【花言葉~果実編~】

色酉ウトサ

文字の大きさ
上 下
10 / 13

『あなたに打ち明ける』<♂♀>

しおりを挟む

~枇杷の花言葉~



 突然の女の告白に、男は目を見開いた。

「私を嫌いになって下さい。」

「…え!?ど、どうして、急に…。」

「………」

 黙り込み俯いた女は一切口を噤み、そんな女の態度に男は戸惑いつつも、そっと近寄り顔を覗き込む。

 女の目には涙が浮かんでいて、慌てた男は女に顔を上げさせた。

「…何か、あったのか?」

真剣な表情で自分の目を見つめる男の表情に、女は更に涙を溢れさせる。

「俺が、嫌いになったのか?」

「…そうじゃないわ…。」

「なら、俺が何かしてしまったとか…?」

「…私が、いけないの…。」

 そう言って女は再び俯いてしまい、男は途方に暮れた。

(俺が嫌いな訳でも、ましてや、俺が何かした訳でも無ければ、どうして嫌いになれなんて…。)

「…お願いだから、嫌いになって…。」

「そう言われても、君を嫌いになる理由なんて何も無い!!」

「もう…、無理なのよ…。」

 弱々しく話す女に拳を握り締めた男は、未だ俯いたままの女を見つめて、そっと抱き締めた。
一瞬だけ身体を強ばらせた女だったが、少しずつ力を抜いて行く。

「…君が、どうして俺に嫌って欲しいのかは分からない…。だけど、俺は君を嫌いになる事は無いよ。何があってもね…。」

「………………」

 黙り込んだ女にどきどきしながらも、男は、女が自分の腕の中から逃げ出さなかった事にほっとした。
しばらくすると、女の身体からは全ての力が抜け、男に身体を預けたまま気を失っていた。

「ふっ。よっぽど悩んでいたんだな…。でも、もう大丈夫だよな。」

 呟きながら女を抱き上げた男は、満面の笑みを浮かべ、自身の部屋へと足を向ける。

(二度と嫌いになれなんて言えない位、愛してやらなきゃな…)

「一生、離さないからな。」

閉じられた女の目からは、一滴の涙が零れ落ちたのだった。



終わり
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

処理中です...