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1章勇者の活動
50話二章
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看板の指し示す方角には民家と民家を挟んだ、回転寿司屋と名を売った店だった。
何語か分からない象形文字が描いてある旗が張ってある。
訳すをタップして見ると、
「エジプト風回転寿司始めました」
と曰わくありげに書かれていた。
屋根の上に三角錐のピラミッドの彫刻、黄金の砂造りの外観。
中を見ると、皿の上の寿司が廻っていて、営業中ということが分かるが、客が見当たらない。
すると、ストラが耳元で苦しそうな吐息を掛けてくる。
「こうはしてられない。とにかく入ろう」
入口と見られるガラス張りの扉にそのまま駆は乗り込む。
しかし、扉が開かず、衝突する。
「痛てぇ!」
何度か、扉を触ったが、一向に開く気配がない。
やっぱり、準備中なのか。
そこへ、店内から白い割烹着を身につけた、店長らしき長身の男が何事かとこちらを見に来た。
鼻下には黒い黶があって、鼻穴が大きく、少しふざけた顔で駆を下から上までまじまじと見る。
駆は開けてという合図をする。
けれど、店長はハテナの表情をする。
「いや、開けてください」
「何で?」
「あの? お店は営業中なんですよね?」
「あんた……お金持ってるの?」
「すいませんけど、うちの妻がお腹を空かせて、もう死にそうなんですよ。握り飯だけでも……なんでも良いので……食わしてください……お金は後で必ず用意しますから」
「はぁ? そんなあんたの事情なんてこっちには関係ないよ。しっしっしっ……帰れ」
店長は露骨に嫌そうな顔で、手で追い払う仕草をする。
怒りを抑え、駆は必死で訴える。
「お金なら後で払いますから。だから何か食べさせてくださいよ」
「今から家帰ってお金を持って来な」
「あんたね? 見たら分かるだろ? 妻が死にそうなんだ? 助けてやりたいと思う気持ちはないのか?」
「本当に図々しい奴だな。こちとら、商売でやってる訳よ」
「何が商売だよ? 全然……人入ってねーじゃねか」
「てめぇ……客に分かるか……おれの料理の味がぁ」
「早く潰れろよ……こんな店」
駆はつい口が出てしまい、しまったと表情をする。
店長は顔を真っ赤にして、ガラス張りの扉の前に駆け寄り、同時に自動で扉が開く。
そして、舌打ちをする。
「……っ」
自動扉か。
でも、なぜさっき開かなかったのか。
すると、店長は嫌そうな顔、だるそうな声で、
「カウンターの一席に座れよ」
腹立たしいが仕方無いだろう。
店に入れてくれるだけでもありがたい。
「あの、できれば二席で」
「あ? 勝手にしろ」
何語か分からない象形文字が描いてある旗が張ってある。
訳すをタップして見ると、
「エジプト風回転寿司始めました」
と曰わくありげに書かれていた。
屋根の上に三角錐のピラミッドの彫刻、黄金の砂造りの外観。
中を見ると、皿の上の寿司が廻っていて、営業中ということが分かるが、客が見当たらない。
すると、ストラが耳元で苦しそうな吐息を掛けてくる。
「こうはしてられない。とにかく入ろう」
入口と見られるガラス張りの扉にそのまま駆は乗り込む。
しかし、扉が開かず、衝突する。
「痛てぇ!」
何度か、扉を触ったが、一向に開く気配がない。
やっぱり、準備中なのか。
そこへ、店内から白い割烹着を身につけた、店長らしき長身の男が何事かとこちらを見に来た。
鼻下には黒い黶があって、鼻穴が大きく、少しふざけた顔で駆を下から上までまじまじと見る。
駆は開けてという合図をする。
けれど、店長はハテナの表情をする。
「いや、開けてください」
「何で?」
「あの? お店は営業中なんですよね?」
「あんた……お金持ってるの?」
「すいませんけど、うちの妻がお腹を空かせて、もう死にそうなんですよ。握り飯だけでも……なんでも良いので……食わしてください……お金は後で必ず用意しますから」
「はぁ? そんなあんたの事情なんてこっちには関係ないよ。しっしっしっ……帰れ」
店長は露骨に嫌そうな顔で、手で追い払う仕草をする。
怒りを抑え、駆は必死で訴える。
「お金なら後で払いますから。だから何か食べさせてくださいよ」
「今から家帰ってお金を持って来な」
「あんたね? 見たら分かるだろ? 妻が死にそうなんだ? 助けてやりたいと思う気持ちはないのか?」
「本当に図々しい奴だな。こちとら、商売でやってる訳よ」
「何が商売だよ? 全然……人入ってねーじゃねか」
「てめぇ……客に分かるか……おれの料理の味がぁ」
「早く潰れろよ……こんな店」
駆はつい口が出てしまい、しまったと表情をする。
店長は顔を真っ赤にして、ガラス張りの扉の前に駆け寄り、同時に自動で扉が開く。
そして、舌打ちをする。
「……っ」
自動扉か。
でも、なぜさっき開かなかったのか。
すると、店長は嫌そうな顔、だるそうな声で、
「カウンターの一席に座れよ」
腹立たしいが仕方無いだろう。
店に入れてくれるだけでもありがたい。
「あの、できれば二席で」
「あ? 勝手にしろ」
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