71 / 101
71 獅子身中の虫
しおりを挟む
わずか五日、王子の身辺警護中に、二度ほど奇禍に見舞われました。
一度目は私がお供で城内のお庭を歩いていたら、頭上から植木鉢が! とっさに王子を蹴飛ばして事なきを得ました。おかげで王子は腰の打撲だけで軽傷です。
二度目は寝室にて毒を持つ蟲が出たので、セラーさんが滅却処分をしました。おかげで部屋の中はスッキリ、さっぱり。もちろん王子は無事です。家具類はすべて駄目になりましたが、これも尊い犠牲でしょう。
だというのに、後でお付きのメイドさんに、グチグチとお小言を頂戴しました。「仕事が雑すぎる」とのことです。
見周りと称して城内を散策していると、貴族たちの逢引き現場に遭遇しました。もちろん、野暮な真似なんてしませんよ。じーっとしばらく見つめてから、無言で立ち去ろうとしたら、何故だか金貨が詰まった袋を強引に手渡されてしまいました。べつにそんなことをしなくても誰にも話しませんよと言ったのですが、是非にとのことなので、ありがたく懐に入れました。
なおも散策を続けていると、今度は物陰にてヒソヒソと話す男女の声が……。
またもや逢引き現場か? と思ったのでこっそりと覗いてみると、何やら様子がヘンです。頭からフードつきのマントを被った男が、若いメイドさんに詰め寄っています。
「やるんだ、弟さんを助けたいんだろう?」
「無理です、そんなこと出来ません」
二人の会話を盗み聞きしていると、どうやらメイドさんの弟さんがご病気で、多額の治療費が必要らしい。ですがそんなお金はすぐに工面できない。そこにつけ込んで男が何か悪い事をさせようとしている。
ピンときた私は、物陰より踊り出て、男に向かって銃を乱射。
激しい銃声が轟き、ゴム弾と麻痺弾をポコポコ受けて、フード男は悶絶。
騒ぎを聞きつけてやってきた騎士たちに、「なんか怪しいから、とりあえず厳しく取り調べておいて」と言って丸投げします。ただし、訳ありメイドさんの身柄はこちらで預かりました。そして彼女から事の経緯を説明してもらうと、あの男から王子の食事に毒を盛るようにと、持ちかけられていたことが判明しました。
冴えわたる私の勘、どうやらアイツは真っ黒だったようです。
このメイドさんには正式に証言を頼み、そのお礼と忠義の褒美として、先ほど手に入れた金貨の詰まった袋を渡しておきました。これで弟さんを治してやるがよいです。
こんな感じで未然に陰謀を一つ潰して、王子の下に戻ると、お付きのメイドさんに「護衛がフラフラと出歩くな」と怒られてしまいました。裏でしっかりお仕事をしていたと説明したのですが、まったく信じてもらえませんでした、何故?
捕まえた男は口が堅く、何も話そうとしません。
せっかくの情報源を前にして、指を咥えているだけの城の人間たち。
業を煮やしたセラーさんが、ちょちょいと闇の技術を使って、さくっと白状させました。口を割らせた方法の詳細は怖いので聞いていません。
判明する地下組織、芋ずる式に掴まっていく獅子身中の虫たち。連中の毒牙は、かなり城内の奥深くにまで浸透しており、王族らの一歩手前にまで伸びておりました。危く手遅れになるところでしたよ。ですが此度のことで城内からは、とりあえず敵勢力を一掃することに成功します。スッキリしたおかげで、城内の人事担当が穴埋めに悲鳴を上げていますが、それは私の預かり知らぬこと。
なお、この大掃除の手柄は、すべて王様の手腕ということにしておきました。こうでもしないと求心力の低下は避けられませんから、ひいては王子にも火の粉が及びそうですしね。
あとは城外で蠢いている害虫どもを始末すれば、私の任務も完了です。
一度目は私がお供で城内のお庭を歩いていたら、頭上から植木鉢が! とっさに王子を蹴飛ばして事なきを得ました。おかげで王子は腰の打撲だけで軽傷です。
二度目は寝室にて毒を持つ蟲が出たので、セラーさんが滅却処分をしました。おかげで部屋の中はスッキリ、さっぱり。もちろん王子は無事です。家具類はすべて駄目になりましたが、これも尊い犠牲でしょう。
だというのに、後でお付きのメイドさんに、グチグチとお小言を頂戴しました。「仕事が雑すぎる」とのことです。
見周りと称して城内を散策していると、貴族たちの逢引き現場に遭遇しました。もちろん、野暮な真似なんてしませんよ。じーっとしばらく見つめてから、無言で立ち去ろうとしたら、何故だか金貨が詰まった袋を強引に手渡されてしまいました。べつにそんなことをしなくても誰にも話しませんよと言ったのですが、是非にとのことなので、ありがたく懐に入れました。
なおも散策を続けていると、今度は物陰にてヒソヒソと話す男女の声が……。
またもや逢引き現場か? と思ったのでこっそりと覗いてみると、何やら様子がヘンです。頭からフードつきのマントを被った男が、若いメイドさんに詰め寄っています。
「やるんだ、弟さんを助けたいんだろう?」
「無理です、そんなこと出来ません」
二人の会話を盗み聞きしていると、どうやらメイドさんの弟さんがご病気で、多額の治療費が必要らしい。ですがそんなお金はすぐに工面できない。そこにつけ込んで男が何か悪い事をさせようとしている。
ピンときた私は、物陰より踊り出て、男に向かって銃を乱射。
激しい銃声が轟き、ゴム弾と麻痺弾をポコポコ受けて、フード男は悶絶。
騒ぎを聞きつけてやってきた騎士たちに、「なんか怪しいから、とりあえず厳しく取り調べておいて」と言って丸投げします。ただし、訳ありメイドさんの身柄はこちらで預かりました。そして彼女から事の経緯を説明してもらうと、あの男から王子の食事に毒を盛るようにと、持ちかけられていたことが判明しました。
冴えわたる私の勘、どうやらアイツは真っ黒だったようです。
このメイドさんには正式に証言を頼み、そのお礼と忠義の褒美として、先ほど手に入れた金貨の詰まった袋を渡しておきました。これで弟さんを治してやるがよいです。
こんな感じで未然に陰謀を一つ潰して、王子の下に戻ると、お付きのメイドさんに「護衛がフラフラと出歩くな」と怒られてしまいました。裏でしっかりお仕事をしていたと説明したのですが、まったく信じてもらえませんでした、何故?
捕まえた男は口が堅く、何も話そうとしません。
せっかくの情報源を前にして、指を咥えているだけの城の人間たち。
業を煮やしたセラーさんが、ちょちょいと闇の技術を使って、さくっと白状させました。口を割らせた方法の詳細は怖いので聞いていません。
判明する地下組織、芋ずる式に掴まっていく獅子身中の虫たち。連中の毒牙は、かなり城内の奥深くにまで浸透しており、王族らの一歩手前にまで伸びておりました。危く手遅れになるところでしたよ。ですが此度のことで城内からは、とりあえず敵勢力を一掃することに成功します。スッキリしたおかげで、城内の人事担当が穴埋めに悲鳴を上げていますが、それは私の預かり知らぬこと。
なお、この大掃除の手柄は、すべて王様の手腕ということにしておきました。こうでもしないと求心力の低下は避けられませんから、ひいては王子にも火の粉が及びそうですしね。
あとは城外で蠢いている害虫どもを始末すれば、私の任務も完了です。
4
お気に入りに追加
1,643
あなたにおすすめの小説
御者のお仕事。
月芝
ファンタジー
大陸中を巻き込んだ戦争がようやく終わった。
十三あった国のうち四つが地図より消えた。
大地のいたるところに戦争の傷跡が深く刻まれ、人心は荒廃し、文明もずいぶんと退化する。
狂った環境に乱れた生態系。戦時中にバラ撒かれた生体兵器「慮骸」の脅威がそこいらに充ち、
問題山積につき夢にまでみた平和とはほど遠いのが実情。
それでも人々はたくましく、復興へと向けて歩き出す。
これはそんな歪んだ世界で人流と物流の担い手として奮闘する御者の男の物語である。
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!
隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。
※三章からバトル多めです。
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
星の勇者たち でも三十九番目だけ、なんかヘン!
月芝
ファンタジー
来たる災厄に対抗すべく異世界に召喚された勇者たち。
その数、三十九人。
そこは剣と魔法とスチームパンクの世界にて、
ファンタジー、きたーっ!
と喜んだのも束の間、なんと勇者なのに魔法が使えないだと?
でも安心して下さい。
代わりといってはなんですが、転移特典にて星のチカラが宿ってる。
他にも恩恵で言語能力やら、身体強化などもついている。
そのチカラで魔法みたいなことが可能にて、チートで俺ツエーも夢じゃない。
はずなのだが、三十九番目の主人公だけ、とんだポンコツだった。
授かったのは「なんじゃコレ?」という、がっかりスキル。
試しに使ってみれば、手の中にあらわれたのはカリカリ梅にて、えぇーっ!
本来であれば強化されているはずの体力面では、現地の子どもにも劣る虚弱体質。
ただの高校生の男子にて、学校での成績は中の下ぐらい。
特別な知識も技能もありゃしない。
おまけに言語翻訳機能もバグっているから、会話はこなせるけれども、
文字の読み書きがまるでダメときたもんだ。
そのせいで星クズ判定にて即戦力外通告をされ、島流しの憂き目に……。
異世界Q&A
えっ、魔法の無詠唱?
そんなの当たり前じゃん。
っていうか、そもそも星の勇者たちはスキル以外は使えないし、残念!
えっ、唐揚げにポテトチップスにラーメンやカレーで食革命?
いやいや、ふつうに揚げ物類は昔からあるから。スイーツ類も充実している。
異世界の食文化を舐めんなよ。あと米もあるから心配するな。
えっ、アイデアグッズで一攫千金? 知識チート?
あー、それもちょっと厳しいかな。たいていの品は便利な魔道具があるから。
なにせギガラニカってば魔法とスチームパンクが融合した超高度文明だし。
えっ、ならばチートスキルで無双する?
それは……出来なくはない。けど、いきなりはちょっと無理かなぁ。
神さまからもらったチカラも鍛えないと育たないし、実践ではまるで役に立たないもの。
ゲームやアニメとは違うから。
というか、ぶっちゃけ浮かれて調子に乗っていたら、わりとすぐに死ぬよ。マジで。
それから死に戻りとか、復活の呪文なんてないから。
一発退場なので、そこんところよろしく。
「異世界の片隅で引き篭りたい少女。」の正統系譜。
こんなスキルで異世界転移はイヤだ!シリーズの第二弾。
ないない尽くしの異世界転移。
環境問題にも一石を投じる……かもしれない、笑撃の問題作。
星クズの勇者の明日はどっちだ。
婚約破棄からの断罪カウンター
F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。
理論ではなく力押しのカウンター攻撃
効果は抜群か…?
(すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる