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#7 人類保護連盟
#7ー9 根回し
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翌日。俺達は事務所から少し離れた場所にある、ショッピングモールに来ている。遊ぶのが半分、作戦会議が半分だ。
「八神君のお友達と遊べるなんて嬉しいな~」
「友達じゃないわ」
「はは。僕も楽しいな」
「八神くん、次はフードコートだ」
「まだ食べる気ですか?」
「僕もそろそろ止めた方が良いと思うよ」
面子は、俺、先生、七海さん、春日部さん、誠君、神サマだ。この面子は全員、今度行われる、春日部家潜入調査に参加するメンバーである。
俺達は昼前のフードコートで、奇跡的に空いていた丁度良い席に座ると、作戦会議を始めた。
「で、それぞれは何を担当すれば良いのかしら?」
「春日部さんと誠君は結婚式のメイン、先生と七海さんはそこに参列してください。一応、来れそうな金剛級や、白金級の中で、親しい人も呼んでくれると嬉しいですね。俺と神サマは、その隙に潜入します」
「結局、これしか無いしね……仕方無いね……」
誠君は明後日の方向を見ている。そんなに嫌か?半分強要するような形になってしまったのは申し訳無いが、当日もこんな様子では、少し不安だ。
「見張りは居ると思うが、どうするんだ?八神くん」
「居たとしても、春日部さんの許可一つで、どうとでもなります。ああでもそう考えると、家の間取りも知りたいですね。お願いできるかな?」
「問題無いわ」
まあ、結婚式自体は普通に行ってもらえればそれで良い。失敗するとしたら、俺の方だろう。春日部さんも知らない場所があって、万が一そこに見張りが居る上、一本道だったら、正直手の打ち様が無い。もし強行突破しようとしたら、吊るされるのは俺の方だ。まあそれも、間取りを見てからか。
色々話し合った末、もう何も問題は無いかという所で、七海さんが口を開いた。
「そう言えば、ご祝儀は?」
「「「「「あ」」」」」
そうだった。そこにも金が要るんだった。いくら送れば良いのかとか知らないぞ俺は。
その言葉を聞いた春日部さんは、余裕たっぷりな顔で笑った。
「そうね~偽装とは言え結婚するんだものね~……当然、払ってもらえるのよね?何せ、提案したのは八神、貴方なんですものね~」
「はあ……分かったよ。貯金いくらあったかな……」
『余計な事を』とは言わないが、正直この場に居た全員が忘れていた事でもあった。いやまあ、絶対払うべき物ではあるんだけどさ。
俺達はその後、比較的年が近い人間同士、色々巡ったり、遊んだりして過ごした。服屋でかなりの時間を取ったのは以外だったが、楽しかったので良しとする。
誠君達と別れた後、俺達は事務所に帰る途中、先生が話を切り出した。
「八神くん、当日は大丈夫そうなのかい?」
「変装は少し不慣れですけど、それ以外に障害がありそうな所はありませんでしたよ」
「僕も居るしね」
俺は当日、体調を崩して、結婚式には招待されたが、止む無く欠席するという筋書きになっている。念の為、変装する事で正体を隠し、潜入する予定だ。神サマの補助で、霊力の波長を変えて、霊力から俺だと特定されないようにした上で、変装すれば、多分行けるだろう。
しかし、先生が言っているのはその事ではなかったようだ。
「もしバレたら、君は相当な弱みを握られる事になる。君の事を面白く思わない連中に、この事がバレたら……」
「大丈夫だって咲良さん!あの人達も私達も、誰かに情報を漏らすような人じゃないし、盗聴の対策もした。大丈夫だよ」
七海さんがすかさずフォローしたが、先生はそれでも不安なようだった。俺は先生の背中に手を当て、そのまま少し撫でた。
「大丈夫ですよ。もし失敗しても、最悪俺が蒸発すれば済む話です。まあ、俺もそれは避けたいんですけどね」
「僕は神様だよ?そんな心配しなくても、お兄ちゃんは守るよ」
この言葉で、先生も少しは安心してくれたようだ。いつもと同じ声で、「分かった。なら、こっちも頑張るよ」と言ってくれた。
考える事が山積みだ。変装に、偽装した身分証、調べるルートに、術式を使う場所、見つかった時の言い訳、一本道に見張りが居た時の対処法まで考える必要がある。見張りが居る確率は低いが、考えない訳にも行かない。なにせでかい家だ。空き巣対策もしっかりしてある事だろう。
この作戦で、最も重要であると共に、最も失敗する確率が高いのが俺達の役割だ。俺が失敗すれば、計画の全てがパアだ。誠君達の覚悟も、用意した作戦と書類も、何より俺達が渡すであろうご祝儀も無駄になる。そうなってしまえば、色々と面倒な事になる。それだけは避けたい。
「にしても、八神君の仕事って何なの?昨晩も出掛けてたし……咲良さんのご実家に雇われてるんだよね?」
「先生のお世話役兼お目付け役として、岩戸家当主、真司さんに雇われてるんです。昨晩のは……まあ、岩戸家関連の副業のような物です。守秘義務があるので、七海さ」
「お姉ちゃん」
「……お姉ちゃんには言えませんね」
やっぱりこの人はブレないな。話遮ってまで言う事なのかコレは。
俺にとって、副業の事は隠す程の事でもない。ただ、守秘義務がある以上守らなければ。先生は反対してるが、コレは結構良い収入になるのだ。辞める訳には行かない。
七海さんは「えーケチー」とか言いながらも、それ以上食い下がる事は無かった。俺達はその後、他愛も無い話をしながら、事務所に帰った。
「八神君のお友達と遊べるなんて嬉しいな~」
「友達じゃないわ」
「はは。僕も楽しいな」
「八神くん、次はフードコートだ」
「まだ食べる気ですか?」
「僕もそろそろ止めた方が良いと思うよ」
面子は、俺、先生、七海さん、春日部さん、誠君、神サマだ。この面子は全員、今度行われる、春日部家潜入調査に参加するメンバーである。
俺達は昼前のフードコートで、奇跡的に空いていた丁度良い席に座ると、作戦会議を始めた。
「で、それぞれは何を担当すれば良いのかしら?」
「春日部さんと誠君は結婚式のメイン、先生と七海さんはそこに参列してください。一応、来れそうな金剛級や、白金級の中で、親しい人も呼んでくれると嬉しいですね。俺と神サマは、その隙に潜入します」
「結局、これしか無いしね……仕方無いね……」
誠君は明後日の方向を見ている。そんなに嫌か?半分強要するような形になってしまったのは申し訳無いが、当日もこんな様子では、少し不安だ。
「見張りは居ると思うが、どうするんだ?八神くん」
「居たとしても、春日部さんの許可一つで、どうとでもなります。ああでもそう考えると、家の間取りも知りたいですね。お願いできるかな?」
「問題無いわ」
まあ、結婚式自体は普通に行ってもらえればそれで良い。失敗するとしたら、俺の方だろう。春日部さんも知らない場所があって、万が一そこに見張りが居る上、一本道だったら、正直手の打ち様が無い。もし強行突破しようとしたら、吊るされるのは俺の方だ。まあそれも、間取りを見てからか。
色々話し合った末、もう何も問題は無いかという所で、七海さんが口を開いた。
「そう言えば、ご祝儀は?」
「「「「「あ」」」」」
そうだった。そこにも金が要るんだった。いくら送れば良いのかとか知らないぞ俺は。
その言葉を聞いた春日部さんは、余裕たっぷりな顔で笑った。
「そうね~偽装とは言え結婚するんだものね~……当然、払ってもらえるのよね?何せ、提案したのは八神、貴方なんですものね~」
「はあ……分かったよ。貯金いくらあったかな……」
『余計な事を』とは言わないが、正直この場に居た全員が忘れていた事でもあった。いやまあ、絶対払うべき物ではあるんだけどさ。
俺達はその後、比較的年が近い人間同士、色々巡ったり、遊んだりして過ごした。服屋でかなりの時間を取ったのは以外だったが、楽しかったので良しとする。
誠君達と別れた後、俺達は事務所に帰る途中、先生が話を切り出した。
「八神くん、当日は大丈夫そうなのかい?」
「変装は少し不慣れですけど、それ以外に障害がありそうな所はありませんでしたよ」
「僕も居るしね」
俺は当日、体調を崩して、結婚式には招待されたが、止む無く欠席するという筋書きになっている。念の為、変装する事で正体を隠し、潜入する予定だ。神サマの補助で、霊力の波長を変えて、霊力から俺だと特定されないようにした上で、変装すれば、多分行けるだろう。
しかし、先生が言っているのはその事ではなかったようだ。
「もしバレたら、君は相当な弱みを握られる事になる。君の事を面白く思わない連中に、この事がバレたら……」
「大丈夫だって咲良さん!あの人達も私達も、誰かに情報を漏らすような人じゃないし、盗聴の対策もした。大丈夫だよ」
七海さんがすかさずフォローしたが、先生はそれでも不安なようだった。俺は先生の背中に手を当て、そのまま少し撫でた。
「大丈夫ですよ。もし失敗しても、最悪俺が蒸発すれば済む話です。まあ、俺もそれは避けたいんですけどね」
「僕は神様だよ?そんな心配しなくても、お兄ちゃんは守るよ」
この言葉で、先生も少しは安心してくれたようだ。いつもと同じ声で、「分かった。なら、こっちも頑張るよ」と言ってくれた。
考える事が山積みだ。変装に、偽装した身分証、調べるルートに、術式を使う場所、見つかった時の言い訳、一本道に見張りが居た時の対処法まで考える必要がある。見張りが居る確率は低いが、考えない訳にも行かない。なにせでかい家だ。空き巣対策もしっかりしてある事だろう。
この作戦で、最も重要であると共に、最も失敗する確率が高いのが俺達の役割だ。俺が失敗すれば、計画の全てがパアだ。誠君達の覚悟も、用意した作戦と書類も、何より俺達が渡すであろうご祝儀も無駄になる。そうなってしまえば、色々と面倒な事になる。それだけは避けたい。
「にしても、八神君の仕事って何なの?昨晩も出掛けてたし……咲良さんのご実家に雇われてるんだよね?」
「先生のお世話役兼お目付け役として、岩戸家当主、真司さんに雇われてるんです。昨晩のは……まあ、岩戸家関連の副業のような物です。守秘義務があるので、七海さ」
「お姉ちゃん」
「……お姉ちゃんには言えませんね」
やっぱりこの人はブレないな。話遮ってまで言う事なのかコレは。
俺にとって、副業の事は隠す程の事でもない。ただ、守秘義務がある以上守らなければ。先生は反対してるが、コレは結構良い収入になるのだ。辞める訳には行かない。
七海さんは「えーケチー」とか言いながらも、それ以上食い下がる事は無かった。俺達はその後、他愛も無い話をしながら、事務所に帰った。
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