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813 とおせんぼ
しおりを挟むどこぞよりびゅーんと飛んできては、いきなり船体に衝突してドカンと風穴を開けた大桃。
これに続くようにして飛来した所属不明のヘリコプター。
機体より幾人もの女たちが宙へと踊り出たとおもったら、いきなり激しい破壊音がして、ヘリポートに停めてあった自分らのヘリコプターが海に転げ落ちた。
あわてて甲板にいた見張りらが銃を手に対処しようとするも、逆に次々と撃たれて行動不能に追い込まれる。
警戒はしていたものの、よもや沖合でこんな理不尽な襲撃を受けるだなんて……。
愛葉会所有の大型タンカーは上を下への大騒ぎとなった。
混乱に乗じてまんまと船内に侵入を果たそうとする芽衣たち。
しかしその行く手を阻んだのが湧いてきた敵勢。まるで巣から列をなして地上へとあらわれるアリのように、ぞろぞろ、わらわら。
ただの有象無象ではない。首魁のお膝元を守るだけあって、相応に訓練された者たち。しかも忠誠心もずば抜けており、狂信者中の狂信者どもで固められている集団。会の教義と信仰にとり憑かれた、恐れを知らぬ死兵ども。けれどもそれゆえに退くことを知らないからやっかいだ。
「邪魔っ!」
殺到する先頭集団に、おれが化けた鉄パイプ片手に飛び膝蹴りをかましたタヌキ娘。ボーリングのピンのごとく蹴散らす。だが、すぐさま進路上に別の者らが立ち塞がってくるもので、なかなか船内へと通じる入り口扉に近寄れない。
するとそんな芽衣の脇を一陣の風が駆け抜ける。
出灰桔梗であった。
「ここは私が」
とキツネ娘。先行しタンっと高らかに跳ねたかとおもえば、ひらりと舞い降りたのは進路上にいた敵兵のうちのひとりの肩の上。まるで重さを感じさせないもので、乗られた相手が「えっ」と呆け顔となる。
それににこりと笑みを返した黒髪の美少女。
直後に黒髪がひるがえり、微笑まれた相手の身が飛んだ。桔梗が容赦なく顔面を蹴り飛ばしたのである。
これを皮切りにして、まるで庭園の飛び石をちょんちょんと渡るかのようにして、敵から敵へと宙を舞っては、そのつど足場とした相手を打ち倒していく。
黒髪をはためかしながら、宙を行く出灰桔梗。
たちまち敵勢が斬り裂かれ、ひと筋の道があらわれる。
おかげで労せずして、芽衣と白妙幸は入り口扉へと到着することができた。
けれども二人を先に行かせたところで、出灰桔梗はあとに続かず。
入り口扉を背にしてのとおせんぼ。
「しばしこちらは通行止めとさせていただきます。ご容赦のほどを」
◇
船内へと入った芽衣たち。
しかし内部は薄暗く、通路は狭く、複雑に入り組んでおり、まるで迷路のよう。客船のように親切な案内板もなし。
なのに芽衣はためらうことなく走りだした。
「おいおい、そんなに闇雲に突っ走って大丈夫なのかよ」
案ずる白妙幸に、芽衣は「大丈夫!」と自信ありげ。「だって、とっても美味しそうな桃のニオイがするもの」と鼻をくんくん。
漂ってくるそれを辿れば伯魅のところに行けるはず。
おもわぬところで役に立ったタヌキ娘の食い意地。それを頼りに一行は突き進む。
そうして辿り着いたのはエレベーターホール。
すぐ脇には螺旋階段もある。
さてどっちを使おうかという相談をする間もなく、ちーんと到着したのはエレベーター。
扉が開くなり、中からぞろぞろ敵を吐き出そうとしたもので、あわてて最前列にいた相手にラリアットをかましたのは白妙幸。「おらーっ!」とまとめて箱の中へと押し戻す。
それを横目に操作パネルにとりついた芽衣が、適当なボタンを連打してどこぞの階に強制送還する。
「エレベーターはダメみたいだね」
「だな」
ふたりはうなづき合い、すぐさま階段の方へと足を向けた。
けれども順当に降りれたのは、わずか一階分のみ。
どうやら適当にボタンを押したのがよくなかったらしい。
よりにもよってすぐ下の階で止まったエレベーター。せっかく強制送還したのに、またぞろ敵を吐き出すことになる!
加えて同フロアからの敵の増援もあって、たちまち現場はぎゅうぎゅう詰めに。
これでは満足に戦えない。そう判断した芽衣たちは、すぐさま駆け出し、どこか開けた場所はないかと探す。
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