転生したらダンジョン雲になった訳

2章英雄と龍魔王

c

　イリスは心配の表情で、アタマカラに駆け寄る。

「怪我は無い？」

「あっ俺は全然大丈夫。騎士も俺には近寄りがたいみたいらしい」

「良かった」

　胸に手を当て、安堵の声を漏らすイリス。
　当然納得がいかないのが、フレッド。

「あの……イリスちゃん。普通まず僕の心配だよね。結構髪引っ張られてるんですけど」

「あっ」

「何今さら気づいたみたいな顔してんの！　つーか君はそんなキャラだったのか！」

「フレッド。もういいじゃないか」

　フレッドは面倒くさそうな態度に腹が立ったのか、再度怒りの矛先をアタマカラに変える。
　
「だいたい君が悪いんじゃないか！」

「なぜ俺なんだ」

　指を指して、詰め寄るフレッドにたじたじのアタマカラ。

「僕はてっきり、君が暴力をちらつかせて騎士を黙らせると思っていたのに、蓋を開ければ、端っこの隅でちっさい声でやめろだなんだの言ってるだけじゃないか！」

　確かにフレッドの言い分も分かる気がする。
　なぜ、自身はこんなに弱々しい奴なんだ。
　情けない。
　だんだんと、忘れていた本来の自身の性格が分かって気がする。
　その時、イリス並の殺気を感じ、驚愕し、固まる。
　振り返ると後ろに降り立ったのは、二人の英雄。
　イリスと同じ、背中に白金マントを纏い、銀色の防具を身につけている。
　一人は眼鏡を掛けた、利発な男。
　もう一人はツインテールの金髪の幼い生意気な少女。
　
「血相変えて出て行ったけど……イリス何があったの？」

「別に……その……友人が」

　金髪の少女は腰に手を当て、首を傾げる。
　一方、冷静に黒眼で見極めるのは利発な男。

「目立って強そうな者はいませんね」

「そうね。金髪のちっこいのと、白い木偶の坊（でくのぼう）しかいないわ」

　やはり、ふんっ笑い、言い返すのフレッド。

「お前の方がちっさいつーの」

「はぁ？」

「やめておけ」
　
　アタマカラが危機を察知し、フレッドを制止するが。
　金髪の少女はおでこに皺が入り、小さな牙をちらつかせ、両手に事前に装備した両手拳銃をフレッドに向ける。

「そこのあんた殺されたいの」

　フレッドは急に目を逸らし、額に汗を垂らし、そっとイリスの後ろに隠れた。
　金髪の少女は即撤退という情けなさに呆れ、銃を降ろす。

「本当と弱いのって嫌いだわ」

「うっせぇ」

「はぁ？　またなんか言った？」