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1章勇者の活動

9話勇者になろう

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 すると、老人は手をテーブルや椅子に触ると一瞬でそれは消えた。
 マジックを魅せられているかのように驚愕する。このじいさんの魔法、綺麗だ。素人目にも分かる魔法の綺麗さ。
 これ長年の積み重ねによる達人クラスの魔法。

「え? すご?」

「いでよ! 翼竜! 先ほど草原に出現した翼竜じゃ。王国にはこのような獣もいるんじゃ」

 天井を破るほどの体長二メートルはある銀色の翼竜《ドラゴン》が現れた。目は大きく立派な翼をはばたかせ、鱗に覆われた爬虫類を思わせる体。鋭い爪で襲われたらひとたまりもない。

「ガルルルル ガルルルル」

「うぁぁ」

 駆は翼竜の鳴き声でびっくりしてよろめく。
 そして、老人が腕組みをし、口を開く。

「今回の一次実技試験の内容を言い渡す。この翼竜を操ってみろ。そして、一緒に破壊魔山《デストロイヤーマウンテン》に行って光の石を半夕刻までに取ってくるのじゃ。正直にこの試験は難易度が高いのじゃ。その山には魔獣が棲んでおるからのぉ。気おつけろ!」

 老人は一呼吸置き、付け加えて試験について話す。第一次試験は面接と実技試験、面接では能力や覚悟を判断する。実技試験では魔獣がいる山や草原、森林で珍しい石取りに行く内容で、二次三次と続くが答えられないだそうだ。


「あれこのドラゴン……」

 その瞬間、ドラゴンは駆の頭に噛みつく、鋭い牙が頭部にねじ込む。
 意味が分からない。このドラゴンは俺の頭を噛むのだろうか。

「痛っ、痛い、痛い」

「ガブ ガブ ガルルル」

 駆は必死で頭からドラゴンの牙を離した、ドラゴンは威嚇している。
 それから周囲を一回転してから向かっていく。


「あぶねーよ、なんかすげー嫌われてるんだけど」

 何度も噛みつかれ、逃げ回る駆。
 

「一流の勇者《ブレーブ》や騎士《ナイト》でも翼竜を操ることは難しいのじゃ。試験始め!!」

「マジで!ちょっと待って!痛っ!痛っ!あの竜なんとかしろよ!」
  
「それじゃあの」

 老人は部屋から出て行った。

「はぁ……はぁ……つーか武器とかないのこれ」

 翼竜は睨む。一方、駆も睨み返す。喧嘩を売られたら買うのが性分。いや、普段はそんなことしないのだが。
 頭に幾度も血が上り、興奮状態と理不尽な仕打ちによる怒りが喧嘩を買ってしまったというわけだ。

「ガルルル ガルルル」

「なんだこら? おい! 破壊魔山《デストロイヤーマウンテン》に行くぞ! 力貸せ!」

「ガブガブ」

「痛っ! 痛っ! あぁぁぁ!! おぉ」

 翼竜は駆を噛みついた後、背中に乗せた。どうやらじゃれていたみたいだ。

「噛みつくの好きだなお前」

「ガルガル」
 
「行くぞ!!」

 駆はドラゴンと共に飛び立った。
 部屋に戻ってきた老人は投げ捨てた本を手に取り、本をめくる、逃足駆の未来というページを開く、どうやら老人にしか読めない文字だろう。老人は読み続けると表情が驚愕へと変わる。そして、老人は手を左から右へと振りかざし本の文字を消した。
 天井の穴から無気味な笑みで二人を見上げている。
 そのじいさんは先ほどまでのとぼけた印象とは違いとても恐ろしい。
 
 
 
 
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