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52 世界を震わす匂いと音色。
しおりを挟むあまりの衝撃により世界の津々浦々までもが震える。
大気までもが揺れて、レッドの背にいた私もあやうく落ちるところであった。
シロはシルバーとともに逃げているはずだから、きっと大丈夫だろう。
決戦の地は巨大なクレーターとなり、衝突時の衝撃によって超特大チクワも四散して飛び散り周囲の二次被害がシャレにならない。環境破壊どころか、確実に大陸の形が変わっている。
だというのにワンゲルオールはその中心にて、かなりボロボロになりつつも、なおも健在であった。
『がははは、これが貴様らの切り札か。大したものよ、我をここまで追い詰めたこと誇るがいい。だがそれもここま……えっ!?』
調子良くワンゲルオールが話している途中で、第二弾が彼の頭上に落ちてきた。
なんかごめん。一撃でどうにかなるなんて端から思ってなくて、あと同じ奴が全部で十ほど続くから。お願いですから大人しく倒されてくれい。
世界を震わす十二発もの不気味な音が、ようやく鳴り終わった。
辺り一帯どころか風にのってかなり遠くにまで漂う焼チクワの匂い。
しばらく待ってからシルバーたちと合流して爆心地に戻る。
被害にあった地形についてはもはや何も語るまい。
少なくとも未来永劫、この場所で人間と魔族が争うことは適わないであろう。撒き上がった大量の粉塵による長い冬の到来とか気候変動などの、そのへんの諸問題についてはなんとも言えない。
端の方が遠すぎて霞んで見えるほどの巨大なクレーター。
シルバーの背に跨りチクワバズーカを構えつつ、その中心地へと用心しつつ向かう。
清々しいくらいに何もない。
キョロキョロと周囲を警戒しつつ進む。
ワンゲルオールの巨体はどこにも見当たらない。さしもの奴もアレだけの攻撃には耐えきれなかったとみえる。
殺ったのかな? そう訊ねようとしたところで不意に衝撃を受けて、シルバーの体が吹き飛ばされた。背に乗っていた私やシロも地面に投げ出される。上空にて警戒していたレッドが「ケーン」と警戒音を発してこちらに急行してくれようとしたが、その矢先に黒い雷撃に打たれてポトリと地面に落ちた。
「逃げろ! ハナコ!」
攻撃を受けて動けないシルバーが無理をして叫んでくれたので、咄嗟に体が反応した。
無様に横に転がる体、だがそのおかげで助かった。
さっきまで自分がいた所に雷が落ちて、地面を砕いていたのだから。
『おのれ聖女め、よくもやってくれたな……。おかげで体を維持できなくてこのザマよ』
そう言ったワンゲルオールの体は随分と縮んでいた。
せいぜい私よりも頭ひとつ分ぐらいの大きさ程度になっている。首から上の耳型の頭部の縁が潰れて餃子の端っこみたい。尊大さは失せてすっかりみすぼらしく成り果て、もはや古の紅い災いと呼ばれた気勢は感じられない。
なのに……、それでも充分に強い。
こちらに向かって手をかざし攻撃を仕掛けようとする。
私もすかさずチクワバズーカにて迎撃する。
だが効かない。神域の森の大樹すらも貫通する一撃が無造作に枯れ枝のような手で弾かれた。
逆に奴の一撃がコチラへと向かってくる。
空中を走る黒い雷撃が私に迫る。もう駄目と思った瞬間に、わずかに攻撃が逸れて、すぐ側の地面を抉るに留めた。
シロが「ちっ! ちっ! ちっ!」と超音波を連発してワンゲルオールの腕や頭部を攻撃してくれていた。
そんなシロに向かい『邪魔だ』と一喝し黒雷を落とすワンゲルオール。
咄嗟に動いて直撃こそは避けたものの攻撃の威力によって、小さな白い体がまるでボールのように撥ねて地面を転がり、ピクリとも動かなくなった。
シルバーが血を吐いて倒れてる。
レッドが体中からプスプスと黒い煙をあげて倒れている。
シロが全身傷だらけにて土に塗れて倒れている。
それを一緒に視界に収めたとき、ドクンと心臓が唸りをあげて、ブチリと私の中で何かがキレた。
自分の中の全てが激情に染まる。
同時に脳内にピコンと響く謎の声。
『能力レベル10に達しました。限界突破を開放します。なお三匹との従魔契約はどうしますか? Y/N』
何度も何度も何度も、同じ事を言わせんなっ!
私は友達を従えるつもりも契約で縛る気もさらさらねぇ!!
あー、イライラする。もう、なんもかんもが腹立たしい!!!
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