神造小娘ヨーコがゆく!

月芝

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35 二人の騎士その1

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「あのヒト、かっこよくない?」
「私は右の騎士さまかな。硬派な雰囲気に男の色気を感じる」
「相変わらずの渋好みよね。わたしはあっちの長髪の彼かな」
「女性騎士のお姉さま、凛々しくてステキ」
「ねぇねぇ、ヨーコちゃんはどれが好み?」
「私は……、あの紅い機体がいいかなぁ。でもあっちの黒銀のやつも捨てがたい」

 女が集まれば姦しいとは言うけれども、それが女学生ともなれば尚更である。微妙に会話が噛み合っていないのはご愛敬。なにせ注目しているポイントが違うのだからしようがあるまい。
 本日はラマンダさんが院長を務める寄宿舎学校の社会科見学に、私も同行している。参加はラマンダさんからの教育的指導。「たまにと若い子らとも接したほうがいいでしょう」とのこと。交友関係が大人ばかりに偏っているのを危惧されたようだ。

 見学先は騎士団主催による公開演習が行われている会場。定期的に行われている一般向けのイベント。日頃はなかなか接する機会のない騎士や魔甲騎兵に触れられるとあって、来場者の姿は多い。
 催事のために磨き込まれた機体がズラリと並ぶ。
 身綺麗にした騎士たちが客たちの応対をしている。普段は見ることのできない操縦席とかを見せてもらえたり、相乗りして軽く動いてくれるコーナーなんかもあって、会場内はかなり賑わっていた。午後からは摸擬戦もあるそうなので、とっても楽しみ。
 で、学校の女生徒らと一緒に来たまではよかったのだが、なにせ彼女たちはイケメン騎士の探索に忙しい。いい男ありと聞けば東へ西へと突撃するので、あっという間にはぐれてしまった。
 どうしたものかとキョロキョロしていたら、声をかけられる。

「どうかしましたか、お嬢さん」

 声の主は赤い髪が腰までのびた、凛々しい女性騎士であった。
 レプラと名乗った騎士が流れるような動作にて片膝をつくと、視線の高さを私の目線に合わせる。切れ長な目がキツメな印象を与える女性だが、かなりの美人さん。
 間近に見つめられると、同性ながらもドキドキしてしまう。
 容姿もさることながら……、彼女は強い。
 甲冑を着て腰に剣を差しているのにもかかわらず、一連の動きの最中に微かな物音すらも立てなかった。しなやかでいて強靭な四肢がなければ不可能なワザ。豹とかパンサーとかいうカッコイイ系の肉食獣を連想させる。同じ猫科だというのに、私の黒猫の着ぐるみ姿とは大違い。
 つい心が卑屈になって、オドオドとした態度をとってしまう。
 すると、何故だかレプラの頬がぽっと朱に染まる。
 思わず小首を傾げると、ついと顔を逸らされた。
 はて?

 こんなやりとりをしていたら、一緒に来ていた女学生らが姿を現す。途中でハグレて迷子になった私を探しにきてくれたみたい。
 彼女たちに合流して、バイバイと女騎士に別れを告げると、何故だかもの凄く残念そうな顔をされた。
 うーん、わからん。もしかして迷子のお世話でもしたかったのかな。見た目に反して子供好きとか。

 今度はハグレないようにと、左右の手をつながれて、方々を連れ歩かれる。
 特殊機関に捕まった宇宙人の図のような格好にて会場内をぶらり。
 それは、まあ、いいのだが、各々が別方向にイイ男を見つけては、欲望の赴くままに動くのは勘弁して欲しい。そのたびに肩や肩甲骨まわりの関節がヘンな音を立てるし、体のもろもろがちょっと痛い。
 そんな風にきゃきゃうふふと騒いでいたら、一人の騎士がツカツカと近寄って来た。
 黒の短髪の偉丈夫。自分に厳しく他人にも厳しい、かもしれない風の爽やかイケメン。鋭い眼光がこちらをしっかりと捉えている。
 周りの迷惑も考えずに、ちょっとはしゃぎ過ぎたか。
 てっきり注意でもされるのかと、みなで恐縮していたら、さにあらん。

「ついに見つけた、僕の女神。どうか僕の伴侶になって欲しい」

 一行の前にて膝まづき、いきなり求婚を始める黒髪のイケメン騎士。
 まさかのドキラブ展開! これには一同のみならず周囲が騒然となった。


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