僕という花たちは…

まゆゆ

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4.4埋まらない溝

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 ピコン

 『今日、話し合いをしようと思う』
 『ゴメンね。こんな事に巻き込んで…』


 そのメッセージに気付いたのは、夕方近く。
 講義が終わって、直ぐの事だった。
 出来るのなら。もう少し早く連絡してほしかった。
 
 帰り支度しながらスマホを、上着に仕舞う。
 
 カチッと、何かが擦れる音。

 「あっ…」

 慌ててスマホを机に置き直し上着からピアスを取り出す。
 
 そのままポケットに入れておくのも、少し危ないのかも。

 何か、布みたいな袋とかに入れと置かないと、何かの拍子に壊れたり落としたりしたら大変だ。

 それからバッグの中とか?

 手の平に転がるそれは、プレゼントと言われて、アサキから渡された小袋に入っていたキレイな青い石の付いたピアスだ。

 シルバーアクセは、肌に触れたりすると直ぐに黒く酸化する。

 それにキズが付きやすいことから布に包んだり。
 袋で包んだり。

 最初に手渡された時、僕はいつもと同じ…
 ペンダントトップやキーホルダーとか、ストラップ。
 何かのジッパーチャーム? ぐらいにしか思ってなかった。

 でも、触った感触が何か二つ分ありそうな…

 それとも、前に試しで作ってた惑星と衛星みたいなモノが、二つで一つみたいな?

 でも、それとは大きさが違う。
 普段からアサキの店の手伝いを、していたせいか…

 商品を箱に入れている時に指先で触れた感覚と、小袋の大きさで何となく何が、入れられているのか、少し分かってきた。
 でも、その日。
 僕に手渡してきたモノは、小袋の中でもクロスと他の布にまで包まれていて、厳重で手に持つだけでは、それが何か分からなかった。

 だから触れば、触れる程気になってしまい。

 中身を知りたい欲求に負けて、初めて、その小袋だけを開けてしまった。

 小袋の紐の巻き方や結び方。
 入っている布の包み方。
 どれを一つ取っても、アサキが仕事熱心で、自分の仕事にプライドを持っている事が、伝わってきて嬉しかった。

 結ばれた袋の紐を取り。
 二重に包まれた布から出てきたのは、青い石がはめ込まれたピアスだった。

 僕のピアスホールに、気付いてたんだ。

 高校生の頃に仲間内のノリで開けただけのピアスホール。

 塞がってはなくて、本当にたまに付けたりするぐらい。

 そんなものだから。

 アイツの前でなんって、着けている所を、見せたことはないと思う。
 着けること事態は、面倒くさくもない。

 慣れてるし。

 高校生の頃は、よくしてた。
 弟が、それを知らそうなのは…

 もしかしたら。

 気付いているかもだけど…

 基本的に家では、取っていて着けるのは、学校に行ってから。
 髪の長さもあるから親には、バレてないと思う。 

 相変わらずな父親の言動から。

 何も知らない弟を、父の害からあからさまに庇うのも、気が引けて取りあえずは、良い見本って訳じゃないけど、良い兄のままで家では過ごしていた。

 今にして思えば、無意識だったと思う。

 あれ以来。
 何度あの家で、息が詰まりかけたことか…

 僕だって、現実を見たくなかった。 
 でも、僕が気持ちを割り切ってユヅキの前に立たないと、家族がバラバラになりそうで、必死に物静かな自分を演じていたからか、気が休まらなかった。

 学校は、元々の真面目な性格が目立ってしまい。
 そこでも、上手く休めなかった。
 
 結局。

 僕が、自力で探した居場所は、アサキの所だけだったのかも、知れない。

 まぁ…故意か、どうかは別としてアサキが、浮気したのは本当で…

 辛かったし。
 苦しかった。

 でも、その気持ちをどうやって伝えればいいのか…
 未だに分からない。
 
 本当のことを言って、傷付きたくなかった。

 自分の為…
 アサキの為とか、誰かのせいにも出来なくて、自分本意に裏切られたのは、僕だけど…

 あの時、父に裏切られた母さんも、こんな気持ちだったのかなぁ…
 とか、どうやって許せたんだ?
 とか、色々と考えている内にアサキは、誤ってきた。

 その時の言い訳が、あの当時の父親の言動そのもので…

 “ 同じこと言ってる ” 

 と、引いてしまった事もある。

 寂しいから。
 かまってくれないから。
 向こうに優しくされたから…

 それで、浮気ってするもんなの?

 共働きな両親。
 少し年の離れた弟。
 弟は、覚えてないかもしれないけど… 

 一度だけ、僕にこう言った。

 『オレには、兄ちゃん居るから。寂しいって思わないよ』

 嬉しかった。
 ユヅキには、こんなモヤモヤした気持ちを、抱えて欲しくはなかったから。 
 
 












 
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