転生したらダンジョン雲になった訳

1章魔獣になりましょう

化け物と呼ばれた銀髪の少女

　森林一帯で、眼鏡を掛けた新米女教師は中空にあるホログラムの地図と睨めっこしながら、困惑していた。
　その後ろで、黒と白の学園服を身に付けた小さな子供達が不満を漏らしながら、歩いていた。

「先生！　まだ着かないの！」

「あっ、ごめんね。もうちょっとよ。あれ、ここはだっけ？　あっちが東だっけ」

「ね、ね、僕達って迷子！？　迷子！？」

「大丈夫よ」

　新米教師はこの森林で、迷子となり、挙げ句には子供達が精神的に追い詰める。
　服を引っ張ったり、泣き喚めく少女もいたり、興奮気味にこの森の魔獣を探す少年もいる。

「みんな～！　あんまり騒がないでぇ！　ここには危険な魔獣がいるかもしれないの！」

「ね！　ね！　魔獣って何？」

「それは」

「先生はらへったわ」

「さっきお昼食べたでしょ」

「もううちに帰りたいぁ！」

「ごめんね……もうすぐだから……」

　この状況を楽しむ子供もいれば、不安がる子供もいた。
　そんな中、一人の少女が少し離れた場所で、森を見上げていた。
　長い銀髪をし、寂しそうな深紅の瞳、美しい白い肌、背中には白い翼が生えていた。
　その少女は他の子達と遊びに興じようとはしない。
　すると、少年が少女に近寄り、甲高い声で言った。

「化け物」

　銀髪の少女はその少年を無表情で一度見た後、また空を見上げた。
　そして、少年は鼻で笑って逃げていく。
　また、少し離れた場所で三人組の少女達はその銀髪の少女を見て、クスクスと笑いながら話していた。
　醜い顔の少女達は、口を抑えながら、

「あいつ……天使族よね」

「えっ？　そうなの？」

「確か……天使族なら処刑されるって話よ」

「じゃああいつもんじゃん」

　そして、醜い顔の三人組の少女達は綺麗な銀髪の天使を囲い込み、嫉みをぶつけるようにして、言葉を吐いた。

「ねぇ？　あんた天使族なんでしょ？」

「……」
　
　銀髪の天使は空を見上げ、醜い顔の少女達に耳を貸さなかった。
　前にも一度この少女達にこの質問をされ、化け物とか気持ち悪いとか罵られたからだ。