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023 外遊
しおりを挟む狩りにてあちこちを飛び回ってわかったのが、想像以上にひどい国内のあり様。
まず主都以外の街や都の大半が機能不全に陥っている。ここのところ人と物の行き来もろくすっぽなかったから、どこもカツカツ。
農民たちは逃げ出して田畑は放置で荒れ放題。辺境の村なんて、ほぼほぼ廃村。
バカ王子の乱が集結したとはいえ、問題山積なリスターナ国。
美中年な王さまは無事に目を覚ましたものの、「どうせならぜんぶ解決してから起きたかった」ともらすほどに、取り巻く情勢は厳しい。
治安の問題はある程度、わたしの方でサクっと対処したが、問題はケンカを売りまくった周辺国との関係改善
ここから先は国同士の外交問題。
賠償に関してはうちの資源で賄えるとして、問題は国としてのチカラ関係の優劣。
現在、女神によって三千人近い異世界渡りの勇者がばら撒かれているノットガルド。
各国が超人兵器を保有している中にあって、リスターナはゼロ。
なにせもらった六人全員死亡しちゃったからね。
わたしはあくまでノラ勇者。
協力はしても所属をするつもりは、さらさらない。
で、リスターナなのだが、兵力、国力だだ下がり状態につき、最悪、交渉の席にもついてもらえず、いきなり属国化されて、一方的に搾取浪費されるなんてことも考えられる。
いざともなれば相手をチカラでねじ伏せることは簡単だけれども、それをやっちゃうと魔王と同じだし。
なによりいまはまだ女神の目が怖いからね。
あまり表だって動きたくないというのが、わたしの本音。
「どうしたものだろうねえ」
困ったときのルーシーさん頼み。
すると青い瞳のお人形は、こともなげにこう言った。
「そんなの簡単ですよ。交渉へとおもむく使節団の中に何名かハイボ・ロードたちをオマケにつけるだけで解決です」
向こうが勇者という超人兵器の武力を笠に着るのならば、こちらは伝説の優良種をチラつかせて対抗する。
グランディア、オービタル、セレニティを五人ずつばかり同行させるだけでいい。
実際に彼らとくっついているのはわたしにて、リスターナとは関係ないけど、黙っていればわからない。きっと向こうが勝手に忖度してくれるハズとのこと。
うーん、そんなことでうまくいくのかな?
王さまや宰相のダイクさん、将軍のゴードンさんらと協議の結果、まず最初にお詫び行脚に訪れる先へと選んだのは、昔からわりとつき合いがあった西のトカード。
人間族の国にて、もとの国力はリスターナといい勝負だったのだが、こちらは五人の勇者を得ても無謀な野心にとち狂うことなく、コツコツと堅実に内政に努めたおかげで、中の中ぐらいの国力が、いまでは中の上の上ぐらいにまで急成長。
ちなみにリスターナの現在の国力は、いいとこ下の中といったところ。
正直、中堅どころを気取るのもおこがましい衰退っぷり。
たった一年ほどでずいぶんと溝をあけられたものである。
使節団の大使として赴くのは、なんと! リリアちゃん。
跡継ぎのカーク王子が廃嫡になってしまったので、必然的に彼女が後継者第一位。
そのお披露目と、将来の婿取りへの仕込み、経験と修行、あと可愛い美少女相手だったら、あまり無茶は言えまいという下心も込み込みの人選にて。
もちろんダイクさん厳選の優秀な官僚にて脇を固め、警備にはわたしやハイボ・ロードたちがつくからこそ、許された外遊。
いきなり外交デビューにて戦後の交渉とか、可憐な美少女にはいささか荷が重すぎる気もするが、あいにくといまのリスターナには出し惜しみをしておく余裕さえないのだ。
おっちら隣国まで大名行列なんてしてられないので、宇宙戦艦「たまさぶろう」にてビューンとお出かけ。
はじめての空の旅にはしゃぐリリアちゃん。
あんまり喜ぶものだから、ちょいと大気圏を飛び越えて宇宙遊泳としゃれこむ。
星の海の雄大な眺めをプレゼントしたら、「リンネお姉さまだいすき」だってさ。
おもわずわたしの神鋼精神がゆらぐほどの破壊力。この調子であれば外交なんてちょちょいのちょいであろう。
大気圏からトカード国内へと再突入するたまさぶろう。
さすがにこのまま行ったら、相手が卒倒するので、人目のない適当なところで艦を降りて馬車の旅に切り替え、トカードの都を目指す。
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