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2章英雄と龍魔王

よろず武器屋

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 記憶を無くしたアタマカラは行く道も宛てもなく、ただ森林の中を彷徨い歩いていた。
 自分は何者なのだろうかという問いを払拭できないまま進んで行く。
 そして、坂を下りると、長い洞窟が続いていた。
 それ程、大きくは無く、出口から微眩い光が射しているのが分かる。
 探検家のような好奇心が湧いてくる。
 中へ入ると、ひんやりとした冷気がぶつかり、ぴちゃぴちゃと水滴音が鳴り、恐怖を抱く。 
 けれど、突然、真上からいくつかの小さな緑の光が射し込む。
 きっと、上は暖かな緑色の光景が広がるのだろう。
 そして、一歩一歩、冷たい地べたを歩いて行く。
 たどり着いた先には、広大な草原が広がっていた。
 寒い強風がその草原を揺らし、緑風の匂いが鼻腔を刺激する。
 向こうに、緑の丘があるので、そこまで行ってみることにした。

「はぁ、はぁ、はぁ」

 思っていたよりも、遠くて、息切れをする。
 顔を上げると、そこには巨大な街があった。
 そこには人工物で作られた、近代的な建築物がいくつも並んでいる。
 高い鉄塔であったり、高層の建物が見える。
 アタマカラは既視感や懐かしさのようなものを感じるが、それが何なのかはっきりはしない。
 突如、祝いの打ち上げ花火が爆音と共に、上がる。
 二、三発の後に、盛大な拍手喝采が起きた。
 また、人々の歓喜の声や鐘の音が聞こえてきて、賑やかな街であろうことが分かる。
 アタマカラは記憶を失い、途方に暮れながらも、その賑やかさを頼みの綱として、巨大な街へ歩みを進めた。
 もしかしたら、自身のことが分かるかもしれないという思いで。

 街へ入ると、大勢の人々がどっと押し寄せてきた。
 銀色や金色の防具を装備した冒険者や、簡易な装備をした商人や村人などの様々な者達。
 両脇には商店が備えられ、奥までずっと続いている。
 お客の笑い声や商人の客寄せの声が、この商店街通りを盛り上げているのだ。
 アタマカラが空腹でお腹が鳴り、突如、目眩がして倒れようかという時。
 いきなり老婆が目の前に現れ、アタマカラの図体を間一髪で抑えた。
 背が曲がり、小さな老婆。
 到底、アタマカラを支える力があるとは思えない。
 ピンク色のスカーフを頭に被せ、少し汚れやシミがある赤い衣服を身につけている。
 老婆は皺がれた顔で、アタマカラをまじまじと見て、にっこりと笑う。
 お茶目な老婆らしい。
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