寄宿生物カネコ!

月芝

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023 カネコ、大人の事情を知る。

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 拘束されたとおもったら、突然の釈放。
 せめて昼メシをごちそうになってからと粘るもダメだった。よってたかって引きずられて、詰所から追い出された。

 ぐ~~~~。

 ワガハイはすきっ腹を抱えて、トボトボと冒険者ギルドに向かった。
 だって前回の依頼完了の手続きをまだしていないもの。
 いろいろ不幸なすれちがいはあったけど。
 それはそれである。貰えるモノはしっかり貰う。

 お昼前のギルドは閑散としていた。
 七つある受付カウンター、うち六つが閉じている。食事休憩か?
 全部閉めていないだけ良心的だが、唯一開いているところに居る人物が問題だった。
 入道頭のおっさん。

「またかにゃん。いい加減にあきあきだにゃあ。デキればかわいい受付嬢と変わってほしいにゃあ」
「……それはこっちの台詞だ。あと期待させるのも何だから先に言っておくぞ。
 うちにかわいい受付嬢なんてもんはいない。解体場の方になら、ごついおばはんがいるけどな。ほら、いいから、とっととカードを出せ」

 なんて世知辛い、夢も希望もありゃしない。
 ワガハイ、がっくし。
 言われるままにギルドカードを出すと、おっさんは手続きする。
 その作業がてら、ワガハイが「いきなり釈放されて、昼メシをたかりそこねたにゃあ」とぼやけば、おっさんは手を止め言った。

「あー、それかぁ。なんでも上の方でけっこう揉めたって聞いたぞ」

 ここだけの話との前置きにて、おっさんはこしょっこしょ。

  〇

 シシガシラっぽいけど、シシガシラじゃない?

 突如として城塞都市トライミングにあらわれたナゾの怪生物。
 人語を介し、意思の疎通もデキるし、暴れる風でもないからいちおう受け入れてはみたものの。
 さっそくトラブルを起こしやがった!
 で、とっ捕まえてよくよく調べてみたら、あらあら、これは早とちりだったかも。

 なんだかんだで冒険者ギルドに登録して、コツコツ働いているようだし。
 だったら、すぐに無罪放免となるところ。
 そうはならなかったのは、相手が寄宿生物カネコとかいうふざけた存在にて、幻の種族が過ぎてちっとも記録がなく、そのくせムダに超絶ハイスペックだったから。
 城門のところやギルドにあるレジメ板なる水晶版にて、魂レベルから個人情報がぶっこ抜けるので、もろもろがとっくに上層部にバレている。

「えっ、なにこの数値、ヤバくないコイツ……。あれ、ひょっとしてうち終わった?」

 都市で一番えらい人――領主さま――は、レジメ板を通してあがってきたトンデモデータに頭を抱えた。

「あぁ、よりにもよってどうして今なんだ。あと二年ほどで任期が明けるというのに」

 嘆く領主さま。なお領主は役職にて、王さまから任命されて赴任するものである。
 すると、ある部下は言った。

「ガハハハハ、そんな不穏分子なんぞは即刻排除すべし!」

 でも、べつの部下はそれを否定した。

「バカなの? 脳みそまで筋肉なの? せっかくおとなしくしてくれているのに、わざわざ怒らせてどうするの」

 そうしたら、またべつの部下が私見を述べた。

「やるなとは言わん。だが、そのまえにこの辞表を受理してからにしてもらおうか。なお退職金と未払いの給金はすぐに振り込んでくれたまえ」

 都市の上層部は紛糾した。
 そして上が決めなければ、下は動きようがない。
 これがワガハイが三日も拘束されていた理由である。
 それが一転して釈放となったのは、ある方の英断だという。
 会議室にこもって、ちっとも出てこない殿方たちを心配して、様子を見に来た領主の奥方が言った。

「みなさんってば本当にマジメなんだから。その子、とりあえず害はないんでしょう? だったら適当に放っておいたらいいのよ。そのうち飽きたら勝手に出ていくでしょうよ」

 雀の千声鶴の一声。
 かくしてカネコへの方針は決まった。

  〇

 うん、なんとなくそんな気はしていた。
 個人情報だだ漏れである。
 受付のおっさんから大人の事情とやらを聞かされて、ワガハイは「へー」
 お腹がぐ~ぐ~鳴った。


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