俺の飼い主がヤンデレとスパダリとストーカーな件について。

プロローグ

第1話 ヤクザとの出会い

ピピピッピピピッ ピッ

いつもの時間にセットされた目覚ましをストップする。陽ひがカーテン越しに眩しく差し込み、俺の顔に直射した。

…待て、太陽だって…？

「…やっべぇ！新聞配達の時間…ん？」


急いで準備しようとして起き上がった俺は思わず凍りついた。
それもそうだ、見慣れたはずの煎餅せんべい布団や八畳間の1LKが見当たらないんだから。
チラッと周囲を見渡すが、あるのは天蓋付きベッドと1LKとは程遠い広さの部屋だけ。

「…ラブホ？」

全身の毛穴から嫌な汗がダラダラと流れ出す。
やばい、ついに一線を超えてしまったのか？
確かにバイト先にはホモが多かったけど、勤め始めて2年、今まで貞操だけは守り抜いてきた。

ズキズキと痛む頭をフル回転させて考えるが、昨日のことは何ひとつ思い出せない。

思い出せ、思い出すんだ俺。
昨日はたしか…














「いらっしゃいませ、ご案内致します」

昨日はいつも通り、学校が終わってすぐにバーのバイトに向かった。女手一つで育ててくれた母が入院してからは、俺が一家の生計を立てている。

たしか昨日はいつもより忙しくて…

「花緒ちゃん、休憩入っていいわよ～。今日の賄まかないは張り切ったんだから♡」

「ありがとうございますマスター。それにしても、今日も繁盛してますね。まぁありがたいことなんですけど…」

「そうねぇ…。ま、この後も頑張って貰わなきゃなんだからゆっくり休みなさいな。あ、それとマスターじゃなくて薫ちゃん♡って呼んでよね！もー、いつまでも他人行儀なんだから！」

「はは…。あ、厨房のゴミだけ捨てておきますね。」

薫さんはこの店のマスターで、あんな喋り方だけど一応男だ(心は乙女らしい)。ダメ元で受けた深夜枠の面接だったけど、家の事情と顔が好みっていう理由から雇ってくれた恩人でもある。
時給も良いしまかないは無料、他のスタッフさんも優しいし、たまに尻を触られる以外は恵まれすぎた環境の職場だ。

「明日の提出物なんもやってねぇ…。」

だが、勉強とバイトを両立させるのはなかなか難しい。
今まで何とかやってきたものの、今年からは俺も受験生。特待枠で進学するしかない俺は、先生からの圧もそろそろ耐えきれないほどにのしかかっていた。

「はぁー、誰か俺のこと飼ってくれないかな。なんて…ってあ、すいません！！」

そんなことを考えながらゴミ捨て場に向かっていると、下をむいていたせいか誰かとぶつかってしまった。

「…あ"？」

あ、あかんー。これ、ヤのつく人だ…。

恐る恐る見上げると、オールバックにされた金髪に、高そうなサングラスが目に入る。
俺よりも20センチは高いであろうスーツのお兄さんが、こちらを見下ろしていた。