ぇ覚ますくらい、眠りが浅ぇべし。体、壊れっつま」
時尾が眉を曇らせると、垂れた目尻が殊《こと》更《さら》に下がる。伏せがちのまつげの長さに見惚れそうになった。戦場に女がいると、気まずくてかなわない。
「さすけねえ。小言はいらん」
オレはそっぽを向いた。代わりに時尾が、オレにまっすぐな視線を向けた。
「斎藤さまの『さすけねえ』は信用できません。問題ばかり抱えて苦しくても、具合《あんべ》は何《な》如《じょ》だと訊いたら、さすけねぇとしか答えてくれねえ」
「オレのことより自分の心配をしろ。何をこそこそやっているのか知らないが、あんたもろくに寝てないだろう?」
格子の隙間から篝《かがり》火《び》の光が差し込んでくる。窓の向こうは外堀。城壁上に建つこの櫓《やぐら》には、槍の柄や古びた弓が埃をかぶっている。長らく倉庫として使われていたらしい。
今日、会津勢がここ白河城を占領した。オレたち新撰組、総勢百三十人は東南方面の守りを任されている。オレだけが櫓の中で眠りこけていた。局長代理のくせに、だらしない。
隊士のほとんどは江戸や流《ながれ》山《やま》での募兵に応じた者たちだ。訓練が行き届いているとは言えないが、戦意はある。副長を務める島《しま》田《だ》魁《かい》がうまく鼓舞してくれている。四十を超えた島田さんは力士のように大柄で、見るからに頼り甲斐がある。
京都で一緒にやってきた古い仲間のうち、今この白河にいるのは島田さんだけだ。土方さんは会津で怪我の治療をしている。沖田総司は江戸で寝付いたきりで、永《なが》倉《くら》新《しん》八《ぱち》や原《はら》田《だ》左《さ》之《の》助《すけ》とは別れ別れになった。そのほかは皆、死んでしまった。
時尾が、じっとオレを見ている。
「斎藤さま、おなか減ってねぇかし?」
見つめ返したら、どんな顔をするんだろう。そう思うが、思うだけだ。オレは刀をつかんで立ち上がる。
「減っている。食いそびれた」
「おむすびがあります。島田さまに預かっていただいているから、誰《だっちぇ》も手を付けてねぇはずです。軍議の前に召し上がってくなんしょ」
時尾が着物の上前を押さえる仕草をして立った。が、細身の野《の》袴《ばかま》だ。押さえるべき上前はなく、裾《すそ》の乱れようもない。時尾は空振りした手を見て、くすりと笑った。
まぶしいような気がして、オレは顔を背けた。
「先に櫓を出ろ」
狭い櫓から肩を並べて出ていくのを見られたら、どんな噂を立てられるかわからない。いや、オレが一人でいる櫓に時尾が入っていくところを、すでに見られていたら。
時尾は、うなずく代わりにお辞儀をした。
「かしこまりました」
踵《きびす》を返すと、無造作に一つに括《くく》られた黒髪が揺れる。半月も従軍していては、まともに髷《まげ》を結えるはずがない。
時尾の髪が揺れるたび、胸がざわつく。触れてみたいと衝動が起こる。
馬鹿馬鹿しい。オレは何を考えているんだ。男装で紅ひとつ差さない女を相手に、何て浅はかな。
自嘲の思いとは裏腹、立ち去ろうとする背中に、気付けばオレは声を掛けている。
「おい」
はい、と振り返った笑顔から、オレはまた目を逸らす。言葉が続かない。時尾は沈黙を埋めるように言った。
「さすけねぇですよ。わたしが櫓に入るとき、誰《だっちぇ》にも気付かれねかったから。八《や》重《え》さんに見張っていてもらったなし。ほら、鉄砲が得意な八重さんは目がとてもいいべし? だから斎藤さま、さすけねぇですよ」
見透かされている。時尾の勘がいいのか、オレの底が浅いだけか。気まずさを呑み込むと、ささくれた言葉が口から飛び出した。
「斎藤じゃない。何度も言っているが」
「山口二郎さま。わたしもわかっているんだけんじょ、ずっと斎藤さまとお呼びしてきたから」
変えられないわけじゃない。変えたくないんだと告げられたことが、一度や二度じゃない。一人や二人からじゃない。
斎藤と呼ばれ続けることには、もうあきらめがついた。公式文書では山口二郎だし、新たに知り合った会津の者たちからは山口と呼ばれる。それで満足しておく。
名を変えた理由は、斎藤一に敵が多すぎるからだ。偵察、暗殺、裏切り、粛《しゅく》清《せい》。京都では、命じられれば何でもやった。オレを恨む者が倒幕派の軍門にはたくさんいる。斎藤一が会津にいると知られたら、復讐に燃える連中の士気が上がってしまう。
「おい」
「はい? 何だべし?」
「明日からのこと」
「わかっています。わたしは斎藤さまのおっしゃるとおり、八重さんと一緒に武器の補修をします。前線には、斎藤さまの許可があるまで出ません」
「わかっているならいい」
「足手まといにはなりたくねぇので。だけんじょ、わたしも斎藤さまと同じ、環を持つ身だなし。わたしでなければ戦えねぇ相手もいます。覚悟はできているから、いつでも、戦えと命じてくなんしょ」
時尾は一礼すると、外の様子をうかがって、素早く櫓を出ていった。オレは、ほっと息をついた。
半年ほど前のまだ京都にいたころに、時尾は一武士として、会津藩主の松平容《かた》保《もり》公の命を受けて新撰組預かりの身となった。蒼い環を持つ時尾は、前線で戦っても男に引けを取らない。伏見でも宇都宮でも、時尾の力に助けられた。
でも、女が戦うなよ。
オレの母方は会津だが、オレ自身は江戸生まれの江戸育ちだ。武芸を修める女なんて、見たこともなかった。
会津の武家の女は、誰もが薙刀《なぎなた》を使う。刀の扱いを心得た者も多い。風変わりな女たちだ。そうでなけりゃ、救いようのない向こう見ずばかりだ。
会津藩主が居城を構える若松には、五つの街道が集まっている。他国とを結ぶ幹線に、江戸街道、越後街道、米沢街道がある。白河街道と二本松街道は、江戸から仙台を経て陸奥《むつ》に通じる奥州街道へとつながっている。
二百四十年前、将軍の弟である保《ほ》科《しな》正《まさ》之《ゆき》公が会津を治めることになったのは、会津が軍事的要衝だからだ。五つの街道の中心を押さえれば、越後と奥羽諸藩に睨みを利かせることができる。
正之公の時代は、関ヶ原の戦から数えて四十年ほど後に当たる。越後も奥羽も外《と》様《ざま》で、いまだ警戒すべき相手だった。
それも昔の話だ。今は、正之公が無上の信頼を寄せた江戸の町から発して、敵が攻めてこようとしている。越後や奥羽諸藩が、むしろ会津の味方だ。
会津と江戸とを結ぶ道の中で、その名のとおり江戸街道が主要だ。会津から真南に伸びる江戸街道は、今《いま》市《いち》で日光街道と連絡し、宇都宮を経て江戸へと入る。
宇都宮に駐屯する倒幕派は今市に軍を北上させて、江戸街道を進もうとしている。会津藩は、若年寄の山《やま》川《かわ》大《おお》蔵《くら》が率いる精鋭を江戸街道の守りに向かわせた。
今、オレたちが駐屯する白河は、会津から南西に伸びる白河街道の終点で、江戸から北上する奥州街道との結節点だ。
この白河を、江戸と会津を結ぶ脇道の宿場に過ぎないと見るか。それとも、奥州街道沿いの全域を呑み込むための要の一つと見るか。
白河近辺の様子を偵察して、はっきりした。倒幕派は江戸街道からまっすぐに会津を狙うだけじゃない。奥州街道沿いの諸藩を降《くだ》して会津を囲い込む算段だ。
現状、オレたちは兵力に不安がある。会津藩が白河方面に当てた軍勢は、老兵や農民兵を含んでいる。新撰組も軍備が足りない。
白河城内を見回って、辛うじて使えそうな武器を掻き集めた。古い小銃ばかりだ。ひとまず地図を手配しつつ、伏兵を置けそうな地点を隊士に探らせている。明日にも自分の足で白河の地形を確かめようと思う。
堀と石垣に囲われた白河城は、小高くなった本丸をさらに堀と石垣で守っている。本丸の三《さん》重《じゅう》櫓《やぐら》は、さながら小さな天守だ。目の前に見えているようでいて、そこへたどり着くのは一筋縄ではいかない。高い石垣が迫る道を、右に左に折れながら進む。
軍議の場となる三重櫓には、会津軍の隊長格が顔をそろえていた。部屋の片隅に女がいて、ひどく目を引いた。
女がオレを見て微笑んだ。何者だ、と目顔で周囲に問うと、五十絡みで白髪頭の会津藩士が答えた。
「会津の武家の娘御で、篠《しの》田《だ》弥《や》曽《そ》どのだ。白河城を預かる二本松藩に父君の古い知己がいて、病床の父君の代わりに書状を届けるところだったのだど」
「会津への助勢を頼む書状ですか?」
「んだ。二本松藩は倒幕派の脅迫を受けて、白河城を長州藩に渡すと約束させられた。そこへ我々が乗り込んで占拠しただけんじょ」
「この女は、確かな身分の者ですか?」
「篠田家は古くからの名家だぞ。篠田家の父君なら、私もよく知っている。ご子息たちは京都守護の任にも就き、今も日光口に従軍している。したがら弥曽どのは女の身で、兄弟の代わりに白河まで来たのだど」
会津藩士に促されて初めて、弥曽が口を開いた。
「篠田弥曽と申します。戦況が落ち着くまで白河城で保護していただくこととなりました。どうぞよろしくお願ぇいたします。新撰組のご活躍は、上《じょう》洛《らく》した兄弟からうかがっておりました」
弥曽はオレよりいくつか年上だろう。濡れたような目の、細面の美人だ。紺《こん》鼠《ねず》色の袷《あわせ》に、すんなりと白い首筋が映える。
軍議の始まりが告げられた。弥曽は一礼して部屋を辞す。立ち去り際、袖が触れ合いそうになって、オレは一歩引いた。それに気付いた弥曽がわざわざ足を止めてささやいた。
「お気に障《さわ》ったかし? 申し訳ありません」
「いや、別に」
「お勤め、頑張ってくなんしょ」
弥曽の後ろ姿を目の隅で見送った。少しかすれた声と、うなじに掛かる後れ毛が、妙に強く頭に焼き付いた。
倒幕派との間に戦端が開かれたのは、それから五日後の明け方だった。閏《うるう》四月二十五日。場所は、白河城の南西一里半に位置する白坂口だ。
新撰組が、その白坂口を守っていた。
街道を挟んで両側は鬱《うっ》蒼《そう》とした小山だ。兵を左右に分けて待機すること三刻。倒幕派は薄い朝霧にまぎれて、オレの分隊へと奇襲を掛けてきた。
「斎藤の読みが当たったな」
島田さんが、木立を盾に銃弾をやり過ごしながら笑った。オレはうなずく。
上方から挟撃してくれと言わんばかりの街道を、倒幕派が突っ切ろうとするはずもない。伏兵がいると山を張って、左右どちらかの隊の背後を突こうとするだろう。オレが警戒を命じたのは、街道ではなく小山の側面からの奇襲だった。
敵の兵力は、銃撃の規模から図るに、二百かそこらだ。銃声が聞こえれば、向かいの小山の分隊がすぐに応援に来る。連携の手筈は幾とおりか想定して、班長格の隊士に叩き込んでおいた。
霧を透かして確認する。敵との距離、おそらく二町ほど。オレたちが装備するゲベール銃の射程内だ。
「構え!」
地面に伏せ、あるいは木から半身を出して、一斉に敵へ銃口を向ける。
「撃て!」
乾いた銃声が重なる。敵陣から悲鳴が聞こえた。と同時に、飛んでくる銃弾の層が厚くなる。闇雲な威嚇射撃から、的を絞った攻撃に変わったようだ。
「構え! 怯《ひる》まず撃て! 敵も大砲を持っちゃいない! 怯まず撃て!」
兵を叱《しっ》咤《た》してオレも撃つ。弾を込める隙に島田さんが撃つ。狙いなんか付けたって仕方がない。支給された銃は、前に飛ぶだけで御の字の旧式だ。
たちまち怪我人が出る。呻《うめ》きながら弾を込める隊士の袴《はかま》が見る間に赤く染まる。
敵陣のほうが低い位置にある。次第に立ち込めた霧がそこに淀《よど》んだ。見下ろすオレたちにはどうにか人影がわかるが、敵は完全に視界を閉ざされているだろう。
「今のうちに畳み掛けろ!」
怒鳴る喉に火薬の匂いが染みる。
野戦の指揮は初めてだ。そもそも百人を超える兵を指揮することが初めてだ。白河に来たのも初めてだ。山に拠《よ》って襲撃する作戦を立てたのも初めてだ。
けれど、戦況が読める。銃声と怒号の中、声を張って命令を飛ばしながら、すぅっと静かな場所にオレはいる。
伊達《だて》に五年間、京都で戦闘に明け暮れていたわけじゃない。知恵も勘も身に付いている。 どこに潜んで敵を待ち受けるべきか。どんな場所でなら、数で勝る敵と渡り合えるか。初めて見る地形に、知っている何かが重なる。
考えるより先に体が動く。喉から声が飛び出して、軍勢がオレの指揮に従う。
わあっと鬨《とき》の声が上がった。街道向かいの小山から応援部隊が到着したんだ。敵は横合いからのただ一度の斉射に浮足立って逃げ出した。
「尻に撃ち込んでやれ!」
銃声、悲鳴、銃声、銃声、銃声。霧の中に敵軍が消える。応援部隊がオレの隊へ合流する。興奮した顔ぶれを前に、オレは即座に命じた。ここは勢いに乗ずるべきだ。
「島田さん、二班を率いて負傷者の介抱と、敵が捨てていった武器の回収を」
「承知!」
「一班、三班、四班はオレに続け。追撃する。全員は殺すな。捕縛して情報を引き出す。行くぞ!」
おうッ、と声が上がった。オレは先陣を切って駆け出す。
昇り始めた朝日が、逃げ散る敵を照らす。南への退路は突如、朝日を背にした砲撃によって阻まれた。近くに駐屯していた会津藩士が駆け付けたらしい。
「会津軍に遅れるな! オレたちも手柄を重ねるぞ!」
兵に発破を掛ける。おかしなもんだ。こんなにやすやすと言葉が口から出るなんて、常日頃のオレにはあり得ない。
オレの体に誰かが乗り移っているんだろうか。例えば近藤さん。それとも、土方さんの生き霊か。いや、何だっていい。勝てりゃいい。兵を死なせずに済めばいい。倒幕派から会津を守れればいい。
いまだに敵を「倒幕派」と呼び続ける滑《こっ》稽《けい》さに、ふと思い至る。
徳川宗家は半年以上も前に政権を天皇に奉還した。慶喜公は将軍職も辞した。つまり、徳川幕府はもう倒れている。新撰組や会津軍をひっくるめて幕府軍と呼ぶが、それもまた本当は滑稽だ。
じゃあ、互いを何と呼べというんだ?
敵は「官軍」を名乗っている。「賊《ぞく》軍《ぐん》」と貶《おとし》められるオレたちが、連中の呼び名に従えるはずもない。敵を薩《さっ》長《ちょう》土《と》肥《ひ》と括《くく》って呼ぶのも、そろそろ無茶だ。連中に与《くみ》する藩は急速に増えて、連中の軍勢は膨れ上がっている。
結局、オレたちが幕府軍や佐幕派を名乗って存在し続ける限り、連中は倒幕派だ。
「簡単に倒されてたまるか」
劣勢は思い知っている。負け戦に次ぐ負け戦。オレの知る新撰組は崩壊した。ここにあるのは、新撰組の名を受け継いだだけの別の集団。あるいは、名だけでもいいから新撰組を死なせたくなくて、この集団を新撰組と名付けたのか。
しかし、白河防衛の緒戦はオレたち幕府軍の勝ちだ。
初陣の若い隊士たちが興奮に顔を輝かせている。こいつらを一日でも長く生かしてやるために、局長代理のオレに何ができるだろうか。
「斎藤さま。起きてくなんしょ、斎藤さま」
時尾だ。
オレはほんの少し、まぶたを開く。時尾の小さな手が、オレの袖に触れようか触れるまいかと迷っている。
手は結局、引っ込んでいった。時尾は再びオレを呼んだ。
「斎藤さま、軍議が始まっつまいます。そろそろ起きてくなんしょ」
オレは目を開けて顔を上げた。
どきりとした。膝をかがめた時尾が、ひどく近い。時尾も、自分から近付いたくせにオレと同じで、息を呑んで目を逸《そ》らした。
「寝ていたのか、オレは」
壁に背を預けて座り込んで、刀を抱いていた。首や背中がこわばっている。
「一時ほど寝ておられました。本当はもっと休んでもらいてぇけんじょ」
「これで十分だ」
「嘘です。十分なはずはねぇべし。今月の初めに会津を出てから今日この白河城に入るまで十五日も、斎藤さまはほとんど寝ておられねぇと、皆、口をそろえています」
「大《おお》袈《げ》裟《さ》だ。隙を見て、寝られるときに寝ている」
「だけんじょ、小《ちん》ちぇ物音ですぐ目ぇ覚ますくらい、眠りが浅ぇべし。体、壊れっつま」
時尾が眉を曇らせると、垂れた目尻が殊《こと》更《さら》に下がる。伏せがちのまつげの長さに見惚れそうになった。戦場に女がいると、気まずくてかなわない。
「さすけねえ。小言はいらん」
オレはそっぽを向いた。代わりに時尾が、オレにまっすぐな視線を向けた。
「斎藤さまの『さすけねえ』は信用できません。問題ばかり抱えて苦しくても、具合《あんべ》は何《な》如《じょ》だと訊いたら、さすけねぇとしか答えてくれねえ」
「オレのことより自分の心配をしろ。何をこそこそやっているのか知らないが、あんたもろくに寝てないだろう?」
格子の隙間から篝《かがり》火《び》の光が差し込んでくる。窓の向こうは外堀。城壁上に建つこの櫓《やぐら》には、槍の柄や古びた弓が埃をかぶっている。長らく倉庫として使われていたらしい。
今日、会津勢がここ白河城を占領した。オレたち新撰組、総勢百三十人は東南方面の守りを任されている。オレだけが櫓の中で眠りこけていた。局長代理のくせに、だらしない。
隊士のほとんどは江戸や流《ながれ》山《やま》での募兵に応じた者たちだ。訓練が行き届いているとは言えないが、戦意はある。副長を務める島《しま》田《だ》魁《かい》がうまく鼓舞してくれている。四十を超えた島田さんは力士のように大柄で、見るからに頼り甲斐がある。
京都で一緒にやってきた古い仲間のうち、今この白河にいるのは島田さんだけだ。土方さんは会津で怪我の治療をしている。沖田総司は江戸で寝付いたきりで、永《なが》倉《くら》新《しん》八《ぱち》や原《はら》田《だ》左《さ》之《の》助《すけ》とは別れ別れになった。そのほかは皆、死んでしまった。
時尾が、じっとオレを見ている。
「斎藤さま、おなか減ってねぇかし?」
見つめ返したら、どんな顔をするんだろう。そう思うが、思うだけだ。オレは刀をつかんで立ち上がる。
「減っている。食いそびれた」
「おむすびがあります。島田さまに預かっていただいているから、誰《だっちぇ》も手を付けてねぇはずです。軍議の前に召し上がってくなんしょ」
時尾が着物の上前を押さえる仕草をして立った。が、細身の野《の》袴《ばかま》だ。押さえるべき上前はなく、裾《すそ》の乱れようもない。時尾は空振りした手を見て、くすりと笑った。
まぶしいような気がして、オレは顔を背けた。
「先に櫓を出ろ」
狭い櫓から肩を並べて出ていくのを見られたら、どんな噂を立てられるかわからない。いや、オレが一人でいる櫓に時尾が入っていくところを、すでに見られていたら。
時尾は、うなずく代わりにお辞儀をした。
「かしこまりました」
踵《きびす》を返すと、無造作に一つに括《くく》られた黒髪が揺れる。半月も従軍していては、まともに髷《まげ》を結えるはずがない。
時尾の髪が揺れるたび、胸がざわつく。触れてみたいと衝動が起こる。
馬鹿馬鹿しい。オレは何を考えているんだ。男装で紅ひとつ差さない女を相手に、何て浅はかな。
自嘲の思いとは裏腹、立ち去ろうとする背中に、気付けばオレは声を掛けている。
「おい」
はい、と振り返った笑顔から、オレはまた目を逸らす。言葉が続かない。時尾は沈黙を埋めるように言った。
「さすけねぇですよ。わたしが櫓に入るとき、誰《だっちぇ》にも気付かれねかったから。八《や》重《え》さんに見張っていてもらったなし。ほら、鉄砲が得意な八重さんは目がとてもいいべし? だから斎藤さま、さすけねぇですよ」
見透かされている。時尾の勘がいいのか、オレの底が浅いだけか。気まずさを呑み込むと、ささくれた言葉が口から飛び出した。
「斎藤じゃない。何度も言っているが」
「山口二郎さま。わたしもわかっているんだけんじょ、ずっと斎藤さまとお呼びしてきたから」
変えられないわけじゃない。変えたくないんだと告げられたことが、一度や二度じゃない。一人や二人からじゃない。
斎藤と呼ばれ続けることには、もうあきらめがついた。公式文書では山口二郎だし、新たに知り合った会津の者たちからは山口と呼ばれる。それで満足しておく。
名を変えた理由は、斎藤一に敵が多すぎるからだ。偵察、暗殺、裏切り、粛《しゅく》清《せい》。京都では、命じられれば何でもやった。オレを恨む者が倒幕派の軍門にはたくさんいる。斎藤一が会津にいると知られたら、復讐に燃える連中の士気が上がってしまう。
「おい」
「はい? 何だべし?」
「明日からのこと」
「わかっています。わたしは斎藤さまのおっしゃるとおり、八重さんと一緒に武器の補修をします。前線には、斎藤さまの許可があるまで出ません」
「わかっているならいい」
「足手まといにはなりたくねぇので。だけんじょ、わたしも斎藤さまと同じ、環を持つ身だなし。わたしでなければ戦えねぇ相手もいます。覚悟はできているから、いつでも、戦えと命じてくなんしょ」
時尾は一礼すると、外の様子をうかがって、素早く櫓を出ていった。オレは、ほっと息をついた。
半年ほど前のまだ京都にいたころに、時尾は一武士として、会津藩主の松平容《かた》保《もり》公の命を受けて新撰組預かりの身となった。蒼い環を持つ時尾は、前線で戦っても男に引けを取らない。伏見でも宇都宮でも、時尾の力に助けられた。
でも、女が戦うなよ。
オレの母方は会津だが、オレ自身は江戸生まれの江戸育ちだ。武芸を修める女なんて、見たこともなかった。
会津の武家の女は、誰もが薙刀《なぎなた》を使う。刀の扱いを心得た者も多い。風変わりな女たちだ。そうでなけりゃ、救いようのない向こう見ずばかりだ。
会津藩主が居城を構える若松には、五つの街道が集まっている。他国とを結ぶ幹線に、江戸街道、越後街道、米沢街道がある。白河街道と二本松街道は、江戸から仙台を経て陸奥《むつ》に通じる奥州街道へとつながっている。
二百四十年前、将軍の弟である保《ほ》科《しな》正《まさ》之《ゆき》公が会津を治めることになったのは、会津が軍事的要衝だからだ。五つの街道の中心を押さえれば、越後と奥羽諸藩に睨みを利かせることができる。
正之公の時代は、関ヶ原の戦から数えて四十年ほど後に当たる。越後も奥羽も外《と》様《ざま》で、いまだ警戒すべき相手だった。
それも昔の話だ。今は、正之公が無上の信頼を寄せた江戸の町から発して、敵が攻めてこようとしている。越後や奥羽諸藩が、むしろ会津の味方だ。
会津と江戸とを結ぶ道の中で、その名のとおり江戸街道が主要だ。会津から真南に伸びる江戸街道は、今《いま》市《いち》で日光街道と連絡し、宇都宮を経て江戸へと入る。
宇都宮に駐屯する倒幕派は今市に軍を北上させて、江戸街道を進もうとしている。会津藩は、若年寄の山《やま》川《かわ》大《おお》蔵《くら》が率いる精鋭を江戸街道の守りに向かわせた。
今、オレたちが駐屯する白河は、会津から南西に伸びる白河街道の終点で、江戸から北上する奥州街道との結節点だ。
この白河を、江戸と会津を結ぶ脇道の宿場に過ぎないと見るか。それとも、奥州街道沿いの全域を呑み込むための要の一つと見るか。
白河近辺の様子を偵察して、はっきりした。倒幕派は江戸街道からまっすぐに会津を狙うだけじゃない。奥州街道沿いの諸藩を降《くだ》して会津を囲い込む算段だ。
現状、オレたちは兵力に不安がある。会津藩が白河方面に当てた軍勢は、老兵や農民兵を含んでいる。新撰組も軍備が足りない。
白河城内を見回って、辛うじて使えそうな武器を掻き集めた。古い小銃ばかりだ。ひとまず地図を手配しつつ、伏兵を置けそうな地点を隊士に探らせている。明日にも自分の足で白河の地形を確かめようと思う。
堀と石垣に囲われた白河城は、小高くなった本丸をさらに堀と石垣で守っている。本丸の三《さん》重《じゅう》櫓《やぐら》は、さながら小さな天守だ。目の前に見えているようでいて、そこへたどり着くのは一筋縄ではいかない。高い石垣が迫る道を、右に左に折れながら進む。
軍議の場となる三重櫓には、会津軍の隊長格が顔をそろえていた。部屋の片隅に女がいて、ひどく目を引いた。
女がオレを見て微笑んだ。何者だ、と目顔で周囲に問うと、五十絡みで白髪頭の会津藩士が答えた。
「会津の武家の娘御で、篠《しの》田《だ》弥《や》曽《そ》どのだ。白河城を預かる二本松藩に父君の古い知己がいて、病床の父君の代わりに書状を届けるところだったのだど」
「会津への助勢を頼む書状ですか?」
「んだ。二本松藩は倒幕派の脅迫を受けて、白河城を長州藩に渡すと約束させられた。そこへ我々が乗り込んで占拠しただけんじょ」
「この女は、確かな身分の者ですか?」
「篠田家は古くからの名家だぞ。篠田家の父君なら、私もよく知っている。ご子息たちは京都守護の任にも就き、今も日光口に従軍している。したがら弥曽どのは女の身で、兄弟の代わりに白河まで来たのだど」
会津藩士に促されて初めて、弥曽が口を開いた。
「篠田弥曽と申します。戦況が落ち着くまで白河城で保護していただくこととなりました。どうぞよろしくお願ぇいたします。新撰組のご活躍は、上《じょう》洛《らく》した兄弟からうかがっておりました」
弥曽はオレよりいくつか年上だろう。濡れたような目の、細面の美人だ。紺《こん》鼠《ねず》色の袷《あわせ》に、すんなりと白い首筋が映える。
軍議の始まりが告げられた。弥曽は一礼して部屋を辞す。立ち去り際、袖が触れ合いそうになって、オレは一歩引いた。それに気付いた弥曽がわざわざ足を止めてささやいた。
「お気に障《さわ》ったかし? 申し訳ありません」
「いや、別に」
「お勤め、頑張ってくなんしょ」
弥曽の後ろ姿を目の隅で見送った。少しかすれた声と、うなじに掛かる後れ毛が、妙に強く頭に焼き付いた。
倒幕派との間に戦端が開かれたのは、それから五日後の明け方だった。閏《うるう》四月二十五日。場所は、白河城の南西一里半に位置する白坂口だ。
新撰組が、その白坂口を守っていた。
街道を挟んで両側は鬱《うっ》蒼《そう》とした小山だ。兵を左右に分けて待機すること三刻。倒幕派は薄い朝霧にまぎれて、オレの分隊へと奇襲を掛けてきた。
「斎藤の読みが当たったな」
島田さんが、木立を盾に銃弾をやり過ごしながら笑った。オレはうなずく。
上方から挟撃してくれと言わんばかりの街道を、倒幕派が突っ切ろうとするはずもない。伏兵がいると山を張って、左右どちらかの隊の背後を突こうとするだろう。オレが警戒を命じたのは、街道ではなく小山の側面からの奇襲だった。
敵の兵力は、銃撃の規模から図るに、二百かそこらだ。銃声が聞こえれば、向かいの小山の分隊がすぐに応援に来る。連携の手筈は幾とおりか想定して、班長格の隊士に叩き込んでおいた。
霧を透かして確認する。敵との距離、おそらく二町ほど。オレたちが装備するゲベール銃の射程内だ。
「構え!」
地面に伏せ、あるいは木から半身を出して、一斉に敵へ銃口を向ける。
「撃て!」
乾いた銃声が重なる。敵陣から悲鳴が聞こえた。と同時に、飛んでくる銃弾の層が厚くなる。闇雲な威嚇射撃から、的を絞った攻撃に変わったようだ。
「構え! 怯《ひる》まず撃て! 敵も大砲を持っちゃいない! 怯まず撃て!」
兵を叱《しっ》咤《た》してオレも撃つ。弾を込める隙に島田さんが撃つ。狙いなんか付けたって仕方がない。支給された銃は、前に飛ぶだけで御の字の旧式だ。
たちまち怪我人が出る。呻《うめ》きながら弾を込める隊士の袴《はかま》が見る間に赤く染まる。
敵陣のほうが低い位置にある。次第に立ち込めた霧がそこに淀《よど》んだ。見下ろすオレたちにはどうにか人影がわかるが、敵は完全に視界を閉ざされているだろう。
「今のうちに畳み掛けろ!」
怒鳴る喉に火薬の匂いが染みる。
野戦の指揮は初めてだ。そもそも百人を超える兵を指揮することが初めてだ。白河に来たのも初めてだ。山に拠《よ》って襲撃する作戦を立てたのも初めてだ。
けれど、戦況が読める。銃声と怒号の中、声を張って命令を飛ばしながら、すぅっと静かな場所にオレはいる。
伊達《だて》に五年間、京都で戦闘に明け暮れていたわけじゃない。知恵も勘も身に付いている。 どこに潜んで敵を待ち受けるべきか。どんな場所でなら、数で勝る敵と渡り合えるか。初めて見る地形に、知っている何かが重なる。
考えるより先に体が動く。喉から声が飛び出して、軍勢がオレの指揮に従う。
わあっと鬨《とき》の声が上がった。街道向かいの小山から応援部隊が到着したんだ。敵は横合いからのただ一度の斉射に浮足立って逃げ出した。
「尻に撃ち込んでやれ!」
銃声、悲鳴、銃声、銃声、銃声。霧の中に敵軍が消える。応援部隊がオレの隊へ合流する。興奮した顔ぶれを前に、オレは即座に命じた。ここは勢いに乗ずるべきだ。
「島田さん、二班を率いて負傷者の介抱と、敵が捨てていった武器の回収を」
「承知!」
「一班、三班、四班はオレに続け。追撃する。全員は殺すな。捕縛して情報を引き出す。行くぞ!」
おうッ、と声が上がった。オレは先陣を切って駆け出す。
昇り始めた朝日が、逃げ散る敵を照らす。南への退路は突如、朝日を背にした砲撃によって阻まれた。近くに駐屯していた会津藩士が駆け付けたらしい。
「会津軍に遅れるな! オレたちも手柄を重ねるぞ!」
兵に発破を掛ける。おかしなもんだ。こんなにやすやすと言葉が口から出るなんて、常日頃のオレにはあり得ない。
オレの体に誰かが乗り移っているんだろうか。例えば近藤さん。それとも、土方さんの生き霊か。いや、何だっていい。勝てりゃいい。兵を死なせずに済めばいい。倒幕派から会津を守れればいい。
いまだに敵を「倒幕派」と呼び続ける滑《こっ》稽《けい》さに、ふと思い至る。
徳川宗家は半年以上も前に政権を天皇に奉還した。慶喜公は将軍職も辞した。つまり、徳川幕府はもう倒れている。新撰組や会津軍をひっくるめて幕府軍と呼ぶが、それもまた本当は滑稽だ。
じゃあ、互いを何と呼べというんだ?
敵は「官軍」を名乗っている。「賊《ぞく》軍《ぐん》」と貶《おとし》められるオレたちが、連中の呼び名に従えるはずもない。敵を薩《さっ》長《ちょう》土《と》肥《ひ》と括《くく》って呼ぶのも、そろそろ無茶だ。連中に与《くみ》する藩は急速に増えて、連中の軍勢は膨れ上がっている。
結局、オレたちが幕府軍や佐幕派を名乗って存在し続ける限り、連中は倒幕派だ。
「簡単に倒されてたまるか」
劣勢は思い知っている。負け戦に次ぐ負け戦。オレの知る新撰組は崩壊した。ここにあるのは、新撰組の名を受け継いだだけの別の集団。あるいは、名だけでもいいから新撰組を死なせたくなくて、この集団を新撰組と名付けたのか。
しかし、白河防衛の緒戦はオレたち幕府軍の勝ちだ。
初陣の若い隊士たちが興奮に顔を輝かせている。こいつらを一日でも長く生かしてやるために、局長代理のオレに何ができるだろうか。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
幕末レクイエム―誠心誠意、咲きて散れ―
馳月基矢
歴史・時代
幕末、動乱の京都の治安維持を担った新撰組。
華やかな活躍の時間は、決して長くなかった。
武士の世の終わりは刻々と迫る。
それでもなお刀を手にし続ける。
これは滅びの武士の生き様。
誠心誠意、ただまっすぐに。
結核を病み、あやかしの力を借りる天才剣士、沖田総司。
あやかし狩りの力を持ち、目的を秘めるスパイ、斎藤一。
同い年に生まれた二人の、別々の道。
仇花よ、あでやかに咲き、潔く散れ。
schedule
公開:2019.4.1
連載:2019.4.7-4.18 ( 6:30 & 18:30 )
陸のくじら侍 -元禄の竜-
陸 理明
歴史・時代
元禄時代、江戸に「くじら侍」と呼ばれた男がいた。かつて武士であるにも関わらず鯨漁に没頭し、そして誰も知らない理由で江戸に流れてきた赤銅色の大男――権藤伊佐馬という。海の巨獣との命を削る凄絶な戦いの果てに会得した正確無比な投げ銛術と、苛烈なまでの剛剣の使い手でもある伊佐馬は、南町奉行所の戦闘狂の美貌の同心・青碕伯之進とともに江戸の悪を討ちつつ、日がな一日ずっと釣りをして生きていくだけの暮らしを続けていた……
沖田氏縁者異聞
春羅
歴史・時代
わたしは、狡い。
土方さまと居るときは総司さんを想い、総司さんと居るときは土方さまに会いたくなる。
この優しい手に触れる今でさえ、潤む瞳の奥では・・・・・・。
僕の想いなんか蓋をして、錠を掛けて捨ててしまおう。
この胸に蔓延る、嫉妬と焦燥と、独占を夢みる欲望を。
どうして俺は必死なんだ。
弟のように大切な総司が、惹かれているであろう最初で最後の女を取り上げようと。
置屋で育てられた少女・月野が初めて芸妓としてお座敷に出る日の二つの出逢い。
不思議な縁を感じる青年・総司と、客として訪れた新選組副長・土方歳三。
それぞれに惹かれ、揺れる心。
新選組史に三様の想いが絡むオリジナル小説です。
永き夜の遠の睡りの皆目醒め
七瀬京
歴史・時代
近藤勇の『首』が消えた……。
新撰組の局長として名を馳せた近藤勇は板橋で罪人として処刑されてから、その首を晒された。
しかし、その首が、ある日忽然と消えたのだった……。
近藤の『首』を巡り、過去と栄光と男たちの愛憎が交錯する。
首はどこにあるのか。
そして激動の時代、男たちはどこへ向かうのか……。
※男性同士の恋愛表現がありますので苦手な方はご注意下さい
晩夏の蝉
紫乃森統子
歴史・時代
当たり前の日々が崩れた、その日があった──。
まだほんの14歳の少年たちの日常を変えたのは、戊辰の戦火であった。
後に二本松少年隊と呼ばれた二本松藩の幼年兵、堀良輔と成田才次郎、木村丈太郎の三人の終着点。
※本作品は昭和16年発行の「二本松少年隊秘話」を主な参考にした史実ベースの創作作品です。
新撰組のものがたり
琉莉派
歴史・時代
近藤・土方ら試衛館一門は、もともと尊王攘夷の志を胸に京へ上った。
ところが京の政治状況に巻き込まれ、翻弄され、いつしか尊王攘夷派から敵対視される立場に追いやられる。
近藤は弱気に陥り、何度も「新撰組をやめたい」とお上に申し出るが、聞き入れてもらえない――。
町田市小野路町の小島邸に残る近藤勇が出した手紙の数々には、一般に鬼の局長として知られる近藤の姿とは真逆の、弱々しい一面が克明にあらわれている。
近藤はずっと、新撰組を解散して多摩に帰りたいと思っていたのだ。
最新の歴史研究で明らかになった新撰組の実相を、真正面から描きます。
主人公は土方歳三。
彼の恋と戦いの日々がメインとなります。
朝敵、まかり通る
伊賀谷
歴史・時代
これが令和の忍法帖!
時は幕末。
薩摩藩が江戸に総攻撃をするべく進軍を開始した。
江戸が焦土と化すまであと十日。
江戸を救うために、徳川慶喜の名代として山岡鉄太郎が駿府へと向かう。
守るは、清水次郎長の子分たち。
迎え撃つは、薩摩藩が放った鬼の裔と呼ばれる八瀬鬼童衆。
ここに五対五の時代伝奇バトルが開幕する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる