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第二話 異世界でも死にたい ~チャプター1~
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「いてて…」
宿からギルドに向かう途中。
テレビ局の夜勤のADみたいな寝かたをしたおかげで所々が痛い。
「んも~、あんな寝かたするからだよ。今日は武器の実技があるんでしょ?大丈夫?」
「ま、まぁ、大したことない…よ。…多分。」
今日はギルドで実技による武器の適性検査がある。実技とは言うが、試験とかそういうのではないから別に大したことはしないだろうと高をくくっていた。
***
「おはようございます。ユウヤさん、リーナさん。」
「おはようございます。エミリーさん。」
エミリーさんはギルドに登録する時に案内してくれた受付嬢さんだ。今後俺らがクエストを受けたりする時の主な担当になってくれるという事なので、これから長い間お世話になるだろう。
「今日は武器の適性検査でしたね。準備は出来ていますので、建物裏の訓練場へお越しください。」
訓練場へ行ってみると、何やら威圧感を醸し出す一人の男が待っていた。
「君が今日武器適性を受けるユウヤか?」
「は、はい!」
「それと…」
「あ、私は見学でーす。」
リーナは自分の戦闘スタイルを確立しているようで検査を受ける必要が無いという。リーナはロッドをメイン武装としていて、さらに魔術は回復・支援の他にも、風・水・無属性の攻撃魔術が使えるという。
彼女には今日は自由にしていいと言ったのだが、特にやることもないらしく、見学に来てくれた。
まぁ、自分の様を見られるのは少し恥ずかしい気もするのだが…。
「俺はガゼルだ。ルクスのギルドの長をやっている。今日の武器適性の検査官をやらせてもらう。よろしく頼むぞ。」
「ハイ!よろしくお願いします!」
凄いオーラが出てるいぶし銀な方だと思っていたがやはり一番偉い方でしたか。
「では実技を始める。ここに訓練用の武器が各種用意してある。まずは斧を取ってくれ。」
手に取った斧は想像より重く、持った瞬間身体がぐらつく。
「あそこに標的がある。始めの合図で好きなように攻撃しろ。」
ガゼルが指した方向に、藁のようなものを巻いた柱が何本も並んでいる。
「そして止めの合図で体を制止させろ。いいな?」
「わかりましたッ!」
「では、始め!」
開始と同時に標的に斬りかかる。が、斧が重くて振り上げる度にバランスを崩しぐらついてしまう。これではまるで俺の方が斧に振り回されているようだ。
「止め!」
「は、ハイ!…うわっとと」
身体を止めようとしたが丁度斧を振り上げた勢いでそのまま尻もちをついてしまった。
「よし。次は槍だ。実技内容は斧と同じだ。すぐ準備しろ。」
槍に持ち換えるが、重さは斧と変わらない。これだとまた…。
「では、始め!」
開始と同時に攻め始めるが、やはり武器に振り回される。
「気づいていると思うが、この訓練用の武器は通常のものよりも重く作られている。自分の体の軸をしっかり意識して武器を扱え!」
そんなことは重々承知している。この世界に来る前は工事現場とか運輸倉庫みたいなゴリゴリな現場のバイトは避けてきたから、運動不足が祟って体幹なんてブレブレだ。
「よし、止め!」
やはり槍の動きを止めきれず、体が一回転したあと倒れこんでしまう。
(ああ、クソっ!)
自分の情けなさに憤る。なによりそんな姿をリーナに見られるのがたまらない。
この後は剣、そして短剣と同じ内容の実技が続いた。剣は初期装備だったし、短剣はさっきまでと比べて小振りで若干軽かったのであまり振り回されるような事はなかったのだが、ここまでの疲れと昨晩満足に寝れなかったことが今更響いてきて体が思うとおりに動かなかった。
「よし、いいだろう。次は弓矢だ。やり方はさっきまでのとは違うから、これから説明する。」
弓矢か。ゲームとかだと力が低いキャラが使う印象がある。
だが俺は知っている。学生の時に知り合いにアーチェリーの弓を引かせてもらったことがある。あれはかなり力が要るし、肩を痛めることもあるという。
「まずは矢を3回、的にしっかり当てるようによく狙って撃ってみろ。」
弓を引いてみると案の定弦が硬く感じる。やはり訓練用のものだと考えられる事と今までの疲労の蓄積もあるだろう。
放った矢はひょろひょろと力なく飛んでいき、3回とも的まで届くことはなかった。
「…次だ。これから一分時間を計る。その間に出来るだけ多く矢を放ってみろ。もちろん的をしっかり狙え。では、始め!」
「ひぃぃ!」
これは今までで一番疲労度が高い。とにかく疲れた体に鞭打って必死に矢を放つ。これだけ撃てば一発くらい的に当たってくれてもいいものだが、目の前に矢がひょろひょろ落ちていくばかりだ。
「そこまで。…15本か、まぁいいだろう。」
「はぁ…はぁ…。」
「よし、最後はロッドだ。使い方はわかるか?」
「ロッド?いえ…」
「杖の先端の魔石に魔力を込めて放つ武器だ。魔石の属性に応じた魔力弾を打つことが出来る。魔力の込め方はわかるか?」
「あ、はい。なんとなくは…」
「魔石に魔力を込めたら標的をしっかり視界に定めてロッドを振れ。そうすれば魔力弾を撃てる。」
「わかりました。」
「では弓の最初の実技と同じように、3発撃って的に当ててみろ。始め!」
(えっと、魔力の流れをイメージして、その行き先をを魔石に向けて…)
ロッドの魔石に光が灯っていく。これで魔力は溜められているようだ。
ある程度溜まったと思ったところで的を目掛けてロッドを振るが…
「あ……。」
魔力弾はあさっての方向に飛んで行った。
「もっかい!」
再び魔力を込めロッドを振るうが、今度は弾がひょろひょろ飛んでいき的の前にぽとんと落ちる。3発目はまっすぐ飛んでくれたが的に届く前に消えてしまった。
「…よし、これで実技は終わりだ。後ほど結果をエミリーに渡しておくからギルドで待っていろ。」
「…はい、ありがとうございました…。」
またしてもギルドで情けない姿をさらしてしまった…。恥ずかしさで死にそうだ。この先ここでやっていけるのかな…。
宿からギルドに向かう途中。
テレビ局の夜勤のADみたいな寝かたをしたおかげで所々が痛い。
「んも~、あんな寝かたするからだよ。今日は武器の実技があるんでしょ?大丈夫?」
「ま、まぁ、大したことない…よ。…多分。」
今日はギルドで実技による武器の適性検査がある。実技とは言うが、試験とかそういうのではないから別に大したことはしないだろうと高をくくっていた。
***
「おはようございます。ユウヤさん、リーナさん。」
「おはようございます。エミリーさん。」
エミリーさんはギルドに登録する時に案内してくれた受付嬢さんだ。今後俺らがクエストを受けたりする時の主な担当になってくれるという事なので、これから長い間お世話になるだろう。
「今日は武器の適性検査でしたね。準備は出来ていますので、建物裏の訓練場へお越しください。」
訓練場へ行ってみると、何やら威圧感を醸し出す一人の男が待っていた。
「君が今日武器適性を受けるユウヤか?」
「は、はい!」
「それと…」
「あ、私は見学でーす。」
リーナは自分の戦闘スタイルを確立しているようで検査を受ける必要が無いという。リーナはロッドをメイン武装としていて、さらに魔術は回復・支援の他にも、風・水・無属性の攻撃魔術が使えるという。
彼女には今日は自由にしていいと言ったのだが、特にやることもないらしく、見学に来てくれた。
まぁ、自分の様を見られるのは少し恥ずかしい気もするのだが…。
「俺はガゼルだ。ルクスのギルドの長をやっている。今日の武器適性の検査官をやらせてもらう。よろしく頼むぞ。」
「ハイ!よろしくお願いします!」
凄いオーラが出てるいぶし銀な方だと思っていたがやはり一番偉い方でしたか。
「では実技を始める。ここに訓練用の武器が各種用意してある。まずは斧を取ってくれ。」
手に取った斧は想像より重く、持った瞬間身体がぐらつく。
「あそこに標的がある。始めの合図で好きなように攻撃しろ。」
ガゼルが指した方向に、藁のようなものを巻いた柱が何本も並んでいる。
「そして止めの合図で体を制止させろ。いいな?」
「わかりましたッ!」
「では、始め!」
開始と同時に標的に斬りかかる。が、斧が重くて振り上げる度にバランスを崩しぐらついてしまう。これではまるで俺の方が斧に振り回されているようだ。
「止め!」
「は、ハイ!…うわっとと」
身体を止めようとしたが丁度斧を振り上げた勢いでそのまま尻もちをついてしまった。
「よし。次は槍だ。実技内容は斧と同じだ。すぐ準備しろ。」
槍に持ち換えるが、重さは斧と変わらない。これだとまた…。
「では、始め!」
開始と同時に攻め始めるが、やはり武器に振り回される。
「気づいていると思うが、この訓練用の武器は通常のものよりも重く作られている。自分の体の軸をしっかり意識して武器を扱え!」
そんなことは重々承知している。この世界に来る前は工事現場とか運輸倉庫みたいなゴリゴリな現場のバイトは避けてきたから、運動不足が祟って体幹なんてブレブレだ。
「よし、止め!」
やはり槍の動きを止めきれず、体が一回転したあと倒れこんでしまう。
(ああ、クソっ!)
自分の情けなさに憤る。なによりそんな姿をリーナに見られるのがたまらない。
この後は剣、そして短剣と同じ内容の実技が続いた。剣は初期装備だったし、短剣はさっきまでと比べて小振りで若干軽かったのであまり振り回されるような事はなかったのだが、ここまでの疲れと昨晩満足に寝れなかったことが今更響いてきて体が思うとおりに動かなかった。
「よし、いいだろう。次は弓矢だ。やり方はさっきまでのとは違うから、これから説明する。」
弓矢か。ゲームとかだと力が低いキャラが使う印象がある。
だが俺は知っている。学生の時に知り合いにアーチェリーの弓を引かせてもらったことがある。あれはかなり力が要るし、肩を痛めることもあるという。
「まずは矢を3回、的にしっかり当てるようによく狙って撃ってみろ。」
弓を引いてみると案の定弦が硬く感じる。やはり訓練用のものだと考えられる事と今までの疲労の蓄積もあるだろう。
放った矢はひょろひょろと力なく飛んでいき、3回とも的まで届くことはなかった。
「…次だ。これから一分時間を計る。その間に出来るだけ多く矢を放ってみろ。もちろん的をしっかり狙え。では、始め!」
「ひぃぃ!」
これは今までで一番疲労度が高い。とにかく疲れた体に鞭打って必死に矢を放つ。これだけ撃てば一発くらい的に当たってくれてもいいものだが、目の前に矢がひょろひょろ落ちていくばかりだ。
「そこまで。…15本か、まぁいいだろう。」
「はぁ…はぁ…。」
「よし、最後はロッドだ。使い方はわかるか?」
「ロッド?いえ…」
「杖の先端の魔石に魔力を込めて放つ武器だ。魔石の属性に応じた魔力弾を打つことが出来る。魔力の込め方はわかるか?」
「あ、はい。なんとなくは…」
「魔石に魔力を込めたら標的をしっかり視界に定めてロッドを振れ。そうすれば魔力弾を撃てる。」
「わかりました。」
「では弓の最初の実技と同じように、3発撃って的に当ててみろ。始め!」
(えっと、魔力の流れをイメージして、その行き先をを魔石に向けて…)
ロッドの魔石に光が灯っていく。これで魔力は溜められているようだ。
ある程度溜まったと思ったところで的を目掛けてロッドを振るが…
「あ……。」
魔力弾はあさっての方向に飛んで行った。
「もっかい!」
再び魔力を込めロッドを振るうが、今度は弾がひょろひょろ飛んでいき的の前にぽとんと落ちる。3発目はまっすぐ飛んでくれたが的に届く前に消えてしまった。
「…よし、これで実技は終わりだ。後ほど結果をエミリーに渡しておくからギルドで待っていろ。」
「…はい、ありがとうございました…。」
またしてもギルドで情けない姿をさらしてしまった…。恥ずかしさで死にそうだ。この先ここでやっていけるのかな…。
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