逃げ足スキルで職業勇者になろう

1章勇者の活動

39話ゲームを探して

「全力疾走、全力疾走……どこにあるんだ」

　あれこれ一時間は探してるが、一向に見つからないのは何故。
　それよりもだ。
　駆は視線を感じて、後ろをガッと見る。
　その瞬間、棚からゲームソフトがガタガタと落下する。
　明らかに誰かが隠れている。
　一体何なんだ。何がしたいんだ。
　駆は足早にこの場所から離れ、奥の棚へと移動する。
　それに応じて、後ろの足音も早くなる。

「しつこいわ……こいつ」

　駆は冷静を保ち、足早に歩く。だが、やがて、無我夢中で逃げていく。
　しかし、一向に相手の尾行は止まらない。
　その時、尾行の主が走り過ぎで、脚を痛め、転んだ。
　駆はその瞬間を背中で感じ、このまま逃げ去ろうと思ったが。
　やっぱり、この溜まった鬱憤を晴らそうと尾行主の元へ。

「あんた一体何がしたいんだ？」

　眼鏡の男は悔しそうな顔で言い放つ。

「万引きだろ！」

「違うわ」

「嘘をつけ！」

「証拠でもあんのか？」

「万引きしそうな顔をしてる」

「本当あんた頭おかしい。もう帰る」

　腹が立った駆は店内から退出した。