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017 殴り込み
しおりを挟む厳しい国際情勢の中にあって、リスターナ国を陰に日向にと長年守護してきた将軍ゴードン・ランドルフ。
ひげもじゃの面構えにて、そろそろ老境へと差し掛かる年齢にもかかわらず、肉体はいまだ衰え知らず。質実剛健を地で行く殿方。胸筋がぱっつんぱっつん。
宰相のダイクさんに劣らずの人望の厚さにて、これまた救出にあらわれたら、警備の兵はともかく、世話役の使用人の方々からはもろ手をあげての大歓迎。
いつ気まぐれにて処刑されてもおかしくない状況下で、周囲にやさしく出来るって、なんかスゴイとおもう。
宰相さんといい、リリアちゃんが頼りにするのもなんか納得。
そしてそんな人たちだからこそ、人質として利用されていたらしい。
でなければ、いくら勇者やボンクラ王子が中央の実権をにぎったからって、そうそう軍部や官僚を思い通りに動かせるわけがない。
なお救出の過程はダイクさんのときと似たり寄ったりだったので、ざっくり割愛。
そして感動の再会の後に、一同は今後の方針を話し合い。
「ワシはこれから本部に向かい、すぐに軍の掌握に努めよう」とゴードンさん。
「わたしは官庁に向かい、役人たちをまとめあげましょう」とダイクさん。
将軍と宰相はここにきて、ついに覚悟を決めた。
リリア姫を旗頭に掲げてのクーデターに乗り出すみたい。
話がまとまったところで、わたしは先に一人腰をあげる。
「では、そっちの手筈はお願いね。わたしは一足先に邪魔になりそうな勇者を始末しておくから」
女神から賜った超人兵器たる勇者。
これをあっさり片づけると口にしたわたしに、みながギョッとするも、それには構わずスタスタと歩きだす。
背後から届いたリリアちゃんの心配する声には、ひらひらと手をふっておいた。
都の中央に位置する王城。
砂ぼこりが舞う中、そこへと真っ直ぐにのびる道を歩くは、一人の女と青い目をしたビスクドール。
行く手を遮ろうとした兵士たちは、わたしの手の平型スタンガンで黙らせる。
なにせ兵士は国の財産だからね。民の貴重な税金が投入されている以上は、あまり無下にも扱えまい。
ゴロツキ風な輩はルーシーが手にしていたショットガンでズドンと昇天。
こちらは王子か勇者に金で雇われた下種っぽいので、べつに惜しくない。処理しちゃってもかまわないだろう。
「……それにしても、いつの間にそんな物騒な代物を」
「亜空間内部の製造プラントにて生産しました。リンネさまのレベルアップにともない、ワタシたちの所有する亜空間も拡張の一途を辿っており、せっかくのスペースを有効活用しようかと」
呆れ気味のわたしに、しれっと答えたルーシー。
知識チートな青い瞳のお人形さん。
多元群体化にともない、いまや数も膨大。その個体一つ一つがオリジナルと同等の機能を保有。もはや三人集まれば文殊の知恵どころの話ではない。
もともと宇宙戦艦「たまさぶろう」の内部には工作室があったらしく、まずはそちらにて最低限に必要な器具や機材を調達。おかげで容易にプラントの立ち上げまでにこぎつけられたとか。
おそらく彼女が手にしている武器なんて氷山の一角。
暴走する科学。
知識に罪はないものの、なぜだかどこぞより破滅の足音が聞こえてくるようだ。
これは一度、亜空間に査察に入るべきであろうか。
正面城門まわりに集結していた守備隊には、右手小指より噴出した笑気ガスをおみまいする。
兵士たちがケラケラと悶絶しているのを尻目に入城。
敵を適当に蹴散らしながら長い廊下を歩いていたら、柱の影にてプルプル震えている愛らしい給仕ボーイを発見。
お姉さんがやさしく声をかけたら、涙目にて奥の宮殿へと通じる道を教えてくれた。
宮殿は中庭を横断する渡り廊下を抜けた先にあるというので、そちらに向かう。
庭はかなり荒れていた。花なんてあらかた枯れており、元気なのは雑草ばかり。
家主の心が荒むと庭も荒れるというが、これはとっても哀しい景色。
わたしが庭に立ち、少しばかり乙女チックな想いに身をゆだねていると、宮殿の方から近寄って来る男の姿。
ひと目でわかった。
彼こそが勇者カズヒコ。この国をダメにした元凶。
どうやら異世界渡りの勇者同士は、相対すれば互いを認識できるようだ。
スラリとした長身のイケメン。ただし底意地の悪さが内より滲み出ている軽薄な笑顔が、最高に気持ち悪い。
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