13 / 37
1章ゴブミ脱走
1章13話怪しげな売人
しおりを挟む
暗い街中を虚ろな表情で、足元をふらつかせながら、ただ何にも考えず歩いていると狭い路地裏に到着した。
上の方で、虫が寄った電灯が寂しく光っている。
その光を頼りに進むと、大きなリュックを背負った、毛深い男が脚で道を塞いだ。
私はギロリと男を睨み、拳を振り上げる。
怪しげな男は動じる様子も無く、企んだ両眼で、腕を組んで、低い声を発っする。
「お客さん、いい物買わないか?」
私は拳を震わせ、止まり、鼻を上げ、恐ろしい脅迫の顔をする。
「人間になんて騙されない」
「まあまあ、落ち着いて。まず商品を見てから買うか買わないかを決めてくれ」
リュックから取り出したのは奇妙な肌色のスーツだった。
異様な程人間の皮膚に近いスーツ。
男は自慢げな様子で、身振り手振りを使って、商品を説明する。
「俺は数年前、あの超名門ウィーン芸術学校を卒業して、今は売れない芸術家をやってる者だ。画がなかなか売れない訳だから生活も大変で、女房と子供にも逃げられちまった。そこで副業としてこの変装用のスーツを売り歩いている訳だ。どうだ買わないか?」
なんなのこいつ……いきなり話し掛けて、今度は物を買えですって?
馬鹿にすんのもいい加減にしないさいよ。
そんな気持ちも知らないで、自信たっぷりにそのスーツの説明をする男。
「これは良く出来てる。人間の皮膚と変わらないから、触ってみな?」
「……」
何にこいつ楽しそうにしやがって。
私がゴブリンなのに、こいつは怖くないのかしら。
怯えないのが、なんか腹が立ってくる。
「別人の女でも、男でもなれるんだ?」
人間なんてみんな殺してやるんだから。
そして、拳を振り下げる、が、警察のサイレンの音で思い止まった。
私は逃げるように足早に立ち去る。
すると、男は誘惑の甘い声で、
「あんた、綺麗になりたいんだろ?」
私はその言葉を聞いて、立ち止まった。
その綺麗になりたいんだろうという甘い誘惑には勝てなかった。
私の生きる意味って何だろう。
それは綺麗になりたい、美しくなりたい、可愛くなりたい、美への追求なのだ。
諦められない。
こんな醜いまま、終わるなんて嫌よ。
この地獄の日々から綺麗になって絶対男からちやほやされる幸福な毎日を送ってやる。
上の方で、虫が寄った電灯が寂しく光っている。
その光を頼りに進むと、大きなリュックを背負った、毛深い男が脚で道を塞いだ。
私はギロリと男を睨み、拳を振り上げる。
怪しげな男は動じる様子も無く、企んだ両眼で、腕を組んで、低い声を発っする。
「お客さん、いい物買わないか?」
私は拳を震わせ、止まり、鼻を上げ、恐ろしい脅迫の顔をする。
「人間になんて騙されない」
「まあまあ、落ち着いて。まず商品を見てから買うか買わないかを決めてくれ」
リュックから取り出したのは奇妙な肌色のスーツだった。
異様な程人間の皮膚に近いスーツ。
男は自慢げな様子で、身振り手振りを使って、商品を説明する。
「俺は数年前、あの超名門ウィーン芸術学校を卒業して、今は売れない芸術家をやってる者だ。画がなかなか売れない訳だから生活も大変で、女房と子供にも逃げられちまった。そこで副業としてこの変装用のスーツを売り歩いている訳だ。どうだ買わないか?」
なんなのこいつ……いきなり話し掛けて、今度は物を買えですって?
馬鹿にすんのもいい加減にしないさいよ。
そんな気持ちも知らないで、自信たっぷりにそのスーツの説明をする男。
「これは良く出来てる。人間の皮膚と変わらないから、触ってみな?」
「……」
何にこいつ楽しそうにしやがって。
私がゴブリンなのに、こいつは怖くないのかしら。
怯えないのが、なんか腹が立ってくる。
「別人の女でも、男でもなれるんだ?」
人間なんてみんな殺してやるんだから。
そして、拳を振り下げる、が、警察のサイレンの音で思い止まった。
私は逃げるように足早に立ち去る。
すると、男は誘惑の甘い声で、
「あんた、綺麗になりたいんだろ?」
私はその言葉を聞いて、立ち止まった。
その綺麗になりたいんだろうという甘い誘惑には勝てなかった。
私の生きる意味って何だろう。
それは綺麗になりたい、美しくなりたい、可愛くなりたい、美への追求なのだ。
諦められない。
こんな醜いまま、終わるなんて嫌よ。
この地獄の日々から綺麗になって絶対男からちやほやされる幸福な毎日を送ってやる。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。
鏑木 うりこ
恋愛
クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!
茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。
ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?
(´・ω・`)普通……。
でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。
婚約者とその幼なじみの距離感の近さに慣れてしまっていましたが、婚約解消することになって本当に良かったです
珠宮さくら
恋愛
アナスターシャは婚約者とその幼なじみの距離感に何か言う気も失せてしまっていた。そんな二人によってアナスターシャの婚約が解消されることになったのだが……。
※全4話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる