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1章魔獣になりましょう

104話龍の英雄

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 覚悟を決めるアタマカラ。
 変な嘘で取り繕っても、もうここから逃れられまい。
 おそらく助けも永遠に来るはずが無いだろう。
 アタマカラは背後を見ずに、語気を強め、疑問を問う。

「何が目的なんだ?」

 苦笑するハイデンベルク。
 しかし、アタマカラが少し揺らしただけで、ぐっと剣圧で押し込む。
 その剣の刃から何千倍も濃縮されていた闇がぞわっと溢れ出す。
 
「目的? 冒険者は化け物を殺す。この世界の常識さ」

 こんな闇を纏っておいて良くそんなことが言えるな。
 化け物はどっちだって話だ。
 ふと、正面で微笑するクリムトが突然、いなくなっていた。
 ただ、永遠に燃える炎が揺れ、食べかけの料理がそこに寂しく置かれていた。
 ハイデンベルクが視線をそこに落とした瞬間、アタマカラは雲散霧消をし、忽然と消えた。
 ハイデンベルクはその速度に感嘆をふと漏らす。

「ほぉ」

 アタマカラはハイデンベルクの背後に渾身の拳で反撃をする。
 しかし、その拳はどこからともなく回転の剣の一振りで弾かれ、身体ごと吹き飛ばされてしまう。
 容赦なく、岩肌に激突し、爆煙が発生する。
 
「うわぁぁぁ」

 アタマカラはハイデンベルクの次の動作を予想し、雲散霧消を開始するが、既に闇の怪物を纏うハイデンベルクが垂直で斬り落とした。
 強烈な痛みと、相手の尋常ではない速度に驚愕する。
 人間を遥かに越え、いや魔獣すら越えている。
 ハイデンベルクはアタマカラを見下すように冷徹な赤い龍の両眼でこちらを睨み、中空に剣先で一閃を投じ、纏う闇を消失した。
 闇の怪物が崩れ落ちるように消え、強力な風圧が谷底を襲った。
 アタマカラは地面に這いつくばって、震える声だが、ギリッと睨みで対する。

「何の真似だ?」

「魔力を使うまでも無いと判断した。今のお前程度の力ではオレに傷一つすら付けることは出来ない」

「……舐めるな」

 アタマカラは右手を差し出し、強烈な大寒波《ブリザード》を発生させる。
 強烈の雪の礫がハイデンベルクを襲う。
 しかし、ハイデンベルクの補助スキルが発動する。

【不死身】
 最上位の宇宙級スキル。
 このスキルを持っている者は一人か二人。
 一時的に全ての魔力、攻撃を無効化。

 龍の闇色の防具に氷点下何十度の冷気でも凍らず、一切の傷すら付かず、ただの銀色の剣の一閃でアタマカラの攻撃を玉砕する。

「終わりか?」

 強過ぎる。
 到底敵う相手ではない。
 どうすれば良いんだ。
 一歩一歩砂利を踏み締める音が心臓の鼓動を早くさせる。
 更にハイデンベルクは地獄へ突き落とすように最後通告をする。
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