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『あなたに打ち明ける』<♂♀>
しおりを挟む~枇杷の花言葉~
突然の女の告白に、男は目を見開いた。
「私を嫌いになって下さい。」
「…え!?ど、どうして、急に…。」
「………」
黙り込み俯いた女は一切口を噤み、そんな女の態度に男は戸惑いつつも、そっと近寄り顔を覗き込む。
女の目には涙が浮かんでいて、慌てた男は女に顔を上げさせた。
「…何か、あったのか?」
真剣な表情で自分の目を見つめる男の表情に、女は更に涙を溢れさせる。
「俺が、嫌いになったのか?」
「…そうじゃないわ…。」
「なら、俺が何かしてしまったとか…?」
「…私が、いけないの…。」
そう言って女は再び俯いてしまい、男は途方に暮れた。
(俺が嫌いな訳でも、ましてや、俺が何かした訳でも無ければ、どうして嫌いになれなんて…。)
「…お願いだから、嫌いになって…。」
「そう言われても、君を嫌いになる理由なんて何も無い!!」
「もう…、無理なのよ…。」
弱々しく話す女に拳を握り締めた男は、未だ俯いたままの女を見つめて、そっと抱き締めた。
一瞬だけ身体を強ばらせた女だったが、少しずつ力を抜いて行く。
「…君が、どうして俺に嫌って欲しいのかは分からない…。だけど、俺は君を嫌いになる事は無いよ。何があってもね…。」
「………………」
黙り込んだ女にどきどきしながらも、男は、女が自分の腕の中から逃げ出さなかった事にほっとした。
しばらくすると、女の身体からは全ての力が抜け、男に身体を預けたまま気を失っていた。
「ふっ。よっぽど悩んでいたんだな…。でも、もう大丈夫だよな。」
呟きながら女を抱き上げた男は、満面の笑みを浮かべ、自身の部屋へと足を向ける。
(二度と嫌いになれなんて言えない位、愛してやらなきゃな…)
「一生、離さないからな。」
閉じられた女の目からは、一滴の涙が零れ落ちたのだった。
終わり
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