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第五話 トラウマ克服!?ゴブリン退治 ~チャプター3~

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「何なの一体?…これをゴブリンが造ったっていうの!?」

逃げたゴブリンを追った先に待ち受けていた、巨大な木造の砦。
周囲は丸太を隙間なく並べて作られた壁に囲われ、門には見張りのゴブリンが左右に二匹、門の上の物見櫓に一匹と配置され警戒をしている。

「いくら知恵が働くといえど、ここまでの建造物をゴブリンが建てられるとはとても思えませんね。ゴブリン達の動きもかなり統率が取れているように見えましたし…。」
「…裏でもっと上位の魔物が操ってるってこと?」
「その可能性は高いですね。」

どうする?ゴブリンより強力な魔物が居たとしたら、一度ギルドに戻って報告した方が…

「でもこの中に攫われた女性たちがいる筈よ。一刻も早く助け出さないと!」

ノルンの方は引き返す気は無いようだ。

「…わかった。ここは慎重に―――」
「ストームブラスト!」

ノルンはいきなり強力な風の魔術をぶっ放した!

「な…はあああぁぁぁぁ!?」

門の扉が破壊され、見張りをしていたゴブリンは吹き飛ばされる。

「さ、行くわよ!」

もしかしてこの姫、意外と脳筋なの!?

そうして俺たちはやむを得ず、混乱し始めるゴブリンの砦に侵入していく。
物見櫓にいた一匹が警鐘をならし、次々とゴブリンが集まってきた。

「ウィンドスラッシャー!」「フレアショット!」

ノルンとシエルが集まってくるゴブリンを次々と撃退していく。それにしてもノルンはともかく普段清楚に見えるシエル…シアリーゼ姫にしては派手な暴れっぷりだ。

「アタシとシエルでここに雑魚を引き付けておくから、貴方たちはその隙に奥の方を探ってきて!」

どうやら騒ぎを起こしてここに雑兵を集める作戦のようだ。
いきなり門を破壊した時はこいつどうかしてると思っていたが、ちゃんと考えはあるらしい。

「あんたもしかしてアタシの事ただの脳筋とでも思ってたワケ!?」
「え、えーっと…」
「なんならアンタを磔にして囮にしてあげてもいいんだけど?」
「リーナ!メル!行くぞ!」

俺は二人を引き連れそそくさと奥の方を探りに行った。

「まったく、アイツ後で不敬罪でしょっ引いてホントに磔にしてやろうかしら。」
「あら?今のわたくし達はただの冒険者では?」
「意外とアイツの肩を持つのね、シア。」
「見ていて飽きませんもの、ユウヤさんは。」

軽口を吐きつつも二人は魔術の段階を上げていき騒ぎを大きくしていった。

                   ***

砦の奥の方へと突き進んでいく俺たち。
姫様たちが敵を引き付けてくれてるお陰で道中で出くわす敵の数も最小限だ。

「この奥にボスが…。捕まった人たちも探さなきゃな。」

進んでいくにつれ警戒を強めていく。

すると、地面を揺らすほどの重苦しい足音が奥の方から響いてきた。

「な、なんだ!?」

現れたのは、身の丈4メートルはあろうボディビルダーの如き屈強な体躯の巨大なゴブリンだった。

「グオオオォォォォォォ!!!」
「こ、こいつがここのボス!?」

圧倒的な存在感を前にたじろいでいると…

「なんだぁ?騒がしいと思ったらやっぱり正規ギルドの冒険者どもか。」

巨大ゴブリンの陰から出てきたのは、肩まで頭髪を伸ばしローブを羽織った黒ずくめの男。

「に、人間!?」
「よくもオレ様の下僕どもをかわいがってくれたなぁ?」
「まさか、闇ギルドの魔獣使い!?」

リーナが男の素性を推し量ろうとする。

「ハァッ!よく見たら結構イイ女どもじゃねぇか!そんな冴えない野郎捨ててオレ様のものになれや!」
「キモ!何なのコイツ!」
「…ここのゴブリンたちは皆あなたが操ってるの?」

男にそう問いかけるリーナ。

「まさか!いくらオレ様でも百を超えるゴブリン全部隷属は出来ねぇよ。リーダーになりそうな奴数匹操って、そいつを通して指令を出してるだけだ。」
「手の内ペラペラしゃべってくれて、余裕だな!」
「冥土の土産だよ。お前ら全員タダでここから逃がすつもりは無ぇからな!」

すると男の背後から十数匹のゴブリンが飛び出してくる!

「野郎は殺せ!女どもは生かして捕らえろよ!」

巨大ゴブリンだけでなく普通ゴブリンの大群まで相手しなきゃいけないのかよ!

「アクアカッター!」「ファイアバレット!」

普通ゴブリンの方はリーナとメルが魔術で応戦しているが―――

「グォッ!グァッ!」
「おわっ!ひぃっ!」

俺の方は巨大ゴブリンが振り回す棍棒から逃げ回るので精いっぱいだ。
だが俺がこいつを引き付けている間に二人が雑魚を粗方片づけてくれたようだ。

「さあ、雑魚は片づけたわよ!覚悟しなさい、変態魔獣使い!」
「チッ!雑魚どもが…」

すると魔獣使いの男はあることに気付く。

「ん?お前人間じゃねぇな?…ラミアか!?」

男は女性の顔面ツラしか見てなかったのか、今までメルがラミアだと気づいてなかったようだ。

「だったらなんだって言うの!?」
「もしかしてハンターどもが取り逃がしたラミアってお前の事かぁ?だったら傑作だな!」

男は高笑いを上げる。

「まさか正規ギルドの連中に拾われて隷属つかわされてるとはなぁ!」
「つかう!?違う!メルは俺たちの仲間だ!」
「グオォッ!」
「おわっと!」

巨大ゴブリンの攻撃から逃げ回りながら、何やら聞き捨てならない事が聞こえたので反論する。

「ハッ、そうかよ。それじゃあこいつの事はオレ様が貰ってやるぜ!」
「!?、メル!そいつから離れて!」
「え!?」
「遅ぇわ!」

するとメルは自分の感覚に違和感を覚える。

「な…何?嫌…何かが…入っ…!?…いやぁぁ!」
「ヒャーハッハッハ!こいつはもうオレ様のもんだぁ!」

「ッぁぁああああ!あああああッ!」

メルが急に苦しみだした。それを見たリーナの表情がどんどん青ざめていく。

「どうしたんだ!メル!リーナ!何があった!」

「…メルが……メルが、アイツに…隷属れいぞくされちゃう!―――」
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