僕という花たちは…

まゆゆ

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5.8レモングラス

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 ある日。

 半ば強引にカノ役にされた子が、アサキの部屋を訪ねてきた時が、一度だけあった。

 『アサキくんを、試させるような事をしないで!』

 って、平手打ちされた。

 あぁ…この子は、アサキが好きなんだなぁ…

 試させるように仕向けたわけじゃないないのに…

 そうさせている僕は、アサキにとって、邪魔みたいで…

 アサキは、良いヤツなのに僕に関わっているから。

 ダメなヤツになってしまう。

 それが、

 「嫌だった…」
 「セリ…」 

 どう接して良いのか分からなくて、でも好きな気持ちを表現出来なくて…

 どう思われているのか、怖くて聞けなくて…

 相手を、傷付けるだけの… 

 「両親みたく…なりたくなかった…」

 不細工に泣いてるんだろうな…
 陰で、笑われるのかも…

 「だから。分かれたの?…」
 「…うん…」

 そう頷くとアサキは、どこかホッとしたような表情で僕に、擦り寄ってきた。

 「セリは、俺にどう思われていたい?」
 「えっ…」
 「人を試した俺が、言うなってセリフだけど…」

 ギュッと力強くアサキは、抱き締めてくる。

 「好き過ぎるんだ。俺もセリに、どう思われてんのか、怖くて聞けなかった…」

 その言葉に、ずっと押し込んでいた嫌な気持ちが、ほどけるような感覚になった。

 お互いに見合わせた顔は、ぐしゃぐしゃで笑ってしまった。

 取り敢えず話し合おうって… 
 なって…

 「あのさぁ…アクセを着けなかった理由って…」

 「どうして良いのか、分からなかった。自分が、どれだけアサキを好きだとか、本当に好かれてるのか…分からなくて…って、理由はおかしいね…」
 「俺も、はっきり言えばよかったんだ…」

 アサキは、少し冷めたお茶を飲み込む。

 「入れ直す?」
 「大丈夫…」
 「俺も、セリの気持ち知りたかったから…」
 「うん」
 「じゃさぁ…ピアスは?」

 俺は、ポケットから青い石のピアスを取り出しテーブルに置いた。 

 「それは…」
 「セリが、ピアスホール開けてるの知ってたから…」
 「………」
 「ん? セリ…」
 「その何と…なく?」
 「気にいった?」
 「えっと……いつものと、包が違って…気になって…その開けちゃった…ゴメン」
 「いや…そんなことは…寧ろ開けてもらわないと…ならないし…俺的には嬉しいよ…」

 おい…

 開けちゃったとか、可愛い言い回しすんなよ…
 ただでさえ弱ってて、どう接すりゃいいのかとか…
 俺は、どう思わられていてもいいけど、セリが困った顔をすると…

 構いたくなるから取り敢えず。

 ゴメンと声を掛けた。 

 「何で? アサキが…謝るの?」
 「いや、その…」
 

 セリは、俺が渡したピアスを手に取ると、つけてみるね。と左耳につけて見せてくれた…

 照れたくさいのか、視線を外しながら下を向いているセリに……

 「青い石。似合ってる」と言うと…
 セリは、小さく「…ありがとう…」と、答える。

 まだ関係が、ぎこちない。
 普通に、話せているようなのに話せない。

 端から見たら俺は、浮気性でセリを散々振り回して傷つけたヤツって事には、変わりはない。 

 「もう一度、俺と付き合って欲しい」

 本音で言えば、図々しいかもしれない。
 でも、今じゃないと言えない事だってある。

 「今直ぐには、難しいと思う。もしかしたら。ふざけんなって思われてるかも知れないけど、今度は俺の方が、セリを待ってる…ってのは、迷惑かな……」

 ハッとなるセリの表情は、驚きか、拒否か…

 セリだって、こんな俺にもう一度、告られても……

 「あの…」
 「ん?」

 アサキを、そうさせてしまったのは、僕だから。

 もっと、素直に今みたいに言い合えれば…

 両親は、両親。

 僕は、僕達の気持ちを、ちゃんと伝えれば、こんな溝は生まれなかった。

 「やっぱ、難しいよな…」

 違う。
 こんな事を言わせたい訳じゃない。

 「…待ってアサキ!…」

 セリが、椅子から立ち上がる。

 「こんな歪な僕達でも、やり直せると思う?…」

 色々な言葉を並べても、不安で仕方がないのは、セリも同じ。

 「いっぱい話そうか?…好きも嫌いも、何が良くて悪いのか、不安なこと、互いにぶつけ合って…そしたら前よりも、一緒に居られるかも知れないから…」
 
 「うん…そうだね…そうしたい…」
 
 

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