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054 戦いのあと
しおりを挟むかつては雄大な自然を誇っていたギガン島。
だが復活した三つの災厄のせいで、すっかり荒廃してしまった。
「ウソつくにゃん。ぜんぶリンネのせいにゃ」
しかし尊い犠牲のおかげで、悪はすべて滅びた。
世界は救われたのだ。
「ぜんぜん救われてないにゃ。一面焼け野原にゃ。一番ヤバイ奴もピンピンしてるにゃ」
失ったものは確かに多い。
だがきっと大丈夫。希望はそこにある。
だって生きているかぎり、命は続いていくものなのだから。
「なんとなくいい話っぽくまとめようとしてもダメにゃ」
大地は死なない。
命は尽きない。
いずれきっと蘇る。
そしてかつての姿をとり戻す。
……かもしれない
「『かもしれないって』何にゃ。そんなことで誤魔化されないにゃ。ちゃんとした根拠を示すにゃ。断固、資料を要求するにゃ」
にゃあにゃあ、やかましいぞ、ルナティ。
ちっ、やはり適当に煙にまくことは無理か。お上りさんの田舎者だって話だったのに、伊達に三ヶ月も勇者を求めて各地を彷徨ってはいなかったということか。えらい目にあった分だけ、しっかり世間にスレてやがる。
せっかくわたしがそれっぽくキレイに話をまとめようとしたのに。
「そりゃあ、無理でしょう。ちなみにこの地が元のようになる確率は、かぎりなくゼロに近いですね。それどころかじきに沈みますよ」とルーシー。
なんでも富士丸くんがキングヒュドラのマウントをとった際に、ガシガシやった振動にてギガン島直下の地殻がビッキビキのバッキバキ。
そこにドロドロのマグマが大量に流れ込んだり、ドドメッキの体内にあった黄色のドロドロしたヤバイ物質とかまで混入して、じゅわじゅわ絶賛浸食中。さながら虫歯のようにゴリゴリ削っていると。
「そうか……、じゃあ帰るか」
「ダメにゃん、みんなを探すにゃ」
「えー」
ルナティは強情だった。それどころか探してくれないと艦橋内で粗相を働くと、こちらを脅迫までしやがった。
何度も言っているけど、改めてもう一度言う。
ルナティは見た目こそはデカいネコっぽいが、カネコという種族のれっきとした成人男性。いい歳をした大人が「言うこときいてくれないと漏らすぞ」とは、いろんな意味で怖すぎる。
しかたがないので言う通りに従うことにした。
もっとも地表はこんなあり様にて、遺骨の一本も見つかるとはとても思えないけど。
もしも発見されたら丁重に葬ってやるとしよう。
なんぞと神妙な心持ちでいたら、
……生きてたよ、カネコたち。
みんなピンピンしてたよ。
そういえば、こいつらってば魔法で空を飛べたんだったか。
探すまでもなく宇宙戦艦「たまさぶろう」が着陸したら、かってにワラワラ寄ってきた。その数、全部で三千と二百二十八。
未曾有の大惨事をまえにして、全島民、誰一人欠けることなく揃っているとか、とんだ逞しさ。絶海の孤島での隠遁生活にて培われた田舎者魂は、わたしの想像をはるかに越えているようだ。
とはいえ、島はじきに海の藻屑となる。
そのことをキリリとマジメな表情にて告げて、「このまま島と運命をともにするか」とたずねたら、全員が「絶対にイヤにゃ」と即答。「こんなズタボロに荒れた土地に未練はないにゃ」とまで言い切りやがった。
はなから故郷に固執してないのなら、勇者なんか探しに人をやらないで、とっととみんなで逃げ出せよな。
そんなカネコたちだが、行くあてがないというので、まとめてリスターナに移住させることにする。
わたしとしては別にどっちでも良かったのだが、おもいのほかにルーシーがこれを積極的に勧めてきたから。
「なんで? 最初は『捨てて来なさい』とか言ってたくせに」
「あれはリンネさまがペットとして飼うとか言い出したからです。ですが新しい住人となるなら話は別です。なにせ彼らはああ見えて、けっこう有益な存在みたいですから」
「そうなの? なんか日がな一日ゴロゴロして毛づくろいをしているダメヒモなイメージしかないんだけど」
「まぁ、確かに生産性とかではまるで役立たずですけど。彼らの場合、領内に居てくれるだけで、ちょっとした特典が発生するのですよ」
カネコたちは体から特殊なニオイを発している。
これが害虫などを寄せつけない。だからこそ森でスローライフとかが可能。でないとやぶ蚊とかダニとかでヤバいからね。
つまり彼らがそこいらをブラブラしているだけで、防虫効果が発揮されるというわけだ。天然成分由来の歩く除虫菊みたいなものかな。
なんにせよ国益にかなうとあらば、よもやシルト王さまも文句は言うまい。
こうしてリスターナに新たな住人が加わることになった。
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