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1章勇者の活動

16話逃げ足スキルを獲得

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 ヘレネの言った通りに空にホログラムが現れる。
      逃足駆
     職業:不明
     種族:不明
     使役:なし
     年齢:17
     戦闘値:レベルが低いため測定不能
    スキル:  逃げ足
    攻撃力:1
    守備力:2
     魔力:1
   物理耐性:2
   魔力耐性:1
    やる気:0
    敏捷性:40
     走力:50
                  体力:20
    剣士力:20
    精霊力:20
     神力:0

「なんだよ。このステータス! くそ弱えーーよ! この逃げ足スキルってなんだ? いつのまにこのスキル習得した? さっきの?」

 駆の足にジガレックスの大きな牙が噛みつく、

「グヒグヒ、カブ」

「あ、痛た、痛たたたた。あーーもう! 逃げ足スキル発動!!」

「…………」
 
 逃げ足スキルを何度も連呼しているが、何の反応もない。その間にもジガレックスの牙が駆の脚の肉に食い込む。

「痛いぃぃいだいだだ」

「逃げ足スキル! 逃げ足スキル!」
 
 何なんだこのスキルな。全く使えない。これでどうやって勝つんだ。
 とにかく、このジガレックスの噛みつきを何とかしないと。

「グビグビ! ぐびびび!!」

「結構蹴りには自身あんだよこらぁぁぁぁ!!」

「ギャァァァァァァァァァァァ!!!」

 顎の威力が弱まった瞬間を狙い、脚を何とか牙からは放し、次いでにジガレックスの目に強烈な蹴りを施した。
 相当痛いのは叫んでる姿を見れば分かる。
 先の熊との一戦では不甲斐な思いをしたが今回はいけるぞ、倒せる気がする。
 怒りでジガレックスは興奮状態になり、鋭い視線を向け、口から炎があふれ、発射。
 一歩後退し、考える。余裕は与えてくれない、それと次の攻撃は当たったら確実に死ぬだろう。
 逃げるか? いやもう間に合わない。
 ジガレックスの火炎放射が駆の顔面に向けて直線状に進む瞬間。
 運良く精一杯飛び出し、転がりながら木の陰へと到着する。あわや大惨事は免れたものの、敵は次なる策を仕掛け、迫っていた。
 さて、どうするか。
 とにかくスキルをもう一度確認しようか。やはり、何回見ても、擦っても、叫んでも、逃げ足という唯一のスキルしかない。
 説明欄に間違ってスクロールをし、タップしたところ、幸運なことに逃げ足スキルの説明が書いてあった。

【逃げ足】
 巷では雑魚スキルの一種と揶揄されている。
 このスキルを獲得した者はこれしか使えない。例え他のスキルをストックし、使用しようとしても、直ちに使用を撤回される。
 このスキルは戦闘から退避する目的で使用されるため、モンスター回避用に使用されます。非戦闘用スキル。ちなみに、回避アイテムが開発され、販売されているので、使用する者は滅多におらず、そもそもスキルを獲得しても廃棄してしまう者が多い。
 なお、近年に廃止指定スキルとっています。
 執筆者の助言は敵を倒したいなら致命傷を狙え。

「はぁ? 雑魚スキル? そんなスキルを作るな! 回避特化スキルでどうやって勝てるんだこれ! しかもこれしか使えないだと!」
 
 しかし、刻一刻とジガレックスは迫り、周囲の木々を火炎放射で焼き尽くす。一本の木が残り、そこに隠れている今回の獲物だと悟る。醜悪な笑みと同時に臭いのきつい唾液を口中に充満になり、垂れ流す。
 敵を圧倒的攻撃で一網打尽に倒すなんて間違いなく出来ないだろう。それは確実に確信していた。 
 けれど、

「逃げ切れるという自負はある」

 駆は木の陰から現れ、ジガレックスと対峙することに決めた。
 ルシアとヘレネは驚いた表情をする。容姿から想像出来ないが、勇気を振り絞り、死を覚悟したと称賛を覚える。

「ギャギヤ ギャギャ」

「来いやぁぁぁぁぁぁぁ!」

 
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