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1章勇者の活動

40話ゲームセンターへ

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 駆は顔を真っ赤にし、がに股で、受付の場所まで戻っていく。
 
「どうしました?」
 
 優しさのある、少女の声がした。
 振り向くと、そこには先程ここで挨拶してくれた茶髪で、メイド服の受付の少女がいた。
 巨乳を揺らし、髪を触る仕草をし、近寄って、首を傾げる。

「あっ……いや。ゲームを探していて……」

「何というゲームですか?」

「全力疾走というゲーム」

「あっ! 今話題のゲームですね。確かみんなでやろうぜゲームセンターでその体験版が開催されていますよ」

「えっ! 本当ですか!?」

「はい! 左側の入口を入り、真っ直ぐ進み、150番コーナーで開催されています」

「えっ?」

 さっきは気づかなかったが、どうやらゲームセンターらしい。
 頑丈な黒い扉は開かれ、そこから漏れる赤い光が妖艶さと怪しげさを醸し出す。
 不安そうな駆を察したのか、受付嬢は優しく語り掛ける。

「もし宜しければ私が案内しましょうか?」

「えっ! おおお願いします! でも受付の仕事は?」

「お客様が困っていたら、助けてあげるのが私の仕事です」

 その受付嬢は得意げに小さく腕を掲げてそう言った。
 人間みたいだと思った。
 いや、何を可笑しなことを言ってるんだ。
 彼女は人間じゃないか。 
 

 そして、受付嬢に案内されるままに付いていく。
 店内はやはり怪しげに暗く、クラシック音楽が鳴る静かな雰囲気。
 一本の廊下があり、下から青い光が映え、道筋を照らす。
 
 番号ごとにそれぞれブースと呼ばれる部屋があるようだ。
 中の様子を窺い知る事は出来ない。
 ようやく、駆は全力疾走のゲームが開催されているブースの部屋に到着した。
 受付嬢は手慣れた様子で、部屋の扉を開けた。
 そこから、見えたのは予想外に大きな部屋だった。
 高級感溢れるVR専用機の椅子がずらっと百台近くが並んで、その目の前に眩い光に照らされた巨大な画面があり、そこに広大な自然風景や魔獣が映し出されている。
 その時、薄い光の照明、大画面が消える。
 全体が闇に包まれた。
 瞬く間に、光の星が煌めき出し、満点の星空となった。
 流星が幾度も流れ、消えゆく。
 まるで、本物の夜の荒野にいるようだ。
 すると、星の下のこの暗闇で数人の重装黒鎧を装備した男達が円陣を組んで、大声で叫び声を上げていた。
 他の客が迷惑そうな顔をしている。

「初回発売から十年が経過した。今まで多くの友を失った。今日こそは、この無念を晴らすために絶対、絶対に白巨人を討伐するぞ」

「ぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 
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