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1章魔獣になりましょう
59話どうでもいい
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「起きてください……起きてください……英雄様よ……英雄様よ英雄様よ」
「えっ……あっ……カエラ……カエラさんは?」
「カエラさんは無事です。しし……しかし、ミエがいないんです」
「どういうこと?」
「いつの間にかいなくなりまして……」
「ちょっと待って、俺はミエを羊の灰色髪の女に預けたはずだが」
「どうやらその女がミエを連れ去ったようです」
「何だって?」
耳が前に倒れ、頬にそばかすのある羊男が目を瞑り、困り顔で、落ち込んだ表情をする。
更なる状況の悪化にこれからどうすれば良いか分からない。
その羊女の目的ははっきりとは分からない。けれども考えられるのは、百熊一族の一員であり、おそらくはシエラと同様の境遇に近いのではないということぐらいか。
ミエは心配なのは確かだ。ところで、
「恐熊はどうした?」
「えーと森の中へ去って行きました」
指し示す方角は小高い丘を抜け、怪しげな森林の真ん中に一本の左右に揺れる道があった。
なお、羊女も同様の道を通ったらしい。
しかしながら、疑問がある。
どうして恐熊はこの小高い丘に残る数十体の羊族を襲わずに、あの道へ進んだのだ。
残る羊族を見ると全て20代から60代までの男女、確か百熊一族は幼女を欲しがっていると言っていたな。
だとしたら、やはり、ミエが狙いか。なんて奴だ。
仮にこの推測が真実だとしたら、幼い子のためにこの村を丸ごと焼き尽くしたっていうのか。
暴力、強い執着心、欲望の塊を持ったれっきとした悪の魔獣。
ゲームのルールとかは置いとくとして、魔獣は人間に殺されるべき存在だとずっと思っていた。
この世に悪を許すべきではない。
魔獣はこの世に必要はないと。
しかし、少ない時ではあるが様々な魔獣と心を通わせ、仲間が出来た。
もっともカエラに出会ったことで優しく、正義感のある、家族を思う心、人間と同じような感情を持つ魔獣いるんだと。
魔獣は人間と何ら変わらない心を持っているんだと確信した。
しかし、一方で恐熊のような、残虐、暴力の限りを尽くす悪の魔獣も存在するのだ。
いや、大半がそうなので、カエラのような魔獣の存在は稀有だろう。
カエラはどんなに虐げられようとも、人間のような優しい心を捨て去ろうとはしなかった。
一方、シエラは虐げられたからこそ、人間を憎み、魔獣を憎んだ。
だが、もし弱者という立場に置かれていなかったら、カエラはどうするだろうか。
悪の限りを尽くすかもしれない。
すると、他の羊族達が大慌てでやってきた。更なる不幸を告げることは表情から分かった。
「カエラがミエを追って森の中へ入った……戦うと」
「くそッッ」
「えっ……あっ……カエラ……カエラさんは?」
「カエラさんは無事です。しし……しかし、ミエがいないんです」
「どういうこと?」
「いつの間にかいなくなりまして……」
「ちょっと待って、俺はミエを羊の灰色髪の女に預けたはずだが」
「どうやらその女がミエを連れ去ったようです」
「何だって?」
耳が前に倒れ、頬にそばかすのある羊男が目を瞑り、困り顔で、落ち込んだ表情をする。
更なる状況の悪化にこれからどうすれば良いか分からない。
その羊女の目的ははっきりとは分からない。けれども考えられるのは、百熊一族の一員であり、おそらくはシエラと同様の境遇に近いのではないということぐらいか。
ミエは心配なのは確かだ。ところで、
「恐熊はどうした?」
「えーと森の中へ去って行きました」
指し示す方角は小高い丘を抜け、怪しげな森林の真ん中に一本の左右に揺れる道があった。
なお、羊女も同様の道を通ったらしい。
しかしながら、疑問がある。
どうして恐熊はこの小高い丘に残る数十体の羊族を襲わずに、あの道へ進んだのだ。
残る羊族を見ると全て20代から60代までの男女、確か百熊一族は幼女を欲しがっていると言っていたな。
だとしたら、やはり、ミエが狙いか。なんて奴だ。
仮にこの推測が真実だとしたら、幼い子のためにこの村を丸ごと焼き尽くしたっていうのか。
暴力、強い執着心、欲望の塊を持ったれっきとした悪の魔獣。
ゲームのルールとかは置いとくとして、魔獣は人間に殺されるべき存在だとずっと思っていた。
この世に悪を許すべきではない。
魔獣はこの世に必要はないと。
しかし、少ない時ではあるが様々な魔獣と心を通わせ、仲間が出来た。
もっともカエラに出会ったことで優しく、正義感のある、家族を思う心、人間と同じような感情を持つ魔獣いるんだと。
魔獣は人間と何ら変わらない心を持っているんだと確信した。
しかし、一方で恐熊のような、残虐、暴力の限りを尽くす悪の魔獣も存在するのだ。
いや、大半がそうなので、カエラのような魔獣の存在は稀有だろう。
カエラはどんなに虐げられようとも、人間のような優しい心を捨て去ろうとはしなかった。
一方、シエラは虐げられたからこそ、人間を憎み、魔獣を憎んだ。
だが、もし弱者という立場に置かれていなかったら、カエラはどうするだろうか。
悪の限りを尽くすかもしれない。
すると、他の羊族達が大慌てでやってきた。更なる不幸を告げることは表情から分かった。
「カエラがミエを追って森の中へ入った……戦うと」
「くそッッ」
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