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007 宙へ

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 ペカーッと謎の光の柱に包まれて、ふよふよ収納されて宇宙戦艦「たまさぶろう」に乗り込む。
 内部構造は、なぜかほのかに木が薫る和風建築だった。
 土足厳禁につき裸足でペタペタ歩く。足の裏の板の感触が冷や気持ちいい。
 潜水艦の内部みたいな狭く鉄々したのを想像していたのだが、ふつうに快適。
 で、艦内にはたくさんのビスクドールがウロウロしていた。
 どうやら各種細かい操船作業などは、彼女たちが担当してくれるみたい。

「ひょっとして、これもわたしのレベルが上がったから?」
「はい。たまさぶろうは宇宙戦艦化、ワタシは多元群体化、富士丸はロケットパンチが標準装備に」
「なんか富士丸だけショボくない?」
「ショボいだなんてとんでもない! 打ち出す角度を間違えたら、地殻を粉砕して大陸即沈没。その気になればコアをぶち抜いて星をも砕く破壊力ですよ。しかも左右同時に二発撃てます。交互にくり返したら即死級の無限コンボ」

 どうやら富士丸は格闘ゲームのハメキャラに進化したようだ。
 頼もしいかぎりである。

 ルーシーの説明を受けながら艦橋に到達。
 全方位がモニターとなっており、まるでガラス越しに外の世界を一望しているかのよう。
 圧巻の大パノラマにて、地上で醜く争っているのがウソのように、空はどこまでも青く澄んでいた。
 艦長席にてふんぞり返る。
 ふんわり包み込むかのような感触と手触りは、間違いなく、たまさぶろうのモノ。ひじ置きを撫でているだけで、なんだか楽しくなってくる。これはいいものだ。

「さて、とりあえずバックレるとして、どこに向かうかだよね」
「そうですね。ワタシとしましては、しばらく衛星軌道上にてとどまり、この世界の情報収集をしたいのですが」
「あー、情報操作がされてるってことは、そのアカシックレコードだっけ? もあまり鵜呑みにはできないと」
「はい。与えられた情報を信じるには、今回の女神イースクロアのなさりようは、あまりにも不可解なので」
「わかった、どのみちわたしにゃあチンプンカンプンだし、ルーシーの好きにしちゃってよ」
「了解しました。では」

 ルーシーの指示で人形たちが一斉に動き出し、これに合わせて宇宙戦艦が移動を開始。
 たまさぶろう、ぎゅんと急加速にてしばし直進。
 そこから直角に曲がって一気に上昇。
 あっという間に漆黒の宙へ。
 あまりにもあっさりしすぎて、感動もへちまもありゃしない。
 それでも見下ろす大地は涙が浮かぶほどに、壮大で美しくて、なのにどうして人はこんな素敵な場所で……。

『ビービービービー。敵影発見、迎撃準備へと移行します』

 感動に浸る暇もなく、無骨な警告音と艦内放送。

「さすがは異世界、宇宙にも敵がいるのか」

 そばに立っているルーシーにたずねたら「そうみたいですね」
 彼女も首をかしげているところからすると、例のデータベースにはのってないモノらしい。
 艦橋にある大型モニターに映し出されたのは、むき出しのでっかい脳みそに目玉が一つくっついたお化けみたいな醜怪な生物。

「なにあれ? どこからどうみても異星からの侵略エックスっぽいんだけど」
「さぁ、あいにくと記録にありませんので。ですが敵なのは間違いないみたいですよ。なにせ向こうは殺る気まんまんですから」

 ルーシーの言葉が終わるやいなや、相手の目が真っ赤に光って、ビームらしきものを放射。
 真っ直ぐにこちらへと向かってくる。
 毒々しい赤にて、触れたらジュワッと蒸発しちゃいそう。
 が、たまさぶろう、ぬるっとこれを回避。
 うちの子、フットワーク、超軽い。

「第一砲門、第二砲門、準備が整い次第、発射してください」

 三つ首にて一つの巨大な砲門。それが二門、音も無くスーッと動いて、ピタリと謎の巨大目玉に照準を合わせた。
 次の瞬間、ドカンと砲弾が射出される。弾もデカい。
 一発でもヤバそうなのが計六発。
 と、目玉お化けの正面に、まるで盾のような魔法陣が出現し展開された。
 いわゆる防御結界とかいうやつなのかも。バチバチと放電しながら青白く光るそれはバリアっぽくって、いかにも強固そう。
 なのに砲弾が当たったとたんに、パリンとあっさり割れて砕けた。
 そしてそのまま貫通してすべて命中。
 着弾と同時に眩い小太陽が宇宙空間に生まれる。

「……えーと、ひょっとして核っぽいヤツとかだったりとか、しちゃったり、する?」

 おずおずと訊いたら、ちがうとの答え。
 さすがにアレはないからと、ほっとしたのも束の間。
 ルーシーさんが「あれは水素爆弾っぽいヤツです。理論上、無限の破壊エネルギーを生み出すそうで。これに比べたら核っぽいヤツなんてオモチャですよ」なんてことを言いやがった。
 あぁ、もちろん目玉のお化けは即消滅ですよ。
 やっぱり地球人類バカだろう! よくもこんなイカれた兵器を開発しやがったな! 絶対に阿呆だ! いったい何を考えていやがる!
 もしもタイムマシンがあったら、わたしは過去にさかのぼって絶対に開発を止めさせるね。
 そしてまたぞろはじまったのは、頭の中でキンコンと鳴り響く、あの音。

「あら、なんだかスゴイ敵だったみたいですね。レベルが魔王を倒したときのようにガンガン上がっていますよ。てっきりカンスト間近かと思っていたのですが、どうやらワタシの勘違いだったみたいです。健康スキルのおかげで、限界突破の天井知らずのようですね。おめでとうございます、リンネさま」

 ルーシーはお祝いの言葉を口にするけど、これって本当に目出度いのかな?


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