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第八話 湖の竜 ~チャプター1~
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ラミアの里での騒動から数日。
メルがパーティに残り冒険者を続けるということで、俺たちはルクスの町に戻り、いつものようにクエストに明け暮れていた。
そんなある日、いつものようにギルドに行くと、これまたいつものようにノーラ姫が待ち受けていた。
「待ってたわ。よく来たわね。」
「……クエスト無いみたいだし、今日は休みにすっか。」
「待ちなさい。」
ノーラ姫は逃げようとした俺の首根をつかむ。
「お休みなら丁度いいわ。」
「何なんすか…?」
「ウチの別荘でバケーションしてかない?」
いきなり逆ナンしてきたよこの姫。
「俺らこれからクエストで忙しいんですけど?」
「さっき休みにするって言ったわよね?ダブスタにも程があるわよ。」
「私、姫様ん家行きたい~!」
メルはノーラ姫と仲いいし行きたがるのも無理はない。
リーナの方は―――
「ま、まぁ、ユウヤ…が、クエスト行きたい、って言うなら…」
なんかめっちゃ行きたそうにしてる…
「安心なさい。これはクエストも兼ねてるから。」
「またパシリですか…?」
「違うけど、そんなにアタシに奉仕したいならやぶさかでもないわよ。」
「勘弁してくだせぇ。」
「…まぁ詳しいことは行きながら話すわ。」
俺たちは外に停めてあったノーラ姫の馬車のもとまで行くと、マリークレアさんがいつでも出せるよう待機していた。
そして俺が車内に乗り込もうとすると―――
「待ちなさい。車内は男子禁制よ。」
と乗車を断られてしまった。どうしろと。
「ユウヤ様。こちらへどうぞ。」
俺はマリークレアさんと御者台でご一緒することになった。
***
「八つ首の邪竜?」
俺は道中、マリークレアさんからクエストについて話を聞いていた。
「はい。ここ数日、アシア湖にて目撃証言が多数寄せられているのです。」
なんでも、アシア湖にはン百年以上前にその八つ首の邪竜が封印されたという伝承がある。その竜が復活したのではと噂され、住人や観光客は不安感を募らせているそうだ。
今回のクエストはその邪竜についての調査依頼である。
「ドラゴンかぁ…。想像もつかない。」
「ええ、300年以上前にドラゴンはすべてこの地を去ったとされていますから、もしそれが本当にドラゴンであれば大変貴重な事象となるでしょう。しかし、もし戦うことになってしまえは我々が生き残ることは不可能です。ましてや邪竜との言い伝えがある以上、慎重に対処せねばなりません。」
マジか。やはり人が対抗できるような存在ではないという事か。
「そんな出鱈目な存在が300年前にウロチョロ居たってことなんですか?」
「ウロチョロかは知りませんが、この地はかつてドラゴンに支配されていたのです。」
かつてドラゴンは力と叡智を以ってこの地に秩序と安寧をもたらし、人々を統べていたとされてる。しかし、300年前のある時突如としてそのドラゴン達はこの地より去ってしまったとされる。ドラゴンに統治されていた時代の事は書物などには一切残されておらず、伝聞によって残されるのみとなっているようだ。
ドラゴン達が去って以来この地は数年間混沌としていたが、ドラゴンに近しい立場にありいくつかの叡智を継承した人物によって混乱が収められていき、やがてその人物を中心に次々と国が建てられたという。
「―――エルフであればその時代の生き証人となる人物もいらっしゃるかもしれませんが、その時代を生きていたとされるエルフはみな聖域と呼ばれるエルフの集落に籠居しており他者との交流を固く禁じています。」
「マリークレアさんもわからないんですか?」
「社会に出ているエルフはほとんど百にも満たない若者ばかりなのです。かくいう私もまだ61歳ですし、聖域との関りもありません。」
「え!?マリークレアさんそんな年齢だったんですか!?」
「ええ。私は先代のアヴァルー王の頃より城に仕えております。エルフは20歳ごろまでは人間と成長速度は変わりませんが、それ以降急激に成長が鈍化します。老化が始まるのは八百をこえた辺りでしょうか…」
そんなことを話していると御者台後ろの窓が開き―――
「ちょっと!女の人に年齢の話は禁句よ!」
ノーラ姫が怒鳴り込んできた。
「…それともアレ?あんた年上が好みだったりするの?」
そういうと後ろの座席にいた二人がすこし驚いたような表情をみせた。
「い、いや別にそういうわけじゃ…」
「そうですか。私はユウヤ様の好みではないと。残念です……よよよ。」
「ちょっと、なにウチの執事泣かせてるのよ?」
「え、あ、ちょいとぉ…」
マリークレアさん真面目そうに見えて意外と茶目っ気ある人なの!?
と、そんなこんなしている内に馬車はアシア湖の屋敷に到着した。
メルがパーティに残り冒険者を続けるということで、俺たちはルクスの町に戻り、いつものようにクエストに明け暮れていた。
そんなある日、いつものようにギルドに行くと、これまたいつものようにノーラ姫が待ち受けていた。
「待ってたわ。よく来たわね。」
「……クエスト無いみたいだし、今日は休みにすっか。」
「待ちなさい。」
ノーラ姫は逃げようとした俺の首根をつかむ。
「お休みなら丁度いいわ。」
「何なんすか…?」
「ウチの別荘でバケーションしてかない?」
いきなり逆ナンしてきたよこの姫。
「俺らこれからクエストで忙しいんですけど?」
「さっき休みにするって言ったわよね?ダブスタにも程があるわよ。」
「私、姫様ん家行きたい~!」
メルはノーラ姫と仲いいし行きたがるのも無理はない。
リーナの方は―――
「ま、まぁ、ユウヤ…が、クエスト行きたい、って言うなら…」
なんかめっちゃ行きたそうにしてる…
「安心なさい。これはクエストも兼ねてるから。」
「またパシリですか…?」
「違うけど、そんなにアタシに奉仕したいならやぶさかでもないわよ。」
「勘弁してくだせぇ。」
「…まぁ詳しいことは行きながら話すわ。」
俺たちは外に停めてあったノーラ姫の馬車のもとまで行くと、マリークレアさんがいつでも出せるよう待機していた。
そして俺が車内に乗り込もうとすると―――
「待ちなさい。車内は男子禁制よ。」
と乗車を断られてしまった。どうしろと。
「ユウヤ様。こちらへどうぞ。」
俺はマリークレアさんと御者台でご一緒することになった。
***
「八つ首の邪竜?」
俺は道中、マリークレアさんからクエストについて話を聞いていた。
「はい。ここ数日、アシア湖にて目撃証言が多数寄せられているのです。」
なんでも、アシア湖にはン百年以上前にその八つ首の邪竜が封印されたという伝承がある。その竜が復活したのではと噂され、住人や観光客は不安感を募らせているそうだ。
今回のクエストはその邪竜についての調査依頼である。
「ドラゴンかぁ…。想像もつかない。」
「ええ、300年以上前にドラゴンはすべてこの地を去ったとされていますから、もしそれが本当にドラゴンであれば大変貴重な事象となるでしょう。しかし、もし戦うことになってしまえは我々が生き残ることは不可能です。ましてや邪竜との言い伝えがある以上、慎重に対処せねばなりません。」
マジか。やはり人が対抗できるような存在ではないという事か。
「そんな出鱈目な存在が300年前にウロチョロ居たってことなんですか?」
「ウロチョロかは知りませんが、この地はかつてドラゴンに支配されていたのです。」
かつてドラゴンは力と叡智を以ってこの地に秩序と安寧をもたらし、人々を統べていたとされてる。しかし、300年前のある時突如としてそのドラゴン達はこの地より去ってしまったとされる。ドラゴンに統治されていた時代の事は書物などには一切残されておらず、伝聞によって残されるのみとなっているようだ。
ドラゴン達が去って以来この地は数年間混沌としていたが、ドラゴンに近しい立場にありいくつかの叡智を継承した人物によって混乱が収められていき、やがてその人物を中心に次々と国が建てられたという。
「―――エルフであればその時代の生き証人となる人物もいらっしゃるかもしれませんが、その時代を生きていたとされるエルフはみな聖域と呼ばれるエルフの集落に籠居しており他者との交流を固く禁じています。」
「マリークレアさんもわからないんですか?」
「社会に出ているエルフはほとんど百にも満たない若者ばかりなのです。かくいう私もまだ61歳ですし、聖域との関りもありません。」
「え!?マリークレアさんそんな年齢だったんですか!?」
「ええ。私は先代のアヴァルー王の頃より城に仕えております。エルフは20歳ごろまでは人間と成長速度は変わりませんが、それ以降急激に成長が鈍化します。老化が始まるのは八百をこえた辺りでしょうか…」
そんなことを話していると御者台後ろの窓が開き―――
「ちょっと!女の人に年齢の話は禁句よ!」
ノーラ姫が怒鳴り込んできた。
「…それともアレ?あんた年上が好みだったりするの?」
そういうと後ろの座席にいた二人がすこし驚いたような表情をみせた。
「い、いや別にそういうわけじゃ…」
「そうですか。私はユウヤ様の好みではないと。残念です……よよよ。」
「ちょっと、なにウチの執事泣かせてるのよ?」
「え、あ、ちょいとぉ…」
マリークレアさん真面目そうに見えて意外と茶目っ気ある人なの!?
と、そんなこんなしている内に馬車はアシア湖の屋敷に到着した。
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