僕という花たちは…

まゆゆ

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5.2レモングラス

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 ひんやりとした鍵の感触が、アイツの言葉のトーンに似ていて、別れを承諾してしまったと、同じ情況になった。

 俺とセリが、別れる?

 俺…

 アイツの事、嫌いだったけ?

 馬鹿みたいに自問自答までした。

 『セリ!』

 『何?』

 『俺…別れないから』

 『……勝手にすれば、でも僕はもうそっちには、行かないから…』
 
 殆ど話さなくなっても、講義は、被る事が多いし。
 共通の友人も、多い状況に俺は、うんざりした感覚になっていた。

 セリも、また好きこのんで俺に接しようとはしてこないし。

 俺も、気楽に振る舞ってた。

 そんな情況から二人は、別れたと、周りにはバレバレで…

 その後は、あからさまに俺に言い寄るヤツが、女男関係なく圧倒的に増えた。

 それは、セリも同じで…
 必ず俺以外の誰かが、常に居るようになった。

 俺が見ている目の前で、誰がが、セリを呼び止めて…

 近付いて、肩を叩く。

 そして、楽しげに談笑する。

 このまま他の誰かと、付き合う姿が、現実に迫っているようで、嫌だった。
 
 そう言えば、レモングラスとハーブのお茶…

 だいぶ、飲んでない。 

 ハーブティーに近いと言われて、取り敢えず買って飲んだお茶の味は、最悪で…

 俺は、既に渇き切ってた。

 『私…セリくんに告ろうかな?』
 『マジで?』

 えっ?

 『でも、セリくんって異性に興味なっていた聞いたけど…』
 『まぁ…そうなんだけど、友達になりたい的な? だってあの容姿に、あの顔だよ?』
 『まぁ…確かに…それは、分かる…後は、あわよくばとか?』

 目の前を歩いてく女子たちが、ケラケラと笑っている。

 『それに、噂で聞いたけど…あのタラシと別れたって話し聞いて目の色変えたヤツ多いらしいよ!』
 
 やっぱりか…

 『…くそ……』
  
 動揺しまくる気持ちを抑えて、仲間達と談笑してみたが…

 冷静になってから。

 また漠然とアイツが、俺以外の誰かと付き合ったらと考えると、激しく動揺した。

 浮気して傷付けておいて、楽な方に逃げた俺が、セリの恋愛とか、付き合い方にどうこう言う資格は全く無い事なのに、アホみたいに自分を責めた。

 そして、どこからかアイツが、誰かに告られたと、聞かされたり。

 付き合う寸前だと、噂話を耳にしては、腹を立て…

 こもるように仕事場で、自分に取っての最悪な光景を想像しては、塞ぎ込んだ。

 そしてセリに限って、別れて直ぐ誰かと付き合うとか、有り得ないと首を振った。

 『別れたんでしょ? 気晴らししたら?』
 『遊ぼう!』
 
 やめときゃ良いのに…

 知り合いの言葉に乗せられて…
 男女関係なく3人くらいと、付き合った。 

 別れた事による。
 寂しさか…
 憂さ晴らしか、無い刺激を求めて…
 その中で知り合った年下の男が、割りと綺麗目で…

 セリにダブってしまって、極端に会う頻度が、増えていった。

 俺達は、別れているんだし浮気じゃない。

 互いに別の学校だったからと、どちらかの大学の近くにわざと待ち合わせをした。 

 自慢したかった。

 見て欲しかった。

 見返したかった。

 振り向いて欲しかった… 

 何度目かの待ち合わせの時にセリが、近くを通り掛かったのには、驚きつつも…

 作戦通りなんって…
 アホみたいに思ったりした。
 
 なのにセリは…

 無言で、通り過ぎた。

 目も、合わせてはくれなかった。
 自分が、思っていたのとは、違う展開に変な動揺が、気持ちをざわつかせた。
 
 『どうしたの?』
 『えっ…』
 『早く行こう! 買い物に付き合ってくれるんでしょ?』

 『あぁ…』
 
 俺…
 セリに無視されてる。

 そう言えば、ここ最近。
 視線が、合わない。
 
 そりゃ…そうだよ。

 俺達は、別れているんだから。 
 視線が合うわけない。

 あれ?

 俺…セリが、嫌いだったけ?

 向こうは、俺が嫌いで別れたって思っているのか?
 
 別れたくないのに?

 セリと別れるなんって、やっぱり有り得ない。

 じゃなんで…
 俺、このコと付き合ってんの?

 『アサキさん?』
 『えっ…あっ、何?』
 『なんか変…話し掛けても、ずっと、上の空だし……』

 『そんなことは…』

 『門の前で、擦れ違った人ですか?』

 『いや…あれは…』
 『前カレとか? 別れたって言いましたよね?』

 『別れたって言うか…』

 『ボクの方が、浮気相手だったりして?』

 年下で小柄だからって、油断してたら思いっ切り殴られてた。

 翌日、頬を腫らして微妙に血が滲むのをガーゼを、押さえながら講義に出たら良い笑いものにされた。

 周りからの冷ややかな視線に耐えられなくて、午後には部屋のベッドに横になりながら項垂れていた。

 唇を切ったものだから。
 少しでも、口を動かすと響いて自業自得って言葉が、身に沁みた。

 まぁ…

 歯が折れなかったのが、救いか? なんって考えていたが、どうしても腹は減る。

 ただこの口では、飲み物や食べるのに口を開けることも、噛むことも出来ず。

 飲み物はしみるで、四苦八苦していると不意に鍵を締め忘れてた部屋のドアが、静かに開きタイミングを、見計らったみたいにセリが立ってた。

 何も言わず。
 聞かず。 

 大き目のマイボトルを、部屋の机に置くと、その隣に咥えて飲めるゼリー飲料を置いた。 

 『セリ…』
 『消毒したの?』
 『……………』

 薬箱なんってない部屋にセリは、消毒液やガーゼ類を買ってきて手当をしながら俺の口元に触れた。

 そんな事されたら。

 たがなんってものは、簡単に外れる。

 ついなのか、故意か…

 俺は、セリを抱き締めていた。

 やっぱり。

 セリとは、別れられない。

 『別れたくない…』

 でも、セリは相変わらずな態度を見せる。

 別れては、元に戻るなんって関係を、それからもずっとしてきた…
 最初のこの3~4人までが、本気の浮気。

 後は、少しでも俺に関心を持ってもらいたかったが、気持の大半を占めていた。
 本気で心配してくれて、見守ってくれるって事は、自分に対して本気だって事だし。

 終いには、嫉妬させたい。

 そんな気持ちの俺に知り合い達は、浮気相手を演じてくれた。

 それが、毎回最悪な形でバレるもので…

 バレた時のセリの表情に安堵さえした。

 あぁ…コイツも、こんな顔すんだ。

 嫉妬されてるとか…

 俺は、本当に好かれてると、単純に思ってた。










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